在住中の今こそ行くべき【ディープな海街】
旅行者にとってはなかなか足を延ばしづらい離島や奥地も、香港に住んでいる今なら訪れることができるもの。目立った観光スポットはなくても、どの街にもそれぞれ違った風情と魅力がある。お気に入りの海街を見つけてみよう!
饅頭だけじゃない魅力がたっぷり!
【長州】
毎年多くの人で賑わう、通称まんじゅう祭り「太平清醮」が有名な長州だが、普段はのどかな雰囲気が漂う。真水が少なく農耕に適した土地もほとんどない長洲では、漁業、並びに海産物加工業がほぼ唯一の産業だったが、70年代からは「渡暇屋」と呼ばれる簡易宿泊施設や海鮮料理店が海沿いに軒を連ねるようになり、ちょっとしたリゾート地として知られるようになった。
アクセス:中環フェリーターミナル5番・長州行きの高速船で40分、普通船で60分
長洲滑浪風帆中心
東湾と観音湾の間の、小さな岬に位置する「長洲滑浪風帆中心(Cheung Chau Windsurfing Centre)」。長州出身のウィンドサーフィン選手で、香港初の五輪金メダリスト、李麗珊(リー・ライシャン)の親族が経営するこの施設は、ウィンドサーフィンの聖地と呼ばれている。サーフボードやスタンドアップパドルボート、カヤックなどをレンタルできるほか、初心者向けスクールも開講。メダリストを育てたスポーツセンターで、ウィンドサーフィンデビューしてみない?
No. 1 Hak Pai Rd., Cheung Chau
www.ccwindc.com.hk
張保仔洞
これまで数多くの映画や物語で主人公として描かれてきた張保仔(チュン・ポー・チャイ)は、18世紀後半に南シナ海に出没していた悪名高い海賊。そんな彼の隠れ家のひとつで、財宝の隠し場所でもあった洞窟が、ここ長州に残る「張保仔洞」だ。大人でも怖くなるほど窟内は真っ暗で、懐中電灯やスマホのライトがないと先に進むことは不可能なほど。フェリー乗り場から山道を40分ほど歩くので、ハイキングがてら訪れてみて。
興記士多
昼からのアルコールは、週末ならではの贅沢。長洲には浜辺でお酒を提供している店がいくつかあるが、なかでも「興記士多(ヒンキー・ビーチストア)」は格別。フェリー乗り場から10分強の、こぢんまりとした観音湾ビーチに建つ海の家なのだが、香港のクラフトビールをはじめ、ハワイや沖縄など世界各地の厳選ビールを取り揃えている。日がな一日、海風に吹かれながらのんびりと過ごしてみては?
Kwun Yam Beach, Cheung Chau
ピンクイルカと水上家屋の漁村
【大澳】
大嶼(ランタオ)島の西側に位置する小さな漁村、大澳(タイオー)。今もなお、多くの村人が棚屋と呼ばれる水上家屋で暮らしており、香港が金融都市として発展していく前の原風景を垣間見ることができる。2000年の大火災で90軒以上が焼失したが、ほとんどの住民はトタンなどを使って棚屋を再建。その後も個々に増改築が繰り返され、香港ではここでしか見られないカオスな海街となっている。
アクセス:東涌(トンチョン)から11番バスで70分
少林武術文化中心
少林武術は世界で最も古い歴史を誇る、禅と一体になった武技。そんな少林武術を香港でも広めようと2006年に開設されたのが「少林武術文化中心」だ。基本の動作を学ぶ2時間クラスのほか、英語での案内も可能な大澳観光ツアーと武技レッスンがセットになったデイキャンプなども用意されており、子供から高齢者まで気軽に少林武術を学ぶことができる。肉体が鍛えられるだけではなく、ストレスの溜まりやすい都市生活での精神訓練にもとても役に立つそう。
ピンクイルカ・ウォッチング
見ると幸運が訪れると言われるシナウスイロイルカ、通称ピンクイルカ。年々その数は減っており、現在では絶滅危惧種に指定されている。大澳の湾は、そんなピンクイルカが頻繁にやってくる場所として知られており、船でイルカを探すウォッチングツアーが楽しめる。バスターミナルを降りてすぐの場所にある橋の周辺にはツアーの呼び込み人が並んでいるが、いずれも通常は水上家屋観光とセットになっており、20分ほどかけて漁村とイルカの出没しそうな場所を周遊。運が良ければドルフィンジャンプを拝むことができる。
Tai O Lookout
バスターミナルから15分ほど歩くと見えてくる「大澳ヘリテージホテル」。英国統治時代に海賊を監視するため建てられた元警察署で、真っ白な壁と廊下のアーチが美しいコロニアル調の洋館だ。同ホテルのレストラン「Tai O Lookout」は、ガラス張りの天井が開放的で、森と海に囲まれたこのロケーションにはぴったりな空間。ほとんどの客がオーダーするのは大澳名物のえびペーストを使用した炒飯で、しょっぱさがクセになる。ほかにも大澳産食材にこだわった、ここでしか味わえない料理を提供している。
Shek Tsai Po St., Tai O, Lantau Island
www.taioheritagehotel.com
夕暮れ時の景観は格別!
