9月13日まで!香港で「CATS」観賞

開演前の戯曲センター大劇院、満月を背に巨大な廃品置き場が広がる
8月26日19時30分、西九文化区の戯曲センター(Xiqu Centre)大劇院で、ミュージカル『CATS』を観た。
先に結論を言うと、英語が苦手な純日本人の私でさえもう一度行きたいと思えた、そんな素晴らしい公演だった。
香港公演は追加公演を含めて9月13日まで。8月29日の公開時点で、最終公演まであと14日しかない。
※以下、物語の展開に少し触れる。
CATSのおおまかなあらすじ
『CATS』は、主人公が事件を解決していくような一般的なミュージカルとは少し違う。
舞台は、満月が輝く都会の廃品置き場。年に一度、個性豊かな「ジェリクルキャッツ」がジェリクル舞踏会に集まる。そこで長老猫オールドデュトロノミー(一番でかい猫)が一匹を選び、選ばれた猫は天上へ昇り、新しいジェリクルの命に生まれ変わる。
猫たちは歌とダンスで、自分が何者で、どんなふうに生きてきたのかを次々に見せていく。私の感覚では、前半は猫たちの自己紹介が中心。後半になると長老猫の誘拐や停電が起き、物語が大きく動き始めるような構成だった。
英語が分からなくても楽しめるが、予習は必要
香港公演は英語上演で、舞台の両側に繁体字の字幕が出る。ただし、ほぼ全編が歌で進み、会話らしい会話は少ない。字幕も歌詞の一語一句を訳すというより、内容を追うための簡潔な表示に感じた。
英語や広東語に自信がない人は、上のあらすじと主な猫の名前だけでも先に見ておくと、より深く楽しめると思う。
入場手前フロアにもCATSの世界
戯曲センターに入ると、まず4階まで続く長いエスカレーターを上がる。その先の劇場フロアには、グッズ売り場やフォトスポットがいくつも設置され、公演前から『CATS』の世界を楽しめるようになっていた。私も気になって、カップを一つ購入した。

Tシャツやバッグなどが並ぶ公式グッズ売り場

公式グッズのラインアップ、購入したマグカップはHKD100

香港の街並みと猫の目を組み合わせたフォトスポット

サインと猫の目が並ぶ『CATS』のウォール
開演15分前に客席へ入ると、目の前には巨大な廃品置き場。大きなタイヤや捨てられた物が積み上がり、その中央には満月が浮かんでいる。雑然としているのに、今夜は何か特別なことが起こると分かる舞台だった。
もともとの大劇院も、土や岩の地層を思わせる色と模様を持っている。私には少しグランドキャニオンのようにも見えた。その客席空間と廃品置き場のセットが不思議なほどなじみ、劇場全体が一つの世界になっていた。最初に美術の力へ引き込まれた。
そして開演前、「この公演は生演奏で行われる」というアナウンス。ここで期待が一段上がった。
表情から身振り手振りまで完全に猫
公演が始まると、猫たちは舞台の中だけに収まらない。客席のすぐ近くまでやって来て、人間を観察し、時には反応する。
長い髪が揺れている観客を見つけると、気になって手を伸ばす。ゆらゆら動く物を見ると触りたくなる、本物の猫のような仕草だった。誰かがスポットライトを浴びている間も、ほかの猫たちは体を揺らし、辺りを警戒し、それぞれの時間を生きている。
途中休憩の際にも客席にきてくれるので、写真を撮ろう。

舞台を飛び出し、客席のすぐそばまでやって来る猫たち
特に印象に残った3匹の猫
セクシーきまぐれ猫、ラム・タム・タガー

Cats. Picture Nardus Engelbrecht(あまのじゃくで雌猫たちにも人気のラム・タム・タガー)
まず目を奪われたのが、黒と金の姿で堂々と現れるラム・タム・タガー。自信たっぷりで、セクシーで、猫たちの中のロックスターのような存在だ。
「私を見ろ」というエネルギーがとにかく強く、腰の動きも表情も、注目されることを楽しんでいる。モテる猫とはこういうことか、と妙に納得してしまった。登場するだけで客席の空気を変える、歌も挑戦的で圧倒的な華があった。
仲間はずれの猫、グリザベラの歌う「メモリー」が凄まじい

