僕の香妻交際日記 第53回 税金、払いすぎてませんか?
毎年7月くらいになると、香港政府から緑色の封筒がやってくる。そう、税金の申告書だ。
香港の税金は日本に比べればはるかにお財布に優しいのだが、それでも毎年この色の封筒を見るたびになんだか不当に請求されている気分になるのだから、人間とはつくづくケチな生き物である。
と言っても、税金を支払うことは香港に住まわせていただいている者としての最低限の義務となるので、去年の申告書の写しを見ながら今年もほぼ同じ内容で書き書きしていく。
そうやって冷や汗をかきながら頼りない筆圧で書き書きしている私を見てもっと冷や汗をかいているのが他でもない我が家の勘定奉行、妻である。
税金申告書記入のコツ
今日に始まったことではないが、大前提として、妻は私のことをこれっぽっちも信用していない。だから、いきなりボールペンで書き書きなんてさせてくれない、まずは恒例の「鉛筆による下書き」を命ぜられる。以下、申告書記入のポイントをまとめてみた。
1.申告書は発行日から1か月以内に税務局に郵送しなければならない。
2.第4部薪俸税(収入)欄には会社からオフィシャルにもらった年間給与額明細に記載された額と同じ額を記入する。会社はその額を税務局に申告しているので、ここで異なる額を記入するとあとで税務局から詰問される。
3.第4部3章1項支出及開支欄にはありったけの支出を記入。家賃、生活費、保険など。
4.第4部3章4項には年間のMPFの支払額を記入。
5.第11部2章子女免税額欄には子どもの名前とHKIDの記入を忘れずに。
さらに、私の妻くらいになると会社からの給与明細書にすら疑問を投じてくる。というのも会社が税務局に申告している年間給与額はたいていすっきりした数字になっていない(241,234HKDのような)からだ。例えば月給が2万HKDとすると12ヵ月分の給与は24万HKDになるはずだが、ここからMPFの支払い分が引かれたり、ダブルペイやボーナスなどの額が加算されると年間総額が241,234HKDみたいになるのである。
私なんかはもう申告書を書き書きし終わった時点で「正直お腹いっぱい、じゃあボールペンで書いていいかな?」状態なのだが、妻はその鋭い眼光で「この241,234HKDの内訳を会社の経理に確認してきなさい」と私に次の指令を命じるのだ。そう簡単にボールペンなんか持たせちゃくれない。
絶対に忘れてはいけない「スキャン&コピー」
と、その後かくかくしかじかと会社への確認や妻からの詰問があり、ようやくボールペンでの清書が済むと最後にこれまた恒例の「スキャン&コピー」が命ぜられる。妻は家庭のお財布を司る者として「記録」を大事にする。各書類をハードとソフトの両方で記録しておくことで後でちょっと確認したいときや何か問題が生じたときに動かぬ証拠として参考にすることができるからだ。実際にこの「記録」のおかげで私も幾度となく政府や会社とのやり取りの際に助けられたので、みなさんも是非スキャン&コピーの習慣をつけておくことをおススメする。
支払い請求が来てもビビんじゃねえ
7月に申告書の提出が済むと、翌年の3月くらいに政府から素っ気ない、それでいて威圧感のある白い封筒が郵送される。そこに前年に提出した税金申告書の結果、つまり支払い税金額の通知書が同封されているのだが、だからといって「はい、仰せのままに」とすぐにコンビニで支払いを済ませてはいけない。
通知書の裏面には支払税金額の内訳が記載されているので必ず確認したうえでその額が正しいかを見極め、必要があれば「反対通知書」を以って税務局に抗議をしなければならない。
ちなみに私の妻は今年送られてきた私宛の支払通知書の額がちょっと納得できなかったらしく、子女免税額が反映されてないんじゃない?と訴えた反対通知書を税務局にFAXした。すると、間もなく新しい支払通知書が郵送されてきて、2万HKD近かった支払額がなんと1,200HKDまで減少していた。
このことを妻に報告すると「だから言ったじゃないの。相手が政府だろうと税務局だろうとビビることなんてないんだから。」と胸をグーでパンチされた。窓の外から差し込む西日がいつもより暑かった。
ルーシー龍(りゅう)
東京都出身。香港歴7年。元日本語講師。元学習塾塾長。現在香港企業窓際マネージャー。柔道三段。妻は香港人。娘はハーフ。猫は香港仔出身。愛読書は武士道。