あなたは大丈夫?香港防犯セキュリティ白書「 Vol.1 香港の治安概況」

2025/04/02

こんにちは、東洋警備代表取締役の岩見です。香港で警備会社を経営し、この街の安全と防犯に日々取り組んでいる私から、在留邦人や旅行者の皆様に最新の情報と実践的なアドバイスをお届けします。今回は、香港の現在の治安状況を概観し、日本人が抱きがちな誤解を解きつつ、基本的な防犯意識を高めるポイントをお伝えします。

香港の治安:データで見る現実
香港は「危険な場所」というイメージを持たれがちですが、実際は世界でも安全な都市の一つです。2024年の香港警察の統計によると、犯罪件数は約9万件で、前年に比べて3割ほど増えています。しかし、この増加は主に詐欺やオンライン犯罪といった、暴力や窃盗とは異なる分野が大きく影響しています。暴力犯罪は全体の約1割、つまり約5千件で、殺人事件に至っては年間30件以下と極めて少ないです。人口750万人を考えれば、これはかなり低い数字。観光客が巻き込まれるような事件はさらに限定的です。
ただ、スリや置き引きといった軽犯罪は確かにあります。24年上半期だけで約2万件が報告され、特に観光地やMTR(地下鉄駅)で目立ちます。しかし、詐欺犯罪を除いた場合の検挙率は約4割と高く、警察の対応力は頼りになります。こうしたデータを見ると、香港が危険という誤解は少し大げさだと感じます。

日本人の誤解と香港の人情
日本では「香港は治安が悪い」「夜は危ない」と考えられがちです。19年のデモや最近の報道が影響しているのかもしれません。しかし、私がこの街で暮らす中で実感するのは、香港の秩序と人々の温かさ。例えば、スリが多いエリアでも、カバンのファスナーが開いていると、見知らぬ人が「気をつけて」と声をかけてくれることがあります。こんな人情が香港の魅力です。
警備の現場でも、観光客が被害に遭うのは「油断」が原因であることがほとんどです。日本と同じ感覚で荷物を放置したり、貴重品をポケットに無造作に入れたりすると、スリの標的になりやすいのは香港に限った話ではなく、どの大都市でも同じで、少し気をつければ安全に過ごせます。

観光客が知っておくべきポイント
24年のデータでは、尖沙咀(チムサーチョイ)や旺角(モンコック)で起きた盗難の約3割が「カバンからの抜き取り」です。繁華街の多い香港ですので、特に飲酒時は油断しないよう注意も必要です。以下に気をつけるポイントを挙げます。
・カバンの管理:ファスナーを閉め、体の前に抱える。開いたまま歩いていると、親切な人が教えてくれることもありますが、自分で守るのが基本です。
・貴重品の分散:財布や携帯電話、パスポートを一カ所にまとめず、ポケットやマネーベルトに分けて持つことで被害を最小限に抑えられます。
・混雑時の警戒:MTRやバスでは、周囲に目を配り、荷物をしっかり握る。観光客が多い駅はスリが紛れ込みやすい場所です。

 

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安全な香港を楽しむために
24年の犯罪統計では、詐欺が全体の約4割で、主にオンライン詐欺ですが、街中で「格安ツアー」や「特別オファー」を持ちかける詐欺にも注意が必要です。私の経験では、こうした話に飛びつく前にスマホで公式な窓口を確認すればトラブルは避けられます。
一方、暴力犯罪の少なさは香港の強み。夜遅くに繁華街を歩いても、危険を感じることはほとんどありません。ルールを守り、互いを尊重する人々が暮らすこの街では、スリや軽犯罪に気をつければ、日本人でも安心して過ごせます。

香港は、日本人が思うほど怖い場所ではありません。24年の犯罪数は増えたものの、観光客が巻き込まれるような事件は少なく、警察の対応力や街の人情がそれを支えています。次回、第2回では「飛行機での窃盗防止」をテーマに、旅行のスタートから安全を守る方法をお伝えします。


 

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岩見龍馬氏岩見 龍馬
東洋警備取締役。銅鑼湾SOGOの警備会社として、父の武夫氏が創業し、二代目の龍馬氏が引き継ぎ、現在40周年を迎える。近年ますます多様化する香港の犯罪・防犯について、幅広い知識を配信中。

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