セントラル「Sagrantino(サグランティーノ)」俺のグリル“ハラミ”を 喰ってみろ。

2014/10/06

グリル

ここのところ、木曜日はレディースナイトで女性はドリンクが無料だったり、金曜日は予約でいっぱいだったりして座れない事が時々あったので、発想を変えて月曜日のサグランティーノに行ってみた。やはり、木曜、金曜日に比べると席に余裕があるらしく、スンナリと通してもらえた。行く前に他店でワインの試飲取材があった為に、ほろ酔いで入店したので、これから書くことは記憶違いかもしれない。取材に続いて白ワインを五臓六腑に流し込みながら、メニューを眺めていた。メインから注文を組み立てていき、前菜はアレでもない、コレでもないと頭の中で考えを巡らす。

パスタならば、オーナーシェフの安田さんがボローニャ駅の近くのトラットリアで学んだという、わざと不揃いに挽肉を叩き、隠し味に少量のエスプレッソを入れるボロネーゼ(※ボロネーゼに関する記事はPPWのWEBサイトでバックナンバーが閲覧可能)か、トマトソースと生クリームに海老ミソが決めてとなる海老とキャビアのグランビアパスタのどちらかが僕のお約束だ。イタリアのコース料理でパスタはプリモピアット(前菜をカウントせず第1皿目の意味)と言って、意外にも食事の始めの方に登場するらしいが、僕は日本人なので麺類は“締め”の意味合いが強くなる。「ん~ボロネーゼならば、前菜は魚か“シェフのサラダ”がいいかなぁ」そんな風に思考していると、隣の席の話し声が耳に入ってきてしまった。もう一度断るが僕はほろ酔いである。何でも、隣の席の男性客は先日、北極で日本料理屋をオープンさせたらしい。

「え?北極?!」耳がダンボになってしまう。何でも北極は一応フィンランドが管理をしているが、誰の土地でもないので法律がなく、誰でもレストランを開業できるそうな。そして、オープン前はそんなに多くの来客数を予定していなかったので、スタッフが揃わなくてもオープンに踏み切ったところ、一日の来店数は何と平均60名だという。「仕方がないから、スタッフが決まるまでの3ヶ月間、オーナーの私が自ら皿洗いをやりましたよ。あはは。」何てスケールが違う話なんだろう。

そんな時、オーナーシェフの安田さんが、絶妙なタイミングで話しに参加してきて、話しを私にも振ってくれた。これで盗み聞きではなくなったぞ。2つ、3つ会話のキャッチボールをすると、僕から“シェフのサラダ”をオーダーされた安田さんは厨房に姿を消した。「いや~、このお店の魚料理は本当に美味しいですね。」隣の北極レストランのオーナーさんがお連れさんと僕に言う。赤い帽子が似合うお連れさんはサグランティーノさんの常連さんらしく「そうなのよ。旬の魚を日本から空輸で取り寄せて、その日のスペシャルとしてカルパッチョとかで出してくれるのよ」と返していた。お隣のテーブルを拝見すると、どうやら安田さんのお任せで料理が運ばれてきているようだ。そうそう、特に木曜日や金曜日のグループ客は最近安田さんのお任せで食べる人達が増えているような気がする。僕の“シェフのサラダ”をホールスタッフさんが運んできてくれ、女性ではひとくちで食べられないくらい大きなモッツアレラチーズを僕は口に運びながら、時折お隣の会話に参加させていただいた。ふむふむ、食材やお酒はフィンランドから船で運ぶけど、輸送料が相当高い。かと言って、ひとコンテナでお酒を注文するほど、掃けない。なるほど。画期的なことも、色々と大変なんですねぇ・・・。

そんな時だった。お隣の次の料理を安田さんが肘を90度に曲げて左手を上げながら、右手で運んできた。「今日は29日なので、肉の日ということでコレです。ハラミのグリル。」お二人の歓声が上がる。ゴツイ肉に何ともインパクトがあり、添えられたポルチーニのリゾットと四角いフレンチフライの豊かな風味がこちらの席まで漂ってくる。「じっくり赤ワイン特製ソースに漬け込んで良く寝かせたハラミを丁寧にグリルしてます。」そう言うと慌しそうに安田さんは厨房へと去っていった。実は先ほどトイレにたった際に、ちらりと厨房の小窓を覗いたら、安田さんが仁王立ちでパスタを盛っていた。普段の温厚な雰囲気とは違って、全身から「俺の渾身の一皿を食べてみろ。」と真剣なオーラが放たれていた。

2014年の2月は料理研修で1ヶ月丸々休業して、欧州を回った安田さん。グリルやパスタ以外にも相当数のピンチョスがレパートリーに加わった。欧州では300種類を越す料理を食べたというから道理で納得だ。「安田さん、私もハラミのグリルお願いします!」あっちゃーという顔をして、壁に右手をついて安田さんが言う「鳥丸さん、ゴメン!今日は肉の日だったんでオープンから相当数が出てしまって今日はもう無いんです!次回はちゃんと用意しておきますので!」ワインをガップリと口に含んだ僕は「おお、そうでしたか。また来る理由ができましたね。では、今日もボロネーゼでお願いします。」と答えた。今夜も僕のボロネーゼ連続オーダー記録が更新された。

シェフ

イタリアン

 

Sagrantino Italian Restaurnt
住所:5/F., The Loop, 33 Wellington St., Central
電話:+852-2521-5188
定休日:日曜
ウェブ:http://www.sagrantino.com.hk

 

cbb

 

前編:

http://www.pocketpageweekly.com/?p=12658

後編:

http://www.pocketpageweekly.com/?p=12672

文:鳥丸雄樹

プロフィール

鳥丸雄樹(Torimaru Yuki)
香港を拠点に活動するフリーライター。ロスの日刊サンへの寄稿を経て今に至る。自身がベース
ボーカルを担当したオルタナティブなハードコアバンドを引き連れて90年代は、ロンドンのコヴェントガーデンにてライブ活動を行う。現在、随筆風フェイスブックも更新しお友達も募集中。

 

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