香港ソウルフード特集
多彩な食文化が息づく美食の街・香港。今特集では、屋台発祥のローカルグルメから、長年愛される老舗の味まで、日常のひとコマに寄り添うソウルフードをご紹介!朝食にお粥、昼はワンタン麺、小腹が空けば咖喱魚蛋……。暮らしてわかる、香港グルメの底力!
日本にはないメニューも豊富!
点心
清朝時代、香港や広東省を中心に、中国茶と共に点心を楽しむ「飲茶」の習慣が広まった。料理を注文する前にまずお茶の種類を選ぶことや、お茶を注いでもらう際に指でトントンとテーブルを叩く感謝のしぐさなど、日本ではあまり見られないテーブルマナーも魅力のひとつだ。メニューの漢字から味を想像しながら注文するのも楽しい。
食べるならココ!
蓮香樓
中環にある1926年創業の「蓮香樓」は、ワゴンに点心を載せて店内を回る昔ながらのスタイルが人気。そんな同店が先日、尖沙咀に新店舗をオープンさせた。しかも24時間営業。いつでも好きな時間に老舗の味が楽しめるようになった。
尖沙咀店:G/F. & 2/F., Cheung Lee Commercial Bldg., 25 Kimberley Rd., TST
24時間営業
具はどこへ⁉ コシ命の香港スタイル
ワンタン麵
アジア各地で広く親しまれている雲呑麺(ワンタン麺)だが、香港のそれは、雲呑にプリプリのエビが入っていることと、弾力のある細麺が特徴。また、麺が雲呑を覆い隠すように盛り付けられていることが多いが、これはスープで麺が伸びてしまうのを防ぐため。麺のコシを何よりも重視する、香港ならではの工夫だ。初めての人は、「雲呑がない!」と焦らないように注意しよう。
食べるならココ!
麥明記
メニューに「嫡傳=直伝」とある通り、正統派の雲呑麺を提供する店として人気。佐敦(ジョーダン)の名店「麥文記」をはじめ、店名に「麥」の字がつく麺屋は、伝統的なワンタン麺を守り続ける店として知られている。
G/F., 309, Queen’s Rd. West, Sai Ying Pun
10:30~21:00
揚げパンを浸して食べよう!
中華粥
米の形がなくなるほどトロトロに煮込まれているのが香港スタイルのお粥。漁民の間で親しまれていた艇仔粥(魚介・牛肉・ナッツなどが入った粥)のほか、皮蛋痩肉粥(ピータンと塩漬け豚肉粥)や及第粥(豚モツ粥)など種類豊富で、しっかりと出汁が効いているのが特徴だ。胃にやさしいので朝食にしたり、体調がすぐれない時の回復食にしたり、油が多い点心と一緒に楽しんだりと、幅広いシーンで親しまれている。油条(ヤウティウ)と呼ばれる揚げパンを浸して食べる人も多い。
食べるならココ!
正斗粥麺専家
1946年創業のミシュラン掲載店。跑馬地(ハッピーバレー)にある本店のほか、空港を含め香港各所に店を構える。どの店舗も清潔感があるので、「ローカル過ぎるのは少し苦手…」という人にもおすすめ。
跑馬地店:G/F., Chun Hing Mansion, 21 King Kwong St., Happy Valley
月~土 11:30~23:30 日祝 9:30~23:30
だしのうまみとほろほろ肉が最高!
牛バラ麵
八角や花椒などの香辛料と共に、厚切りの牛バラ肉をじっくりと煮込んだ牛腩麵(牛バラ麺)。ボリュームのある肉は噛むたびにホロホロとほどけていくほど柔らかい。スープの味は、肉のうまみが引き立つあっさり系や、コクのある薬膳系など、店によってさまざま。大衆食堂から高級店まで、幅広い場所で食べられる香港の国民的フードと言える。
食べるならココ!
九記牛腩
屋台食堂、大排檔(ダイパイドン)から始まった老舗店で、1997年に現在の場所に店を構えて以来、行列が絶えない人気店となっている。麺の種類は選べるが、おすすめは伊麺。コクのあるスープに平打ちの卵麺が絡んで絶品だ。カレー味の咖哩牛筋腩麺も人気。
G/F., 21 Gough St., Central
月~土 12:30~22:30 (日祝休)
吊るされた炙り肉に食欲全開!
