僕の香妻交際日記 第41回「俺たちはジェームスボンドじゃない」
あなたの夢は何ですか?
ちなみに私の夢は、セントラルの金融街でオーダーメイドのスーツに身をまとい、携帯電話で海外のクライアントと英語で数億円の取引案件について話をしながら颯爽と歩くことです。
ところで、みなさんはこんな香港人を見かけたことはありませんか?
・ スーツを着て、手ぶらで歩いている。
・ スーツを着て、かばんは持たず、紙袋を持って歩いている。
・ スーツベストを着ているんだけどジャケットは着ていない。
実は私の憧れの街セントラルの近くを歩いているとよくこのようなビジネスマンを見かけることができます。
そこで、大きなお世話ですが、勝手にかれらの心理を分析しました。
1.かれらはきっとナルシスト
上記のような格好をしている人は自分の容姿を気にする人なので鏡や携帯電話の自撮りモードで自分の髪型を執拗にチェックし、駅のホームのガラス張りに映る自分の姿は電車を待っている間5秒おきにチェックします。稲垣吾郎クラスになると醤油皿の醤油で自分の髪型をチェックできます。
2.持たないことがカッコいい
オーシャンズ11や007のような映画に出てくるキャラクターは皆スーツをビシッと着こなしています。そしてかれらに共通していることは基本的に手ぶらであること。当たり前ですがかれらはビジネスマンではないのでビジネスバッグなどは持ち歩かず、ときどきピストルかタバコを手にしているくらいです。香港のビジネスマンがカバンを持たなくなったのはジョージクルーニーやブラッドピットの責任でもあります。
3.タイトなベストにねじ込む、私という戦うボディ
そもそもスーツとは男性にとって魔法の洋服で、これを着るだけ3倍増しでカッコよく見えます。そこにスーツベストを加えたら5倍増しです。スーツベストを着ると上半身がほどよく締め付けられシュッとするのでシルエットがカッコよく見えます。このシュッとした自分の姿に惚れた男たちは、ジャケットを羽織らずスーツベストだけで街へ出てしまうのです。
4.実際に手ぶらで歩いてみて・・・
では実際に手ぶらで通勤しようとするとどうなるのか。財布、携帯、家の鍵の3種の神器は何とかジャケットやパンツのポケットを駆使すれば問題ないでしょう。しかしそれ以上のものをポケットに入れようとするとポケットがデッカくなってシュッとしたシルエットを体現できなくなります。でもジョージはカバンなんか持ってなかったから…。そこで紙袋。しかもシャネルやヴィトンのようなブランドのロゴが入った紙袋なら何だかおしゃれに見えると思ってしまいます。
5.なぜ筆者は香港人男性の心理が分かるのか
おそらく香港全土でかれらのファッションが気になってしまうのは私くらいでしょう。ベルトがグッチのデカバックルで靴下が足首丈のものを履いているビジネスマンもすごい気になります。では、なぜ私はかれらのことがこんなに気になってしまうのかというと、一つは冒頭でも述べたように、私の夢はセントラルのビジネスマンだからです。そして、もう一つは、手ぶらで歩くのも、ベストで出歩くのも、シャネルの紙袋を持ち歩くのも私が高校生の時にイケてると思っていたファッションだからです。ですから、彼らの気持ちも、これらのファッションが本当はイケていないという事実も知っているのです。
男がイケてるかどうかは「いざという事態にどれだけ対応できるかどうか」だと30歳を過ぎてつくづく思います。いざ雨が降った、いざ彼女が鼻血を出した、いざ娘がうんちを漏らしたときにどれだけ早く的確に対応できるか。
そう考えると、必然的に手ぶらでは出歩けなくなるはずなんです。
紙袋でもいいですけど、やっぱりカバンを持つのが一番でしょう。
ルーシー龍(りゅう)
香港人の妻と香港と日本のハーフの娘と一緒に暮らす日本人。狭くて広い香港で何とか一花咲かせようと企みながら早6年。座右の銘は「生きろ」。