教えて!香港マネー&ライフハック

2025/09/17

 国際金融都市・香港では、選択肢豊富な銀行の数、多岐に渡る通貨のほか、株式投資や保険商品など、情報が多いだけ錯綜してしまう方もいるのでは? ここではマネーに関する正しい知識を、長年に渡り香港で活躍するプランナーさんに伺った。

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解説者
香港金融ウォッチャー たけさん
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香港の証券取扱免許(SFC)と保険取扱免許(IA)を保有する独立系FP/プライベートバンカー。1989年香川県生まれ。東京大学経済学部卒業後、日本有数の投資家機関に入社し、英ロンドン駐在を含め、グローバル投資業務に従事。その後2019年からアジアの国際金融センターである香港を拠点にボーダレスな金融ビジネスを追究。国際舞台で働く日本人アドバイザーだからこそ出来る、テーラーメイドなサービスを提供。
https://linktr.ee/miyawakitakeru 

 

 

「金融知識に初心者もプロもないですよ」と笑顔でインタビューに応じてくれた解説者のたけさん。「資産設計は自動車の運転と似ています。初めはできないけれど、練習をすれば車を乗りこなし、重い荷物を運べたり、遠い場所まで移動できることと同じような利点があります。できないからやらないでいたならば、恩恵を受けることもできませんが、正しい資産設計の知識を身につけ、上手に回転させていくことは、誰もが実践できることだと思います」と話す。マネテクの気になるポイントについて一つずつ見ていこう。

 

知名度で目移りしがちだが銀行の機能はほぼ同じ!

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香港の代表的な銀行というと、HSBC、スタンダードチャータード銀行、そして中国銀行(香港)の3行です。香港で流通している紙幣のほとんどは民間銀行であるこの3銀行が発券しています。また、それぞれ米ドル、ユーロ、人民元の決済において、各国中央銀行との連携を可能にしています。
特にHSBCはひと昔前に、日本でも口座開設可能な時期があった(2012年に日本事業撤退)ことや、海外から口座開設ツアーが頻繫に開催された歴史があるので、世間的に知名度が高いのは事実ですね。
また街中のATMの3分の1以上はHSBCないしグループ内のハンセンバンク(恒生銀行)が占めているので、利用者はダントツに多いと言えます。ハンセン銀行は香港メトロ(MTR)内での営業を許可された最初の銀行なので、駅構内では同行のATMをよく目にします。
しかし知名度はさておき機能的な観点から見れば、どの銀行も特別な差はなく基本的なサービスは提供してくれます。香港に慣れてきたらどこか違う銀行も訪ねてみてはいかがでしょうか。

 

駆け引き?銀行口座は2つあるとよし

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銀行は預金者からなるべく多くのお金を集め、運用することで利益をあげ、預金者にそのほんの一部を金利としてリターンしています。そのため長期的に預金してくれる顧客が理想的です。一方で利用者の私たちは、一般的に銀行口座を頻繁に解約・開設することはほとんどありません。なので、銀行側も動きのない利用者に高い金利をオファーするモチベーションは低いです。
反対に、他銀と比較をして、他銀にお金を移すことが多い利用者は、メインバンクにとっては脅威です。このようなケースでは、他銀に移行されない内に高金利をオファーすることがあります。つまり給与振り込み口座であるメインバンクと、セカンドバンクを作り、相互間でお金を移行すると、銀行側に意識をされ、高金利を維持しやすいポイントになると言えるでしょう。新規マネーの扱いを受けることが大事、ということです。定期預金も新規優遇につられて組んだものの自動更新にしてしまうと、いつのまにか低い金利に切り替わっていますよ。

 

日本にはないマルチカレンシー制度?

