目から鱗の中国法律事情「中国食品チェーン安全監督の強化 その1」
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Vol.100 中国の食品チェーン安全監督の強化 その1
最近は大幅に改善されましたが、以前は中国食品への信頼性はかなり低い状況にありました。しかし、改善されたといっても、中国では随時新た強い規制により安全性を高めるようにしています。
そんな中、中国共産党中央委員会と国務院は、2025年3月13日に「中共中央および国務院による食品安全のチェーン監督の一層強化に関する意見(中共中央弁公庁国務院弁公庁関于進一歩強化食品安全全鍵条監管的意見)」という意見を発布しました。この意見は、中国の食品を生産者から消費者の口に入るまで連続し、チェーン的な食品安全の強化を目的としています。この意見は、「政策」であり、「法律」ではありません。しかし、中国では「政策」にも「法的効果」を認めています。
そのため、この意見という政策でも中国の食品のチェーン安全は強化されることになります。このシリーズでは、この意見について見ていきましょう。
中共中央および国務院による食品安全のチェーン監督の一層強化に関する意見(全訳)
食品安全監督の責任を一層明確にし、健全な共同管理体制を確立するため、全チェーン監督を強化し、食品安全の最低限を断固として守り、人民群衆の健康と生命の安全を効果的に守るため、党中央と国務院の同意を経て、以下の意見を打ち出す。
一. 食品と農産物の共同監督の改善
(一)食品と農産物の品質と安全規制責任を厳格に実施する。生態環境部門は、農地の土壌重金属汚染の調査と改善の推進に責任を負うものとする。農業・農村部門は、食用農産物の作付け・育種から卸売・小売市場または生産・加工企業に入るまでの品質・安全監督責任につき責任を負い、市場監督部門は、食用農産物の卸売・小売市場または生産・加工企業に入るまでの品質・安全監督責任につき責任を負うものとする。県レベル以上の地方政府は、食用農産物の品質と安全に関する地方管理責任を真面目に実施し、管理監督能力の強化を行い、そのレベルの政府でできる食用農産物の品質と安全に関する監督の相互機能と規制の隙間の問題を解決するよう研究し、規制の抜け穴と死角の出現を避けるものとする。郷鎮政府は食用農産物の品質と安全監督責任を負うものとする。
(続く)
〈高橋 孝治(たかはし こうじ)氏プロフィール〉
立教大学アジア地域研究所特任研究員
北京にある中国政法大学博士課程修了(法学博士)、国会議員政策担当秘書有資格者、法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格者)。中国法研究の傍ら、講演活動などもしている。韓国・壇国大学校、東アジア人文融複合研究所、海外研究諮問委員や市民大学「御祓川大学」の教授でもある。著書に『ビジネスマンのための中国労働法』、『中国社会の法社会学』他多数。『時事速報(中華版)』(時事通信社)にて「高橋孝治の中国法教室」連載中。