NAC 香港ビジネス通信⑮ 強制退職積立金の充当制度廃止と企業への助成制度②
-雇用主の解雇補償金負担は、どう変わる? 助成制度の仕組みと留意点-
従業員の解雇等の時に雇用主が支払う一時金(解雇補償金/長期服務金)についての制度改定が2025年5月1日(以下、転換日)に実施されました。これにより、従来の制度では可能だった「雇用主MPF拠出金分を解雇補償金/長期服務金への充当」が廃止となり、今後は雇用主が全額負担することになります。この負担増を受け、香港政府は、助成制度を設け一定の条件下で助成金を支給します。
勤続25年の従業員Aを転換日から5年後に解雇とした場合、それまで雇用主が負担してきたMPF拠出金額と解雇時に支払うべき解雇補償金の相殺がどのようになるかについて、例をあげて説明します。
(A)転換日での月給:HKD20,000(20年間同額)
(B)解雇日での月給:HKD25,000(5年間同額)
(C)雇用主MPF拠出金積立分
①2025年4月30日までの拠出金額:HKD20,000 x 5% x 12カ月 x 20年 = HKD240,000
②2025年5月1日から解雇日までの拠出金額:HKD25,000 x 5% x 12カ月 x 5年 = HKD75,000
1.解雇等の時点で雇用主が従業員へ支払う金額(*1)+(*2) HKD341,667(*注1)
2.MPFで相殺できる金額 ▲ HKD266,667(*注2)
MPFと相殺後の金額 HKD75,000
MPFと相殺後、政府の助成金補助額を算出します。このケースでは、MPFと相殺後の金額は、HKD75,000、新制度開始後5年目にあたるので60%(HKD45,000)またはHKD25,000のいずれか低い方の金額を雇用主が負担することになり、雇用主が最終的に従業員へ支払う金額は、HKD25,000になります(*注3)。
3.雇用主が最終的に従業員へ支払う金額 HKD25,000
*注1: 受給可能な解雇補償金/長期服務金の最高限度額は、HKD390,000です。
*注2: *1の金額(転換日までの解雇補償金金額)までは、全雇用期間の雇用主負担分MPF積立運用残高から相殺することが可能です。
*注3: 申請することにより、政府の助成制度を利用して財政支援が受けられます。助成金の詳しい計算方法については、PPW No.929号をご参照ください。
記録の保管義務について
雇用主は、雇用条例に基づいて、以下の記録を保管する必要があります。
・各従業員の過去12カ月間の給与・雇用記録
・転換日前に雇用されていた従業員の転換日前12カ月間の給与記録
・退職や解雇後、半年間の記録の保管
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