キャサリン弁護士の香港法律コラム「詐欺グループを撃退せよ!香港での法的手続きと対策」

2025/04/02

現在、香港では日系企業、外資系企業、地元企業を問わず、詐欺が大きな問題となっています。詐欺師は、最新技術を駆使した巧妙な手口で被害者を欺き、多額の金銭を振り込ませることが多く、今回は、詐欺の一般的な手口、法的手続きおよび防止策を解説します。

一般的な詐欺の手口
詐欺師は、以下のような手口で個人や組織を騙し、金銭を振り込ませています。

「ボス詐欺」
人工知能や電子通信を用いて、グループや本社のCEOなど上級幹部になりすまします。子会社の従業員(例えば香港オフィスのスタッフ)に、想定される取引の為の資金を緊急で送金するよう指示します。多くの場合、詐欺師はCEOの声や内部情報を含む関係企業の詳細情報を持っており、内部リーク、サイバー攻撃、AIによる企業構造やコミュニケーション・チェーンの弱点の分析を通じて入手している可能性が高いです。そういった高度なレベルと緻密さが、彼らのスキームの信憑性を高めています。

「偽の専門家」
商取引を始めると、偽の弁護士や偽の会計士など、通常は英語名を名乗る偽者を紹介してきます。その後、この「専門家」が被害者に接触し、信頼を得ようとします。詐欺師は、正規のアドレスによく似た電子メール・アドレスなどを使用しますが、その違いが軽微である為、見破るのは困難です。

「フィッシング」
詐欺師は、金融機関、物流会社、その他の一見すると無害なサービス・プロバイダーなど、信頼できる機関から発信されたように見せかけた電子メールなどを送り、疑いが持たれないようにします。これらの通信は、被害者に口座情報の確認や支払いを要求し、多くの場合、不正な口座に資金を振り向けます。

「請求書詐欺」
この手口は、詐欺師が正規の請求書を横取りし、支払明細を改ざんした後、資金を自分の口座に流用します。また、信頼できるベンダーやサプライヤーになりすまし、被害者に新しい銀行口座への支払いを指示することもあります。

「電子メールのハッキング」
詐欺師が、電子メールや他のメッセージング・アカウントをハッキングした後、継続的なコミュニケーションを監視しながら不正な請求書を送るタイミングを待ちます。これらの請求書は、しばしば中東地域などの口座に支払いを誘導し、資金の追跡を困難にしています。

「重層的な送金」
詐欺師が不正に入手した資金の追跡を複雑にする為、複数の口座を用いて、多くの場合1~2日以内に素早く送金します。「マネーロンダリング(資金洗浄)」とも呼ばれるこの手口は、被害者の損失回復を非常に困難にします。

 

香港における刑事訴追
詐欺は、香港の窃盗条例(第210章)に基づく犯罪行為です。詐欺が疑われる場合は、直ちに香港警察(HKPF)に通報する必要があります。

通報の手順
警察署訪問またはHKPFの「e-Report Centre」によるオンライン報告が可能です。この際に弁護士の同行をお勧めします。

早期の対応
警察は銀行口座の一部を迅速に凍結できる場合がありますが、リソースの制約があります。被害者は早期段階で弁護士へ依頼し、裁判所に「緊急差止命令」を求めることで積極的な法的措置を取ることが可能です。

 

民事訴訟による資金回収
民事訴訟は、詐欺被害者が資金を回収するために重要です。

訴訟手続き
訴訟は高等裁判所または地区裁判所で開かれます。差止命令の申請により、詐欺師の口座凍結を図ります。

緊急審理
裁判官が即日判決を下す場合もあり、資金回収を迅速化できます。

 

法的支援が重要な理由
弁護士は差止命令を短時間で準備し、資金の流出を迅速に防ぐことが可能です。また、詐欺師は国際取引を行う場合が多い為、弁護士による海外の法務チームとの連携が必要になります。これにより、資産追跡の専門知識が豊富な弁護士らが、隠された資産を検出し、複数の法域での回収を支援します。また、戦略的交渉により、法律チームによる和解交渉などで回復が最大化できる場合もあります。
詐欺は香港における重大な課題ですが、法的措置と迅速な対応で損失を軽減することが可能です。我々「KatherineChan Law Office」では、クライアントの資金回収を最大化するための法的支援を提供しています。詐欺が疑われる場合は、直ちにご相談ください。

免責事項:本記事は情報提供のみを目的としたものであり、法的アドバイスを提供するものではありません。ケースはそれぞれ異なりますので、個別の法的指針を得るためには、資格を有する弁護士に相談されることをお勧めします。この記事により、弁護士と依頼人の関係が成立するわけではありません。

Ms. Katherine Chan profileキャサリン・チャン
香港での企業商事訴訟ならびに非訴訟業務の両方面からクライアントへ助言ができる稀有な存在。両業務の全体像を把握した包括的なアドバイスが可能。また、契約書の作成、投資、会社売買、取引交渉、コンプライアンス、労務、会社秘書業務、訴訟および紛争解決、さらには日本のクライアント向けに遺産相続や婚姻問題に関する幅広いサービスをも手掛ける。

 

Katherine Chan Law Office
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