目から鱗の中国法律事情「日本と中国の著作権の対象 その4」
中国の法律を解り易く解説。
法律を知れば見えて来るこの国のコト。
Vol.98 日本と中国の著作権の対象 その4
前回は、中国の著作権法第10条に規定されている、著作権法が保護する具体的権利についてその前半部分を見ました。今回は、その続きです。
(十三)撮影製作権 視聴覚著作物の撮影製作方法により、著作物を媒体上に固定させる権利
(十四)翻案権 著作物を改変し、独創性を有する新たな著作物を作り出す権利
(十五)翻訳権 著作物をある言語から別の言語に変換する権利
(十六)編集権 著作物または著作物の一部を選択又は編成し、新たな著作物として編集する権利
(十七)著作権者が享有すべきその他の権利
前回紹介したものと合わせて、これら(十七)の権利のうち、(五)~(十七)の権利は著作権者が、その行使を他人に許諾し、かつ、取り決めなどによってその権利を許諾したときは報酬を得ることができるとされています(中国の著作権法第10条第2項)。逆に言うと、(一)~(四)の権利(公表権、氏名表示権、改変権、同一性保持権)は著作権者が他者に行使させることができない権利ということになります。この点は日本と同じです(日本の著作権法第18条~第20条、第59条)。
さて、前回と合わせて中国の著作権法で保護される権利の内容を見てきました。これは日本で認められている権利と比べるとどうなっているのでしょう。日本の著作権法では、先に説明した(一)~(四)の権利以外は以下のようになっています。複製権、上演権及び演奏権、上映権、公衆送信権等、口述権、展示権、頒布権、譲渡権、貸与権、翻訳権、翻案権等、二次的著作物の利用に関する原著作者の権利が認められています(日本の著作権法第21条~第28条)。
これらの権利は中国で認められている権利と同じものもあればその名称が異なる権利もあります。例えば、中国の「情報ネットワーク伝達権」は日本では「公衆送信権等」と呼ばれています。
これに対して、中国の著作権法では保護対象となっていないものの、日本では保護されるものに「口述権」があります。
(続く)
〈高橋 孝治(たかはし こうじ)氏プロフィール〉
立教大学アジア地域研究所特任研究員
北京にある中国政法大学博士課程修了(法学博士)、国会議員政策担当秘書有資格者、法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格者)。中国法研究の傍ら、講演活動などもしている。韓国・壇国大学校、東アジア人文融複合研究所、海外研究諮問委員や市民大学「御祓川大学」の教授でもある。著書に『ビジネスマンのための中国労働法』、『中国社会の法社会学』他多数。『時事速報(中華版)』(時事通信社)にて「高橋孝治の中国法教室」連載中。