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香港のマルチカレンシー口座は米ドル、ユーロ、人民元だけでなく、英ポンド、カナダドルなどに対応しており、最近だとタイバーツなども見られます。これらは香港の銀行の外貨専用ATMからそのまま出金することも可能です。また、香港の外貨預金は、預金保護(80万香港ドルまで、2024年10月1日改正)の対象だというのが特徴的です。日本の場合は外貨預金は預金保護の対象ではありません。具体的に言うと、日本で銀行が倒産した場合、外貨は戻ってこないということです。

 

外貨分散は生活通貨をベースに考えよう

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為替は株式のように上がっていくことが理想になっているものではなく、ある時は低く、ある時は高くなっていて、予想がつきません。そのような観点から2つ以上の通貨を持っておくと安心です。特に海外居住中は、自然と複数の通貨を持つ感覚や、為替の変動に注意が行きやすい環境が整っていますよね。
もちろん世界の通貨流通量からして米ドルを持つことは自然なことではありますが、使うか使わないか実用的な観点からも通貨を選択するといいでしょう。アメリカに行く用があれば米ドルを、ヨーロッパに行くのならばユーロを、という感じです。お金は結局使うためにあるじゃないですか。生活通貨があって、それとは別に資産通貨が必要なのかどうかです。
資産通貨として米ドルが選ばれやすい一番の理由は、基軸通貨だからです。例えば、香港ドル-日本円を換金する場合、実は裏側では「香港ドルー米ドル」と「米ドル-日本円」の2倍手数料がかかっているイメージで、米ドルを持っていると手数料は1倍だけになります。だから、米ドルはどの両替所に持っていっても断られることはありません。そういった観点から、安心して取り扱える通貨は米ドルだということがわかります。

 

ネット(デジタル)銀行アカウントは作った方がいい?

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2019年よりライセンス付与が始まったデジタル銀行ですが、銀行支店に出向く必要がなく、手軽に開設することができます。HKIDは必要なので原則香港居住者のみですが、利用者は3-4人に1人ほどとなっています。定期預金もできますし、銀行の中には、VISAやMasterCardなどと提携をしてデビッドカードないしクレジットカードを発行してくれるものもあります。街中での買い物においてこれらを利用できますし、デジタルのカードのみの場合でも、ネットでの買い物には利用できるので普段使いのカードとしては便利でしょう。1~5%のキャッシュバックで利用者に還元しているカードもありますよ。
デメリットは一部の銀行サービスが利用できないことです。例えば、小切手(チェック)は利用ができませんが、香港のビジネス慣習では未だに小切手がよく用いられるので、制約が大きいと感じる人もいるでしょう。また、対面での相談窓口がないので、問合せは電話などで行うことになります。言葉的な問題でハードルがあがるケースもありますね。デジタル銀行はライセンスはしっかりしているとはいえベンチャー(新興企業)です。預金保護制度を意識しながら、デジタル銀行の便利さを享受している人が多いのではないかと思います。

主な香港のネット銀行

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信用情報を取得してクレジットスコアを上げよう

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信用情報機関とは、加盟する金融会社から提供される信用情報を集約管理し、そして加盟会社に共有することで、一般消費者と金融会社の健全な信用取引を支える機関のことです。例えば、消費者がクレジットカードの利用申し込みを行なったとして、金融会社はその返済能力を判断するのに利用しています。
日本の場合、CIC(シー・アイ・シー)やJICC(日本信用情報機構)が指定信用情報機関として指定されています。一方、香港の場合は、TransUnion(トランスユニオン)などのCredit Reference Agency(CRA)※1がこの役割を担っています。ユーザー登録しておくと年一回は無料のクレジットレポートが提供されますので利用してみてはいかがでしょうか。
香港に来てすぐはこの信用情報がないので、クレジットカードの作成で非常に時間がかかった人もいるかもしれません。それはあなた自身がクレジットカードを作れない属性の人である、と判断されたというよりは、情報がなかったので慎重になったからだと受け止めてもいいでしょう。信用情報をケアし、クレジットスコアを上げることで、住宅ローンなどの金利が下がる等の利点があるので覚えておきましょう。

 

セールスを見分け、上手に、ただしはっきり断ろう

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これは日本人あるあるかもしれませんが、言葉の問題もあり、銀行口座開設に行った際、窓口でセールスマンの話を「うんうん」と素直に聞いてしまい、保険商品の話を延々とされていたなんてケースも多いです。香港はセールスが非常に強い土地柄なので、きっぱりと断ることも大切です。近年増えている営業の電話も、番号通知アプリ「Whoscall」などを利用して事前に防ぐ対策を打つこともおすすめです。勧誘電話だと思い、ビジネスなど大切な電話を取れないことは一番避けたいですよね。また、個人情報をこちらから話さないことも重要です。注意しましょう。

 

香港保険商品に利回りの上限ができた?

