中国法律事情「中国の学生アルバイトと定年その2」高橋孝治

2018/03/05

1・学生バイトは禁止?(続き)
前回、中国では学生と雇用契約を結ぶことはできないと言いました。これは「学生は勉学に集中するべき」という意味なのでしょうか。そういう側面もあるでしょうが、この制度は単位制度の流れを汲むものと思われます。

・単位の戸籍管理機能
単位制度は、「労働を配給するもの」と前回説明しましたが、それ以外にも重要な機能があったのです。それは「国民管理」です。単位制度によって中国国内の失業者をなくし、全ての国民を何らかの企業に属させ、企業側に国民管理の役を担わせたのです(実際には単位制度下でも労働の配給にあぶれた失業者がいたと言われる)。

つまり、非常に広い中国では政府が国民管理を行うことは困難だったため、各企業にどんな人がいるのか、家族構成、収入などのレポートを作らせ、それを政府に報告させることで戸籍管理を行ったのです。では戸籍管理の手段として単位制度を見たとき、学生の場合はどのように戸籍管理を行ったのでしょう。学生の場合は、学校が単位となったのです。その意味で中国語の「単位」を「企業」と訳す方を散見しますが、「所属先」と訳す方が適切と言えるでしょう。

さて、このような単位(企業や学校)が戸籍管理機関としての機能を担うということは、もし一人の人間が、複数の単位に所属したら二重計上になり、戸籍管理機関としての機能は破綻します。そのため一人の人間が一つの単位にしか所属できないようにするわけです(一人一単位の原則)。すなわち学生が企業にも所属することはブロックされ、学生バイトの禁上になるわけです。

・副業も禁止?
学校と企業という単位に二重加入はできないわけですが、企業と企業の場合はどうなのでしょうか。これも当然一人一単位の原則から否定されています。すなわち副業の禁止です。残念ながら中国には正面から副業を禁止した条文は存在しません。しかし学説上は副業禁止説が一貫して支持されていますし、中国の労働関係法規の条文をよく読めば、そもそもが「副業を前提としていない法律」となっていることが分かります。

次回は、本シリーズのタイトルにもある通り、中国での定年について解説します(続く)

高橋孝治

〈高橋孝治(たかはしこうじ)氏プロフィール〉
中国法研究家、北京和僑会「法律・労務・税務研究会」講師。中国法の研究を志し、都内社労士事務所を退職し渡中。中国政法大学博士課程修了・法学博士。中国法の研究をしつつ、執筆や講演も行っている。行政書士有資格者、特定社労士有資格者、法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)。著書に『ビジネスマンのための中国労働法』(労働調査会)。詳しくは「高橋孝治中国」でネットを検索!

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