目から鱗の中国法律事情「日本と中国の著作権の対象 その3」
中国の法律を解り易く解説。
法律を知れば見えて来るこの国のコト。
Vol.98 日本と中国の著作権の対象 その3
日本と中国の著作物(続き)
前回見たように、中国の著作権法では、演劇、演芸、舞踊、曲芸なども著作権保護の対象となります。しかし、日本ではこれらには著作権は生じないものの、実演も日本国内で行われるなどの要件を満たす限り、著作物ではないものの著作権法により保護されるとしています。
このように、結果として演劇などの実演も日本国内で行われる場合には著作権法の保護対象となりますが、そもそも著作物に該当するのか、著作物ではないものの保護の対象となるのかについて差異があります。
中国の著作権内の具体的権利
中国の著作権法第10条には、著作権法が保護する具体的権利について規定されています。それによれば、その具体的権利は以下の通りです。
(一)公表権:著作物を公表するか否かを決定する権利
(二)氏名表示権:著作者の身分を表明し、著作物上に氏名を表示する権利
(三)改変権:著作物を改変する、または他人に授権して著作物を改変させる権利
(四)同一性保持権:著作物が歪曲、改纂されないよう保護する権利
(五)複製権:印刷・コピー・拓本・録音・録画・ダビング・デュープ、デジタル化などの方法によって著作物を一部又は複数部製作する権利
(六)発行権:販売または贈与の方法で公衆に著作物の原本又は複製品を提供する権利
(七)貸与権:有償で他人が視聴覚著作物及びコンピュータソフトウェアの原本または複製物を一時的に使用することを許諾する権利。ただし、コンピュータソフトウェア自体が貸与の主な対象ではないものを除く。
(八)展示権:美術著作物、撮影著作物の原本または複製品を公開陳列する権利
(九)実演権:著作物を公開実演し、併せて各種手段を用いて著作物の実演を公開放送する権利
十)上映権:上映機材、スライド映写機等の技術設備を利用して、美術、撮影、視聴覚著作物等を公開し再現する権利
(十一)放送権:有線方式又は無線方式によって著作物を公開伝達または中継し、および拡声器又はその他の信号・音声・画像を伝送する類似工具を通して公衆に著作物を伝達・放送する権利。ただし、(十二)情報ネットワーク伝達権の権利を除く。
(十二)情報ネットワーク伝達権:有線又は無線方式により公衆に提供し、公衆が選定した時間、場所で著作物を入手できるようにする権利
(十三)撮影製作権:即ち視聴覚著作物の撮影製作方法により、著作物を媒体上に固定させる権利
(十四)翻案権:即ち著作物を改変し、独創性を有する新たな著作物を作り出す権利
(十五)翻訳権:即ち著作物をある言語から別の言語に変換する権利
(十六)編集権:即ち著作物又は著作物の一部を選択又は編成し、新たな著作物として編集する権利
(十七)著作権者が享有すべきその他の権利:著作権者は、前項第五号乃至第十七号に規定する権利の行使を他人に許諾し、かつ、取り決め又は本法の関連規定により報酬を得ることができる。 著作権者は、本条第一項第五号乃至第十七号に規定する権利の全部又は一部を譲渡し、かつ、取り決め又は本法の関連規定により報酬を得ることができる。
(続く)
〈高橋 孝治(たかはし こうじ)氏プロフィール〉
立教大学アジア地域研究所特任研究員
北京にある中国政法大学博士課程修了(法学博士)、国会議員政策担当秘書有資格者、法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格者)。中国法研究の傍ら、講演活動などもしている。韓国・壇国大学校、東アジア人文融複合研究所、海外研究諮問委員や市民大学「御祓川大学」の教授でもある。著書に『ビジネスマンのための中国労働法』、『中国社会の法社会学』他多数。『時事速報(中華版)』(時事通信社)にて「高橋孝治の中国法教室」連載中。