焼味
焼味(シュウメイ)は、下味をつけて炙り焼きにした肉料理の総称。店頭にロースト肉がずらりと吊るされた光景は、香港の街並みに欠かせない存在となっている。日本人にも馴染み深い叉焼(チャーシュー)のほか、パリパリの皮が特徴の脆皮焼肉(ローストポーク)、肉の味が濃い燒鵝(ローストグース)などがあり、ご飯の上に数種類の肉をのせた焼味飯は、香港人の定番ランチ。
食べるならココ!
天龍軒
庶民の味として街中でよく目にする焼味だが、ゴージャスな空間で楽しみたいなら、リッツカールトンホテル内にあるミシュラン店「天龍軒」がおすすめ。102階からの絶景とともに、上質なイベリコ豚の叉焼や絶品のローストポークなどを堪能できる。
Level 102, International Commerce Ctr., 1 Austin Rd. West, Kowloon
月~金 12:00~14:30、18:00~22:00
土日 11:30~13:00、13:30~15:00 、18:00~22:00
待ち時間さえごちそうの絶品おこげ
ボウジャイ飯
こんがりと焼けたおこげが特徴の煲仔飯(ボウジャイファン)は、香港を代表する土鍋ごはん。冬の風物詩として知られており、寒い季節にだけ提供する店もある。炭火で炊く昔ながらの調理法を守る店も多く、注文を受けてから炊き始めるのが一般的。そのため提供までに数十分かかることもあるが、できたての香りと風味は格別だ。
食べるならココ!
興記菜館
油麻地(ヤウマテイ)には煲仔飯の店が軒を連ねる一角があるが、そのなかでも特に人気の行列店。牛肉や中華ソーセージ、魚など、煲仔飯だけでもメニューは実に約80種類ある。牡蠣のたまごフライも看板メニューのひとつ。
G/F., 12, 14, 15, 17, 19 Temple St,. Yau Ma Tei
月~日 13:30~15:30、17:30~23:00
食べ出したら止まらない香港版ベビーカステラ
エッグワッフル
エッグワッフルとも呼ばれる雞蛋仔(ガイダンジャイ)は、パリパリとフワフワの食感が同時に楽しめる香港定番の街角スイーツ。まだ卵が高級品だった時代、屋台で割れてしまった卵を無駄にしないために考案されたと言われている。専用の型に生地を流して焼き上げるスタイルで、日本のベビーカステラのような素朴さが魅力。
食べるならココ!
Mammy Pancake
香港内に多数の店舗を構える同店。推奨ストリートフードとしてミシュランガイドにも掲載された。チョコや抹茶、アールグレイのほか、アボカド、鳳凰巻(海苔を巻いた中華菓子)などといった変わり種も人気。
尖沙咀店:Shop 16, G/F., New Mandarin Plaza,14 Science Museum Rd., TST
月~日 11:00~22:00
サクふわがたまらない!
パイナップルパン
ふんわりとした甘めのミルクパンに、クッキー生地をのせて作る菠蘿包(ボーローバオ)=パイナップルパン。焼き上がるとクッキー生地がひび割れ、パイナップルの皮のように見えることからこの名がつけられた。たっぷりのあんこを詰めた紅豆菠蘿包や、チャーシュー餡を入れた叉燒菠蘿包、熱々のパンにバターを挟んだ菠蘿油などアレンジも豊かだ。無形文化遺産に登録されるほど、香港の人にとっては特別な存在。
食べるならココ!
祥興咖啡室
地元のベーカリーや茶餐廳で必ずと言っていいほど目にする菠蘿包だが、この店のパンは別格。テイクアウトでもわざわざ一度温め直してくれるので、ぜひホカホカの状態でいただこう。香港らしい内装も人気の秘密で、朝早くから行列ができることもある。
G/F., 9-11 Yik Yam St., Happy Valley,
月~日 7:00~17:00
香港屈指の背徳スイーツ
フレンチトースト
広東語で西多士(サイドーシー)と呼ばれる、香港版フレンチトースト。揚げた食パンにピーナツバターを挟み、バターとたっぷりのシロップでいただく背徳感たっぷりの定番おやつだ。1950年代に高級スイーツとしてホテルなどで提供されていた本来のフレンチトーストが、その後庶民の味として独自に進化。現在のスタイルになってからは、茶餐廳でおなじみのメニューとなっている。
食べるならココ!
