元駐妻が語る【帰国のリアル】座談会
退去トラブル!? 子どもが学校に馴染めない!? 香港でうっかりやり忘れた……。経験者だからこそ分かる、帰国体験談。子育て世代の元香港駐在妻たちに、帰国を振り返り本音で語りあってもらった。

菅原さん
香港在住歴11年8カ月、帰国月2024年3月(10カ月前)。帰国時は長女が小3、長男が小学校入学のタイミング。

谷口さん
香港在住歴4年10カ月、帰国月は2024年6月(7カ月前)。帰国後約2カ月で元の職場にフルタイム復帰。長男が小1の途中に帰国。

田中さん
香港在住歴3年、帰国月は2023年12月(13カ月前)。長女が小3、長男が年中の途中に帰国。
1週間後に帰国せよ!? 帰任辞令は突然に…
──帰任時期はいつ会社から伝えられましたか?
菅原(以下 菅): うちはもともと日本の学校の進学時期である4月に合わせて欲しいとお願いしていたので予感はあったのですが、半年前に何となくほのめかされ、4カ月前に内示がありました。
谷口(以下 谷): 我が家も4~5カ月前でしたね。
田中(以下 田):うちの夫は帰任を伝えられた際、「1週間後には帰ってきて欲しい」と言われたそうで……。
菅・谷: え!? 1週間!?
田: はい(笑)。でもさすがにそれは無理なので、夫は通知から1カ月後、私と子どもたちは学期末に合わせて2カ月後に本帰国しました。
退去後に高額請求の危機!?
──帰国において大変だったことはありますか?
菅: いちばん大変だったことは、帰国後の体調不良です。娘が帰国日にコロナ陽性でホテル自主隔離、2週間後に家族全員ノロウィルスにかかって、私はその後3カ月で2回、溶連菌に感染して高熱が出ました。帰国までの日々が想像以上にバタバタだったので、日本に帰って気が緩んだんでしょうかね。
田: 私も帰国作業は大変でした。夫はスーツケース1つで先に本帰国していたので、私と子どもたちの帰国のタイミングでまとめて荷物を送ることになったんですが、学校の送迎もあって手が回らなくて……。実家の母に手伝いに来てもらい、最後は母と一緒に帰国しました。

ムダ買い防止のため船便荷物を撮影しておきました(田)
──退去時のトラブルなどはありませんでしたか?
田: 私、実はうっかり家の鍵を1つ船便で送ってしまって。それだけじゃなくて、大家さん所有のテーブルをかなり傷めてしまっていたんです。退去の際、見積もりをとった後で代金の請求をすることになると言われ、いくらになっちゃうんだろうと帰国後もドキドキしていたんですが……。
谷: どうなったんですか!?
田: 結局テーブルの費用は請求されませんでした。家の鍵も、スペアキーの代金HKD50の支払いだけでいいと言われてホッとしました。
家族分離帰国はメリットが多い?
──日本での家探しはどのように進めましたか?
谷: うちは家探しのための航空券を会社が負担してくれるので、家族で一時帰国して決めました。ただ、地域や時期にもよるかもしれませんが、いい物件はすぐに入居者が決まってしまいゆっくり内覧できる状況ではなかったです。
田: 私は、先に帰国した夫が内見に行ってくれた時にZoomで繋ぎながら一緒に探しました。でも私の希望とは全然違うところを夫が決めちゃいましたけど(笑)。
──谷口さんもご主人だけ先に帰国されましたよね。大変だったのでは?
谷: むしろ、インターネットなどのインフラを夫に整えてもらった状態で日本での生活を始められたのでよかったですよ!
菅: 確かに香港みたいにある程度そろった状態で暮らし始められないから、それはありがたいかも。我が家は家族そろって帰国したんですが、照明もカーテンも何もないところからのスタートだったので結局最初は実家とホテルに頼りました。引越し繁忙期だったので香港からの船便が到着するのは2カ月後、しかもインターネット工事にも1カ月以上待って、とても困ったのを覚えています。香港からの荷送りは大変でも、家族分離で帰国すると新生活を始めやすいかも知れませんね。

引越しが無事終わりホテルでしばしゆっくり(谷)

帰国フライト前に空港で仲良しのお友だちと(谷)
香港生活は「幻」。時間の使い方に後悔も…
──帰国に関して後悔していることはありますか?
菅: クレジットカードの解約を忘れたことです。以前住んでいた家に、解約せず帰国されたであろう前住人のカードが届いたことがあったので、気をつけようとは思っていたのですが……。
谷: うちもそのままにしちゃってるかも!
──では、香港生活を振り返っての心残りはありますか?
谷: 今よりたくさん時間があったから習い事のような自分磨きをするとか、もっと時間を有効に使っておけばよかったなとは思います。
菅: 言われてみれば香港時代は今とは違う時間軸で生きているような感覚はありましたよね。帰国して働き始めたりするとやりたいことがあってもなかなか時間が取れないし。私も香港で過ごした日々って貴重な時間だったと今更ながら思います。
谷: そうそう。あの期間は幻だったのかとさえ思う(笑)。

最後のアフタヌーンティーはリッツで(田)

最終日にヘルパーさんと雲呑麺の食べ納め(菅)
新生活に戸惑う我が子…。どう向き合う?
──皆さんのお子さんは元インター校生だとか。日本の学校にはすぐ慣れましたか?
谷: 息子は帰国して2日後の、小1の7月に公立校へ通学し始めましたが、気にしないタイプっていうのもあってかすぐに馴染みましたね。
田: うちも年中の息子はすぐに楽しく通えましたが、娘は少し大変でした。小2の途中に公立校へ編入したんですが、色々な壁にぶつかったみたいで……。最初のころは先生から頻繁に電話がかかってきました。
谷: どんな内容で?
田: 香港の時と違って今の学校では子どもたちの話し合いで決めることが多いらしく、そこでトラブルになるみたいなんですよ。言い合いになった時、娘は日本語で上手く伝えられず怒ってしまうこともあったようですね。
菅: うちも小1の息子は全く問題なかったんですが、小3の娘は「学校に行きたくない」と言いだす日もありました。公立校ではあるものの1クラスに3~4人は帰国子女がいるのですぐに馴染めるだろうと思っていたんですが、親からは見えない色んなストレスがあったみたいです。学校で爆発することはなかったですが、帰宅してからナーバスになることが多かったですね。

来日した友だちと旅行後、娘は香港に戻りたいと涙(菅)
──お子さんは何がきっかけで落ち着いたんですか?
田: よくなるきっかけは学年が変わって仲良しの友だちができたことと、クラスにたまたまミックスの子がいて英語で話ができるようになったことだと思います。でも英語で会話していると先生に「日本語で話してほしい」と言われるらしいです……。
菅・谷: なんで!?
田: 悪口を言われてるんじゃないかとほかの子が思ってはいけない、という先生なりの配慮かもしれませんね。その子と2人の時は今でも英語で話しているそうですけど。
菅: 確かにある程度の年齢の子どもたちにとっては学校での言葉のストレスはありそうですよね。うちは逆に先生が協力してくれて、娘は英語、先生は日本語の交換日記を始めました。それもあってか最近は楽しそうに通学できていると思います。あとはやっぱり新しい友だちができたことが大きいですね。
谷: うちの息子はずっと好きだった野球を日本に帰ってから始めることができたので、それがストレス発散の場になっているのかなと思います。新しい環境でも香港でやっていたことが続けられたり、何か新たに好きなことが見つけられたりすれば、子どもたちも精神的に落ち着くかもしれませんね。