【馬湾】
大嶼島と青衣(チンイー)島の間にあり、島全体がまるでテーマパークのような馬湾(マーワン)。新石器時代にはすでに住民がいたことも分かっており、近代においては250年ほど前から小さな漁村があった。1997年の青衣大橋開通とともに大規模な開発がスタートし、2002年にはパークアイランドという高層マンション群が完成。多くの人々がこの島に移り住んだ。のちに自然公園「馬湾公園」と世界初の実物大「ノアの方舟」を設置したテーマパークがオープン。レジャースポットもある自然豊かな島として週末には都心部からも人が集まる。
アクセス:中環フェリーターミナル2番・パークアイランド行きの船で20分
馬湾公園
馬湾開発プロジェクトに伴って2007年に開園したネイチャーガーデン、馬湾公園。綺麗に手入れされた広大な園内では、花と緑を愛でながらのんびりと過ごすことができる。敷地内には廃校となった馬湾公立芳園学校を改装して作られた博物館「芳園書室(ヘリテージセンター)」があり、約5000年前の墓や人骨、陶器片など、この小島で発掘された遺跡の出土品が展示されている。
Noah’s Ark
馬湾といえばここ、体を動かしたり頭を働かせたり、五感を使って楽しく学べるテーマパーク、ノアズアークだ。旧約聖書に登場する「ノアの方舟」を模した巨大な船型施設のなかには、小さな動物園や4Dシアター、プレイルームなどがある。また宇宙をテーマにした博物館「太陽館」や、物語に登場する67種の動物たちの原寸大オブジェが飾られた庭園も。幼児から小学生の子どもで、動物や宇宙について興味があるなら一度訪れてみてもいいかも。
33 Pak Yan Rd., Ma Wan
www.noahsark.com.hk
Cafe Roma
馬湾唯一の砂浜、東湾ビーチ沿いに店を構えるレストラン、カフェローマ。素材にこだわった、カジュアルなヨーロッパ料理を提供する人気店だ。なんと言ってもその魅力は、目の前に大きくそびえ立つ青馬大橋と穏やかな波が打ち寄せる浜辺の風景。自然豊かな馬湾では犬を飼っている住民も多いため、テラス席ではペットと一緒にくつろぐ客も多い。
L1, Shop 7&8, Beach Commercial Complex, Park Island
www.caferoma.com.hk
ハイキングと海鮮料理を楽しむならここ!
