長洲饅頭祭とは?まんじゅうの塔だけではない、にぎわいの奥にある祈りと歴史
香港の春から初夏にかけて話題になる 長洲饅頭祭(ちょうしゅうまんじゅうまつり)。名前だけ聞くと、まんじゅうを食べる祭りなのかなと想像するかもしれない。けれど実際は、香港の離島・長洲で100年以上受け継がれてきた伝統行事だ。正式名称は 長洲太平清醮(チョンジャウ・ターイピン・チンジウ)。にぎやかな飄色(ピウシク)パレードや、深夜の搶包山(チョンバウサン)が有名だが、その奥には、島の平安を願い、災いを遠ざけようとしてきた人々の祈りと歴史がある。2026年の開催情報とあわせて、この行事の魅力を紹介する。
まず、長洲はどこか
長洲は、香港島の西南にある離島のひとつ。中環5号フェリーターミナルからフェリーで行くことができ、所要時間は便の種類によって約40分または60分だ。高層ビルのイメージが強い香港の中では少し別世界で、海辺の景色、路地の空気、昔ながらの生活感が残る島として知られている。香港政府観光局の案内でも、長洲は小さなダンベル形の島で、自然や歴史、ローカル文化が混ざり合う場所として紹介されている。
長洲饅頭祭は、何の祭りか
この祭りの正式名称は 長洲太平清醮(チョンジャウ・ターイピン・チンジウ)。長洲の住民が地域の平安や安全を願い、災厄を払うために続けてきた祭礼だ。香港の無形文化遺産の公式説明では、清代後期に長洲で疫病が広がった際、住民が道士を招き、北帝廟の近くに祭壇を設け、神々に祈り、神像を村内に巡らせたところ、疫病が収まったという伝承が紹介されている。その後、住民は北帝(パッタイ)への感謝と平安祈願のため、毎年この祭礼を続けてきた。2011年には国家級無形文化遺産にも登録された。

北帝とは
では、先ほど登場した北帝とは誰だろうか。北帝は、道教で信仰される神で、北の王とも説明されている。長洲の北帝廟は1783年に島の漁師たちによって建てられたとされ、いまも長洲の重要な信仰の中心になっている。この行事の舞台が北帝廟周辺であることを知ると、これが観光イベントというより祭礼だということが見えてくる。
そもそも、なぜまんじゅうの祭りか
本祭で主役になるのが、平安包(へいあんまんじゅう)と呼ばれる白いまんじゅうだ。表面には 平安 の文字が押され、長洲では無病息災や家内安全を願う縁起物として親しまれてきた。祭りの時期になると、この平安包を高く積み上げた 包山(バウサン) が登場し、島の風景そのものが長洲饅頭祭らしい姿に変わる。もともとは祭礼で神前に供える供物としての意味を持っていたが、長洲ではその平安包が祭りの象徴として定着し、いまでは 饅頭祭 と呼ばれるほど強い存在になった。つまり、この祭りはまんじゅうを食べる催しではなく、平安への願いを込めたまんじゅうが祭礼の中心にある行事なのだ。

なぜまんじゅうの塔を登るのか
この祭りのハイライトとして知られるのが、搶包山(チョンバウサン)だ。現在は、平安包を取り付けた塔を選手が登り、できるだけ多くの包を取って得点を競う競技として行われている。もともと包山は祭礼の場に立つ象徴的な存在で、そこに積まれた平安包には福や平安への願いが込められてきた。高く積まれた包を取る行為には、縁起を授かるという意味合いも重ねられてきたとされる。いまでは観客にも分かりやすい見せ場として人気を集めているが、その背景には祭礼の象徴である平安包をめぐる信仰の名残がある。ただし現在の搶包山は昔の形をそのまま残したものではなく、事故を経て中止された後、2005年に安全対策を取り入れた競技として復活した。いま私たちが見る包山登りは、伝統を現代に合わせて受け継いできた形でもある。

もうひとつの名物、飄色パレードとは
もうひとつの見どころが、飄色(ピウシク)パレードだ。子どもたちが華やかな衣装をまとい、空中に浮いているように見える姿で町を巡る。長洲饅頭祭ではよく知られた催しのひとつで、包山登りと並んで祭りを代表する光景として親しまれている。

まとめ
この行事の魅力は、祭りそのものだけでなく、長洲という島の空気ごと味わえるところにある。高層ビルや夜景の印象が強い香港だが、長洲にはそれとは違う時間が流れ、北帝廟のまわりや細い路地に、人が暮らす島ならではの風景が広がる。飄色(ピウシク)や搶包山(チョンバウサン)の華やかさはもちろん見どころだが、白い平安包が並ぶ様子や、祭りを迎える町の気配にも、この行事ならではの魅力がある。珍しい催しとして見るだけでなく、香港のローカル文化や島の暮らしに触れられる体験としても印象に残るはずだ。
2026年の開催情報
- 開催期間:4月12日〜5月25日
- 飄色パレード:5月24日
- 搶包山決勝:5月25日 午前0時
- 会場:長洲北帝廟遊樂場周辺


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