幸福を招く写真館「八旗相館」尖沙咀(チムサーチョイ)
ラストエンペラーの遠縁の店主が経営
幸福を招く写真館
辮髪で満州族の文化を伝える
九龍公園を背に、ネイザンロード(彌敦道)とカントンロード(広東道)を結ぶホイフォンドウ(海防道)を渡ってカンコウドウ(漢口道)へ。右手に立ち並ぶビルの谷間にあるトンネルのような路地の、数えて2本目の奥をのぞくと、愛新覚羅州棠(アイシンカクラジョウタン)さんが切り盛りする写真館「八旗相館」が見える。訪ねると辮髪にチャイナ服姿の州棠さんが迎えてくれた。
州棠さんは、中国清王朝を立ち上げた満州族の初代皇帝ヌルハチの直系子孫で、ラストエンペラーとして知られる愛新覚羅溥儀(フギ)の遠縁に当たる。辮髪は前頭部を剃りあげ、後頭部を長く伸ばして三つ編みにした髪型。映画などで見たことがある方もいるのでは?「なぜ、辮髪にしているのか?」と伺うと「満州族の文化だから。文化は大切にしなければいけない。日本の着物と同じだよ」と教えてくれた。
州棠さんは1962年に広州から香港へ。当時は写真を学べるところがなかったため、独学で写真技術を学ぶ。1976年と77年に香港撮影学会が主催した撮影大会で優勝。1983年に「八旗相館」をオープンした。こぢんまりした店内は30年以上の歴史を重ね少し雑然とした雰囲気だが、ヌルハチの絵や、満州族が所属した8つの組織を象徴する「満州八旗」と呼ばれる旗が飾られている。
開運・証明写真はHKD110~
州棠さんが得意とするのは人物の撮影。店頭にある美しい女性の写真のモデルは娘さんで、こんな写真を撮ってもらえるそうだ。そして、州棠さんは「ここは幸福を招く写真館なんだよ」と語る。ここで証明写真を撮ったあと、希望する大手企業に就職が決まったり、スキャンダルで失職寸前だったのに復権したりなど、幸運に恵まれている人が多いという。その秘密は、写真を撮るときに座る椅子にある。中国では昔から「天子は南座する(南を向いて座る)」といわれており、明・清の王宮「紫禁城」にある太和殿の玉座も南を向いていた。ここの椅子に座ると南座し、また、椅子の図像は4つの方位を示すもので、風水的に繁栄がもたらされる構造になっているのだそう。州棠さんは「ここでは背景をブルーにして撮ることもできる。空の色も海の色もブルー。人の命にとって大切な色なので、ブルーで撮ると運気がアップする」と微笑む。証明写真は香港パスポートサイズ(40mm×50mm)の6枚セットがHKD110。サイズによって枚数が異なるがだいたいHKD110から。証明写真を撮ったあとは若干の修正もして30分で仕上げてくれる。その他、いわゆる写真屋さん業務全般を手がけている。
多くの顧客に支持され32年
さて、取材中にもこの写真館には次々と顧客が訪れる。中国から出張できたという女性は、フィルムを買いにきたついでに、カメラの使い方をアドバイスしてもらっていた。彼女は近くの店でカメラを購入したとき「対応がいい」とここを紹介してもらい、以来、香港にきたときは必ず立ち寄るという。
「なんでこの店が30年以上も続いているかわかる?それはマジメに仕事をやってきたからだよ」と州棠さん。そんな州棠さんが撮る写真だから、幸運を招くことができるのかもしれない。マンネリした日常を打破して、いい運を呼び込みたいと思う方は「八旗相館」を訪ねてみては?香港の記念に証明写真を撮ってもらうのもいいかもしれない。
八旗相館 D&P SERVICE SHOP
住所:Shop21, 6/F., Hankow Apt., Hankow Rd., TST
電話:(852)2376-1246、(852)9135-7617