【南丫島】
香港で最初に人間が定住したと言われる南丫(ラマ)島。南端の砂浜には、毎年ウミガメが産卵のため上陸する。大嶼島、香港島に次いで3番目に大きい島で、在港欧米人にも大人気。都会の喧騒を嫌って、フェリーで毎日中心部まで通勤する移住者も多い。この島には2つのフェリー乗り場があるが、設備が整ったビーチまで近いほうが榕樹湾(ユンシュエワン)で、海鮮レストランやバーなどが多いのが索罟湾(ソッグワン)。目的に合わせて到着ターミナルを決めよう。
アクセス:中環フェリーターミナル4番・榕樹湾行き、または索罟湾行きの船で40分
天虹海鮮酒家
索罟湾フェリーターミナル付近は、海鮮料理店やバー、カフェ、土産店などが並ぶ、島いちばんの繁華街。なかでも常に賑わいをみせているのが「天虹海鮮酒家(レインボー・シーフードレストラン)」だ。英語表記のセットメニューやアルコール類も取り揃えるなど外国人に優しいので、欧米の観光客も多い。港に面したオープンシートになっているので、目の前を行き来する漁船を眺めながら、ハイキング後の疲れた体を癒すことができる。帰りは中環と尖沙咀まで専用船で無料送迎してくれるのも人気の秘密。
G/F., 23-27 First St., Sok Kwu Wan, Lamma Island
www.lammarainbow.com
洪聖爺湾泳灘
榕樹湾フェリーターミナルから20分ほどの場所にある洪聖爺湾泳灘(ホンシンヤービーチ)。小さなビーチだが公共の更衣室やトイレも完備されており、夏場は海水浴客で賑わう。またビーチの定番、無料バーベキュー場も設置されているので、材料を船で運んで週末バーベキューを楽しむ人も多い。ビーチ前には小さなホテルと海に面した絶景レストランも。特に夕暮れ時は最高で、島の発電所にある長い煙突の向こうに夕陽が沈んでいく。
ハイキング
比較的傾斜がなだらかで景色もいいことから、南丫島は軽いハイキングをするにはぴったりな場所。2つのフェリー乗り場を繋ぐ約90分のハイキングコースを楽しむなら、榕樹湾側に上陸し索罟湾の海鮮レストランで食事するルートがおすすめだ。道中、香港人なら誰もが知る豆腐スイーツの有名店「建興亜婆豆腐花」や戦時中に日本軍が作った防空壕「神風洞」、150年以上の歴史がある「天后廟」を過ぎる。
電波すら入らない孤島!
【東平州】
香港最東端の離島、東平州(トンピンチャウ)。最盛期には2,000人ほどが住んでいたというが、1960年代にはほとんどの住民が島を去り、現在は週末のみをここで過ごす人がいるだけとなった。そんなこともあり、周辺の生態環境はここが香港とは思えないほど。透明度の高い海にはサンゴ礁が広がり、その周りを泳ぐ熱帯魚の姿が見える。香港海域で見つかっている84種の石サンゴのうち、実に65種が東平州周辺に生息しているそうだ。
アクセス:MTR大学駅から徒歩10分の馬料水フェリーターミナルから船で90分。予約はウェブサイト(www.traway.com.hk/ferry)から可能。
ハイキング
ハイキングコースも整備されており4時間あれば十分に島を一周できるが、まずは船着場を降りてすぐの海岸沿いをぜひ歩いていただきたい。5,500万年前にできたという蓄積岩が層になって隆起している様子や、ゴロゴロと転がる岩のようなサンゴを見ることができる。また引き潮になると天然のウニやナマコ、カニ、不思議な形の貝などが姿を現し、とにかく周辺には海洋生物が豊富なのがわかる。基本的に平坦な道を行くので小さな子ども連れにも負担が少ない。
廃村散策
ハイキングコースは、かつての村落をいくつか抜けていく。残された建物はそのほとんどが廃墟となっており、塗装が剥がれた壁からは積み上げられた天然の蓄積岩が顔を覗かせる。これはこの島特有の貴重な建築資料といえるだろう。木のつたが絡まりつく半壊した家屋は、廃墟好きにはたまらない撮影スポットとなっているが、日が落ちてからウロウロするには少し怖いかもしれない。
新昌士多
この島には、電気やガス、水道が通っていない。それにも関わらず、井戸水や発電機などを使用した週末限定のレストランが数店舗営業しており、島で採れた新鮮なウニや貝、農作物を使った料理を振る舞ってくれるので、食事に困ることはない。おすすめはビーチ前のレストラン「新昌士多」。特に蒸し巻き貝や冬季限定のウニ炒飯が人気だ。同店ではシュノーケリング用具や浮き輪などをレンタルできるほか、有料シャワーもあり、公共海水浴施設のないこの島ではありがたい存在だ。