金華冰廳
菠蘿包の名店として有名だが、実はフレンチトーストもおすすめ。地元民、旅行客ともに、いつも多くの人で賑わっている。相席必至なため、ゆっくりティータイムを楽しむ雰囲気ではないが、そんな賑わいも含めて香港らしさを堪能してみて。
G/F., 47 Bute St., Prince Edward
月~日 6:30~23:30
養生食から二次会の定番へ!
糖水
糖水(トンスイ)は、自然な甘さが特徴のスープ状スイーツ。もともとは体にたまった「湿」を取り除く健康食として親しまれていたが、今では食後のシメとして楽しむ人も多く、二次会の場として夜遅くまで賑わう店もある。紅豆沙(あずきスープ)、芝麻糊(黒ゴマスープ)、薑汁蕃薯糖水(さつまいもの生姜スープ)など、種類は実に豊富。日本人にも人気の高い楊枝甘露(タピオカマンゴーミルク)は、1980年代に広東料理店「利苑酒家」が初めて提供したと言われている。
食べるならココ!
緑林甜品
深水埗(シャムスイポー)に店を構える1984年創業の老舗。昔ながらの薬膳系スープに加え、現代風スイーツも数多く揃えており、学校終わりの学生からお年寄りまで、世代を問わず親しまれている。
G/F., 77-79 Un Chau St., Sham Shui Po
日~木 14:00~23:45 金 14:00~翌1:00
小腹が空いたらコレ!
カレーフィッシュボール
麺のトッピングや鍋の具材としてもおなじみの魚蛋(フィッシュボール)。なかでも咖喱魚蛋(カレーフィッシュボール)は、かつて移動式屋台の定番メニューとして親しまれ、現在では香港を代表するストリートスナックとしての地位を確立した。揚げたふわふわのフィッシュボールがカレーソースに絡む、食欲をそそる一品で、5個ほど入ってHKD10~20と、財布にやさしい価格も魅力のひとつだ。
食べるならココ!
通達食品
至るところで売られているフィッシュボールだが、ちょっと腰を落ち着かせて食べたい時におすすめなのが、油麻地(ヤウマテイ)にあるこの店。メニューにはほかにも、焼売や焼きそばなど、安ウマなローカルフードが並ぶ。
G/F, 48 Pitt St., Yau Ma Tei
月~日 7:00~21:00
つるつる&もちもちがクセになる!
腸粉
米粉で作った蒸し料理、腸粉(チョンファン)は、見た目が豚の腸に似ていることからその名がついた。エビやチャーシューを巻いたものは点心の定番メニューだが、なにも巻かないシンプルな腸粉も、街角で食べられる軽食として親しまれている。つるつるでもちもちとした食感の腸粉に、甘みのあるタレをかけていただく。
食べるならココ!
合益泰小食
腸粉が美味しいことでミシュランにも掲載されたことのある、深水埗屈指のB級グルメの名店。ゴマだれに加え、甘辛い味噌ソースをお好みの量だけかけて味わう。朝ごはんとして食べる人も多く、なんと朝6時半から営業している。
G/F., 121 Kweilin St., Sham Shui Po
月~日 6:30~20:00
オシドリのように絶妙なコンビネーション⁉
ユンヨン
紅茶もコーヒーも一緒に楽しみたい!という欲張りな願いを叶えてくれるのが、鴛鴦(ユンヨン)だ。鴛鴦は日本語読みでオシドリだが、意味は広東語でも同じ。つがいで行動するオシドリように、2つの飲み物が1つに調和していることからこの名が付けられた。1950年代から茶餐廳で提供されるようになり、2017年には香港の無形文化遺産に登録。今ではリプトンからインスタント版が販売されるほどの国民的ドリンクとなっている。
食べるならココ!
美都餐室
ユンヨンを飲む上で重視すべきは、店の雰囲気。美都餐室はレトロな内装が魅力で、観光客のファンも多い。2階席の窓際を陣取って、鴛鴦を片手に行き交う人を眺める──。そんな至福の時を過ごしてみてはいかが。
G/F., 63 Temple St., Yau Ma Tei
月~日11:00~20:00 (不定休)
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