Cats. Picture Nardus Engelbrecht(ジェリクルキャッツから遠ざけられているグリザベラ)
もう一匹は、ボロボロの服をまとったグリザベラ。かつては華やかな猫だったが、今は一族へ近づくたびに避けられてしまう。
前半から彼女が現れるたび、場の空気が変わる。詳しい事情が分からなくても、孤独と「ここへ戻りたい」という気持ちは伝わってきた。ただ見ているだけで悲しくなる。
そして後半、彼女がもう一度受け入れてほしいと願いながら歌う「メモリー」。歌を超えて紛れも無い命の叫びだった。
英語の歌詞をすべて理解できたわけではないが、それでも孤独や悲しみ、私を受け入れて欲しいという願いが、声だけで胸へ入ってくる。歌が高まるにつれて涙が止まらなくなった。歌い終えた後の拍手喝采が一番大きく感じた。
ダンス激うまキラキラ猫、ミストフェリーズ
終盤、舞台が暗闇に包まれたとき、ラム・タム・タガーが魔法を使える猫を呼び出す。そこで現れるのが、ミスター・ミストフェリーズだ。
全身をきらめかせて登場し、軽やかに回り、跳び、まるで重力が違う場所にいるように踊る。妖精のように滑らかで、本当に魔法を使えそうに見えた。
衣装が猫だが宇宙人感もあってとても印象的だった。提供できる写真がないためぜひ足を運んで自分の目で確かめてほしい。
ほかにも、泥棒猫のマンゴジェリーとランペルティーザのコミカルな動きなど、いろんな魅力的な猫たちが登場するので、自分のお気に入りをぜひ見つけて欲しい。
香港公演特別演出?
基本は英語上演だが、物語の中の大切な場面で、歌が広東語になる瞬間がある。
どこで出てくるのかはお楽しみだが、広東語が分かる人なら、英語で進んできた舞台の中で急に耳が反応するはずだ。香港公演だからこその、小さいけれど印象に残る演出だった。
最後まで、猫への愛に満ちた舞台
物語の最後、長老猫オールドデュトロノミーが、腹の底まで響くような声で、人間である観客へ「猫とどう接するべきか」を歌う。
猫をこちらの都合でかわいがるのではなく、一匹ずつ異なる、誇りを持った存在として敬意を払い、猫の方が信頼してくれるまで待つ。私はそんなメッセージとして受け取った。
約2時間40分、まったく違う生き方を持つ猫たちを見た後だからこそ、その歌声が心に響いた。
香港公演は9月13日まで。迷っているなら早めに
香港公演は追加公演を含め、9月13日が最終日となる。
公式料金は、公演日と席種によってHK$388〜1,288。チケットは現在も販売中だが、実際に選べる席種は公演回によって変わる。価格や座席に希望があるなら、先延ばしにせず販売画面を確認した方がいい。
CATSは舞台をほとんど観たことがない人にも勧めたい。英語を全部理解できなくても、巨大な美術、生演奏、歌、ダンス、そして猫たちの動きでその世界観を堪能できる。
何より、グリザベラの「メモリー」を生で浴びて、何も残らない人はそう多くないと思う。少なくとも私は、劇場を出た後もあの声がずっと残っていた。
迷っているならぜひ見に行って欲しい。 文:藤山 望
CATS The Musical 香港公演
- 公演期間:2026年8月6日〜9月13日(9月8〜13日は追加公演)
- 会場:西九文化区・戯曲センター(Xiqu Centre)大劇院
- 言語:英語上演・中国語字幕
- 上演時間:約2時間40分(20分の休憩を含む)
- 料金:HK$388〜1,288(公演日・席種により異なる)
- 年齢制限:5歳未満入場不可
- 公式情報・チケット:https://cultural.cityline.com/en/2026/musicalcats.html


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