あなたは大丈夫?香港防犯セキュリティ白書「Vol. 2 飛行機での窃盗防止」

2025/04/30

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最近、大ヒット中の香港映画『トワイライト・ウォリアーズ決戦! 九龍城砦』の影響で香港に日本から多くの旅行者が訪れる中、このコラム連載を通じて、観光客や在港邦人の皆様に最新の情報と実践的なアドバイスをお届けします。今回は旅のスタート地点で注意すべき「飛行機での窃盗」に焦点を当てます。特に観光客がターゲットになりやすい状況が広がっており、具体的な手口と対策を、2024年の最新データとともにご紹介します。

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急増するリスク
飛行機は快適な旅の始まりのはずですが、実は窃盗犯にとって絶好の機会を提供する場所でもあります。香港フリー・プレスの報道によると、24年の最初の10カ月間で、香港到着便での機内盗難が169件報告されました。これは23年の通年で92件だったのに比べ、既に約84%増加した計算です。特に東南アジアからの短距離便で約7割を占め、被害総額は約430万香港ドル(約7800万円)に上ります。被害者は「家に忘れたのか盗まれたのか」とすぐには判断できず、気づいた時には犯人が降機しているケースが多いのが特徴です。
窃盗犯は、乗客の心理を巧みに利用します。飛行機では、他の乗客と目を合わせない、お互いに興味を持たない傾向があります。この「見ない心理」が、窃盗犯に大胆な行動を許してしまうのです。例えば、通路側に座る犯人が荷物棚を堂々と物色しても、周囲は驚くほど気づかないことがあります。窓側に座ると通路側の荷物棚が見えにくく、監視が難しいのもリスクを高めます。

具体的な手口とその特徴
①睡眠中:携帯電話を手に持ったまま眠り、目覚めたらなくなっていたというケースが目立ちます。夜間便で特に多発しており、盗まれたのか落としたのか判断がつかず、対処が遅れることがあります。
②荷物棚:上部の荷物棚から財布や時計が抜き取られる事例が頻発。香港便では、到着後に気づくケースが数十件報告されており、バッグごと持ち去られることもあります。
③一時離席の隙:トイレに行くために席を立つと、座席や荷物棚に置いた荷物が狙われます。どちらに置いても隙ができるため、油断は禁物です。
④共犯者の連携:通路側と窓側に分かれた窃盗犯が連携し、周囲の目を避けて荷物を探る手口も確認されています。

実践的な予防策
①物の管理:パスポート、財布、携帯電話は常に身につけ、機内持ち込みバッグは膝の上や足元に置く。荷物に鍵をかけるか、ファスナーをしっかり閉めておく。足元に置く場合、短いストラップや紐で足首やベルトに結びつけるのも一案です。窓側に座る場合、通路側の荷物棚に注意しにくいので、バッグは足元に置くのが賢明です。
②睡眠時の注意:携帯電話や財布を手に持ったまま寝ない。ポケットやマネーベルトに入れ、身体に密着させておく。手に持って寝てなくなると、盗難か紛失かすぐにはわかりません。
③席選択の工夫:通路側を選べば荷物の監視がしやすく、離席時のリスクが減ります。窓側なら、バッグを足元に固定する。
④トイレに行く際の対策:トイレに行くときは、貴重品を全て身につけて移動する。座席にバッグを置く場合でも、ファスナーを閉め、隣の座席や通路から手が届きにくい位置に置く。荷物棚に置くなら、鍵をかけた上で、可能なら座席近くの棚を選び、戻った後にすぐ確認する。座席も荷物棚もどちらもリスクがあるので、離席時間を最小限にし、荷物を常に意識することが大切です。
⑤周囲への警戒:怪しい動きをする乗客がいたら遠慮なく観察し、必要なら客室乗務員に報告。他の乗客が無関心でも、自分が気づく姿勢が大切です。
⑥コピーの活用:パスポートやクレジットカードのコピーを別途保管。盗難に遭っても身元確認や再発行がスムーズに進みます。

被害に遭った場合の対処
機内で盗難に気づいたら、すぐに客室乗務員に報告し、到着後に空港警察に届け出てください。香港国際空港には警察署があり、英語でも対応可能です(緊急連絡先:999)。
飛行機での窃盗は、2023年の92件から2024年10か月で169件と急増しています。機内の他の乗客も驚くほど周りに無関心のため、自分で荷物を守ることが大切です。窃盗に遭った場合、迅速なID提示も防犯につながるため、次回、第3回では「IDの重要性」をテーマに、パスポートの役割や管理方法をお伝えします。


 

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岩見龍馬氏岩見 龍馬
東洋警備取締役。銅鑼湾SOGOの警備会社として、父の武夫氏が創業し、二代目の龍馬氏が引き継ぎ、現在40周年を迎える。近年ますます多様化する香港の犯罪・防犯について、幅広い知識を配信中。

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