僕の香妻交際日記 家族との調和を保ちながらW杯や最新の映画を観たい人へ
第90回
私には趣味がほとんどないのだが、もし時間があったら何がしたいかと聞かれれば「香港映画を観る」と答えるだろうか。
もともと父が刑事モノのドラマを観るのが好きだったので、その影響で私も小さい頃から刑事モノのドラマや映画に面白さを覚えるようになった。
日本にもかつては西部警察、あぶない刑事、踊る大捜査線といった超名作刑事ドラマがあったが、最近では相棒の新シーズンが時々あるくらいで、それ以外はシリーズになるほどの名作はあまり輩出されていない。テレビマニアの父も今はBSで遺留捜査や科捜研、コロンボなどの再放送を観るくらいだと言っている。父も私も日本の映画事情にはあまり詳しくないが銀幕の方でも刑事モノの映画は今は昔ほど流行っていないように感じる。
一方で香港は刑事モノの映画やドラマの新作が毎年どんどん出る。日本と香港の作品の違いはその過激さだろう。香港では麻薬、爆発、殉職といったシーンが一作品中にこれ見よがしにたっぷり出てくる。日本の作品では主演俳優の妻や子どもたちは悪党にさらわれることはあっても最後にはギリギリのところで助かるという展開が定番だが、香港では女、子どもも容赦なく殺される。
私の記憶では舘ひろし、織田裕二、水谷豊が悪役を演じて殺されるシーンは観たことがないが、香港では劉德華(アンディ・ラウ)、郭富城(エーロン・クォック)、古天樂(ルイス・クー)といったスーパースターでも平気で悪役を演じるし、平気で死ぬ。
香港では女優の卵は売春婦役、俳優の卵はチンピラ役から始めると言われていて、襲われたり殺されたりする演技を一人前にこなしてようやく次の役を与えてもらえるのだ。
このように伝統的に香港の刑事モノは過激なシーンが多く、人気作品でも子どもと一緒に観るのがためらわれる作品もあるため、結局我が家でも新作の香港映画が公開されて興奮しているのは私だけになる。
新作映画を観たいのが私だけの場合、その作品を映画館で観るのは難しい。かといって定期購読しているディズニープラスでは新作がリリースされるまで数カ月かかる。そして、ようやくその作品がディズニープラスで観られるようになっても、テレビは基本的に妻と娘に占領されているので観られない。そうやって私はほとんどの大ヒット映画を見逃してきた。
香港映画を観る頻度が減ると私自身の広東語のレベルも下がるし、新しい女優や俳優の情報の更新も途絶える。まさに虻蜂取らずだ。
人間は困難に直面してこそ、その高等生物としての真価を発揮する。
私も最近になってようやく映画館に行かず、テレビを使わずに妻と娘に迷惑をかけないように香港の最新映画を観る方法を見つけた。
学生の頃は世界中の90%のコンテンツは英語を使って検索することで情報を得ることができたし、20年前は英語で検索すればインターネットで映画を無料で観ることもできた。その後時代は大きく変わり、今は中国語がその役割を担っている。
インターネットで「線上看」と検索するとさまざまな中国の視聴サイトがヒットする。それらのサイトでは映画に限らず、ドラマ、スポーツや日本のバラエティ番組など世界中の人気コンテンツが視聴可能だ。香港でも大いに盛り上がったEURO2024をLIVEで視聴することもできた。
ただし、これらのサイトは安全性の面で疑問があるのと、観れそうで結局観られないサイトも多いので、根気強くそれぞれのサイトをチェックしていく必要がある。
お気に入りのサイトが見つかったら、あとは妻と娘が寝静まった夜にこっそりとiPadで映画を視聴する。
睡眠時間は圧倒的に削られるが、このようにして誰にも迷惑をかけずに最新映画を楽しめるのだから、それだけの価値はあると私は思っている。
ルーシー龍(りゅう)
東京都出身。香港歴11年。現在は香港の現地法人で人事部長を務めている。モットーは三度の飯のために飯を食わない。特技は豚のように食べること。