年金どうする?【MPFの運用・解約】
少子高齢化が進む香港で、2000年より政府主導で発足した年金制度「MPF(強制積立金)」。毎月の給与の10%を強制的に積立し、定年後の年金として活用できるものだ。永住権を取得後は、外国人でも強制的に加入が義務付けられている。今回は帰国帰任の際のMPF解約手続きについて平原さんにうかがった。

平原 奈津子氏
MPFマーケットシェアNo.1のカナダ系大手保険会社「Manulife」に2007年よりエージェントとして所属し、香港の在留邦人向けに各種保険を案内してきた。平原氏の丁寧でわかりやすい説明やサービスが人気の理由だ。
まずMPFについて教えてください。
香港で働く外国人は勤務開始より最初の13カ月は加入しなくても構いませんが、14カ月以降、基本的に加入が義務付けられています。自国に年金(厚生年金や国民年金など)を有していれば加入しなくても許されますが、永住権を取得後は、外国人でも強制的に加入する必要があります。対象は18歳以上~65歳未満で、毎月の従業員の給与HKD3万を上限として、10%(企業負担5%、従業員負担5%)を従業員の「年金」として積み立てます。
帰国帰任が決まるとMPFを解約しなくてはいけませんか?
必ずしも解約する必要はなく、運用を続けることもできます。しかし、ここ2~3年は円安傾向ですから、8割の方が解約され、日本円に替えて生活の中で活用したり、他の投資の資金にされています。一方で他の2割の方は、今後も香港での運用を続けたい、あるいは、また香港で就業するかもしれない、などの理由で、MPFをそのまま継続されている方もいらっしゃいます。
必要な手続きは?
原則65歳以上(早期退職の場合60歳)になるまで引き出しができませんが、移住や本帰国に伴い香港を離れる際は解約が可能です。下記の書類を専門機関(香港では民生署、日本では公証役場、海外ではNotary)に香港から永久帰国する旨、公証してもらう必要があります。一生に一度しか、この永久帰国の理由では引き出せないので、二度目は65歳(または60歳)以上になるまで待つ必要があります。
必要書類
①FORM MPF(S)-W(SD2)の原本
②FORM MPF(S)-W(O)の原本
③HKID コピー
④パスポートコピー
上記をMPFの管理会社へ提出する。
*振込先の銀行口座情報(日本の銀行も可能です)を記載する箇所がございます。
(香港以外の移住・居住予定証明書 日本以外の国へ移住する場合のみ)
解約手順
<主な民政事務局の所在地>
中西區 G/F., Harbour Bldg., 38 Pier Rd., Central
灣仔 G/F., 2 O’Brien Rd., Wan Chai
九龍城 LG/F., Kowloon City Government Offices,
42 Bailey St., Hung Hom
觀塘 G/F., Eastcore, 398 Kwun Tong Rd., Kwun Tong
1. 民政事務局で宣誓(永久出国する旨の文章を読み上げます)
2. 左記①②③④の書類をMPFの管理会社へ提出する
3. 通常は、4~6週間後に振り込みされる
まず①と③を携えて、民政事務局へ向かいます(予約不要)。ここで、英文もしくは中文で書かれた宣誓書(永久に香港を離れることに虚偽はない旨など)を、公証人の前で読み上げ、宣誓を行います。宣誓が終わると申請者と公証人が①に署名し、民政事務局の捺印をもらいます。
最終的にこれと他の必要書類②③④をMPFの運用会社へ送って手続きは完了し、後はMPFの入金を待つのみとなります。日本で、MPFのご解約を準備される場合には、公証役場で同じことをしますが、その場合、約15,000円の費用がかかります(自治体によって変動あり)。通常は、MPFの管理会社が書類を受け取ってから、ご入金まで、4~6週間を要します。ただし、サインの不一致や、勤務していた会社でMPF上の退職手続きが取られていないなどの不備があると振込みまでは数カ月を要する場合もございます。サイン不一致を避けるためには、複数のご署名を書いておいてください。そのいずれかが符合すれば、OKとなります。前職のMPFが正常に退職の状態になっていない場合には、その法人様のMPF担当者に連絡を取り、速やかに退職の手続きをしてもらってください。
Manulife (International Ltd.)
16/F., The Lee Gardens, 33 Hysan Ave., CWB
(852)9722-0012
natsuko_hirahara@manulife.com.hk(メール)
www.hiraharanatsuko.hk