工場の生産管理講座第3回「製造資源の活用̶生産スケジューラー」石水智尚
製造資源の活用̶生産スケジューラー
前回は、ERPシステムが工場の経営資源(人・設備や資材・お金など)を全社的に一貫性のあるデータとして管理し、効率的に運用する為のシステムであるという事についてお話しました。
ERPシステムは工場活動の結果として生じた多くの情報を、経営者が利用し易いように財務へ連結させるものなので、ERPシステムの核は財務機能であると言う事ができます。しかしながらERPシステムでは、財務機能へ連結しない未来の予定情報もいくつか扱っています。1つは内示や生産計画に基づく発注計画(MRP)。もう1つは受注や生産指示に基づく製造計画です。
発注計画は予定された製造に必要な資材を適時・適量調達するという意味では非常に重要で、生産管理の中核機能としてIT化され、進化しながら広く普及してきました。一方で、製造計画は工場が持つ製造資源(製造設備とワーカーの数や能力)を効率良く稼働させて最大限の生産性を得るという意味で、大変重要でありながらIT化の導入が遅れていると言えます。
生産管理の機能を持つERPシステムには、受注から製造計画を自動作成するものがありますが、実はあまり活用されていません。製造計画・製造実績と在庫やMRP情報が紐ついている為、一度作成された製造予定の情報の変更には、関連する情報との紐の付け直し作業が必要となります。度々の変更は多くの修正作業が発生するので、現場に大きな負担が掛かります。セットメーカーは別として、下請けメーカーでは色々な事情で製造計画は毎日のように変更されており、ERPシステムに付属する製造計画の自動作成機能の運用は難しいと言えます。
そこで、製造計画の自動作成(支援システム)は、ERPシステムのサブシステムとして別に運用する事が有効です。ERPシステムから受注と在庫の情報を受け取り、事前に設定した生産ラインの能力に従い、各工程の製造計画を自動で展開し、確定したものを生産指示としてERPへ取り込むようにすれば、柔軟な運用が可能になります。
中国ではお客様からの特急注文の他に、急な停電や設備の故障など、計画を狂わせる要因が多くあります。製造計画を1日に何度でも修正できるようにする事で、製造ラインの効率的な運用を図る事ができます。
【筆者プロフィール】
石水智尚(いしみず・ともひさ)
85年に香港へ来て以来、海外生活30年。販社・工場のシステム開発・プロマネ・生産管理のコンサルなどに携わる。98年から2年間、セブで開発センターの立ち上げにも従事。2007年より華南で生産管理のコンサルを開始して現在に至る。Asprova販売代理店、TPiCS販売代理店と共同での運用支援。
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