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2025年7月1日から香港保険業界では新しい規制ガイドラインが施行され、商品資料などで利回りの上限が設定されました。いわゆる貯蓄性のある保険商品の話ですが、具体的には香港ドル建ての場合年率6%、それ以外の通貨建ての場合6.5%となります。これは実際の運用利回りとは違い、資料上の数字の見せ方の話です。見せ方なので、そもそも保険商品で保証されている利回りというわけでもありません。ただ、数字が登場するとそれを意識して消費者は過度な期待を持ち、その数字を比較し商品を選ぶ傾向はあります。そのため、保険会社の過当競争を抑制し、消費者の冷静な判断を促すことを当局は意図している、と考えられます。

 

香港保険商品のかしこい選び方は?

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一番ベーシックな考え方は、必要な保障額、保障内容に対して保険料が安いかどうかです。保険料に影響を与えている一つの要因は、どのような利用者(集団)で構成されているかです。病気が多かったり医療体制が整っていなかったりする新興国では保険料は高めですが、日本や香港のように比較的安全な国では保険料は安めです。業種や既往歴によっても保険会社ごとの考え方は違います。
また、日本人の受け入れに積極的な保険会社もあればそうでないところもあります。実務的には、日本語の死亡証明書などを提出したい場合に、受け入れてくれないケースもありますので注意が必要ですね。
香港には様々な種類の保険商品がありますので、ご自身にあったものを探すと良いでしょう。

 

税金支払は積立すると楽!

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知らない人が多い割に使ってみると便利なのが、納税引当金(Tax Reserve Certificates, TRCs)※2です。個人的には税金積立と呼ぶことにしています。納税引当金と呼ぶからには、将来発生するであろう税金に備えて、予め積立を行っていくことを意図しています。積立を行なう口座は税務局に書面を送って開設してもらい、そこに定期的ないし必要に応じてお金を入れていくスタイルです。積み立てる際に購入するものが、TRCであり、購入時点での銀行での3カ月定期預金並みの利息がつくこととされています。このTRCは、納税のタイミングになれば自動的に償還され、税金の支払いに充てられることになります。納税引当金を納税に充てる旨のレター(Redemption Proposal)が来た後、実際納税期限に合わせてIRD側で自動処理をしてくれるので、納税期限を忘れていても大丈夫です。もちろん積立が足りなければ差額を自分で払う必要はあるのでそこは注意です。

積立額はHKD300から、毎月定額を積み立てるのであれば銀行口座引き落としを設定(Direct Debit Authorization)すると良いですし、それ以外のタイミングでもATMやPPS、インターネットバンキングなどからいつでも積立が可能です。
税金の支払いが一度に出ていく大きな出費だと感じる人は、あらかじめ積み立てることを考えてみてはいかがでしょうか。

 

上記の他にも、カード会社に電話をすればクレジットカードの年会費を免除してもらえることがあったり、家賃や通信料の値上げは交渉できたりと細かなマネテクはありますが、香港ならではの知恵を身につけると、より便利に、よりスマートな生活が楽しめます。本ページの情報が皆さんのお役に立てたら光栄です!

※1
Credit Reference Agency(CRA)の2社(2025.8.31現在)
TransUnion Credit
https://www.transunion.hk
PinAn OneConnect Credit
www.paoccra.com.hk

※2
納税引当金(Tax Reserve Certificates, TRCs)
詳細
www.ird.gov.hk/eng/tax/trc.htm

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