応援したい!日本で夢追う香港人 Vol.1 蓮蓮 サロミさん
1万人とも3万人とも言われる日本在住香港人。我々が香港で外国人であるのと同様に、彼らも日本では外国人だ。それぞれが悩みや苦労を抱えながら、異国の地で切磋琢磨している。なぜ彼らは日本を選び、ビジネスを始めたのか。日本で奮闘する香港人の姿を追った。
Vol. 1 蓮蓮 サロミさん
ディープな街の片隅で香港に出会う
とある雨降る休日の午後、大阪の下町エリア、九条にある香港料理店には、ランチタイムをとっくに過ぎたというのにまだ多くの客の姿があった。中国語で盛り上がる若い団体、西洋人の中年ビジネスマン、広東語で店員と会話を楽しむ香港人らしき男性……。普段、客の半分は日本人、残り半分は主に中華圏の外国人だという。
店の名は「蓮蓮(レンレン)」。店内には香港映画のポスターや中華柄グッズが溢れ、どこを見渡しても香港を感じさせる。厨房に立つのは、香港人オーナーの李嘉兒(以下サロミ)さんだ。
なぜ大阪に?
サロミさんは大埔(タイポー)出身の36歳。数ある都市の中でなぜ日本、しかも大阪を選んだのだろうか。「元々日本には興味があって、6年前にワーキングホリデーで来日し、日本語学校に通って語学を学びました。大阪を選んだ理由は、東京は都会過ぎると感じたことと、大阪人は香港人と似ているから生活しやすいと聞いたからです。実際は……。やっぱり香港人のほうが本音でぶつかってきてくれると感じます(笑)」。
パティシエから家庭料理人へ
彼女は元パティシエで、香港ではデコレーションケーキを販売する店を経営していたという。「香港人は家族や恋人の誕生日に数千香港ドルもするような豪華なケーキを贈るのが一般的なんです。だから高価なデコレーションケーキの注文も多かった。でも日本にはそういった文化がないので、ケーキでやっていくのは難しいかなと思いました。そこで、香港の家庭料理を振る舞う店を開くことにしたんです」。
2年足らずで話題の店に
当初は元銀行員の妹と共にスタートさせた飲食店経営。知人が営むバーを間借りし昼間のみ営業していたが、ランチだけでは利益がほとんど出なかったという。そこで、自身の店を持つことを決意。2023年5月、ついにこの地に新店をオープンさせた。その後すぐに日本のグルメ雑誌やテレビ番組などで取り上げられるほどの話題店へと成長。香港のテレビ局の取材を受けたことで、香港人旅行客も訪れるようになった。
外国人ならではの困難も
外国籍の人が日本で住宅や店舗を借りるのは容易ではない。家賃を滞納されるのではないかなどと大家が心配し、貸すのを嫌がるからだ。サロミさんは縁があって現在の店を借りることができたが、ここに至るまでに苦労も多かったそうで、「店を決めるのは本当に大変でした。いい場所を見つけたと思っても、オーナーが私の名前を見て外国人だと分かると、貸したくないと言い出すんです。保証金を多く払うからと言ってもダメで……。困っていたところ、台湾人のオーナーがこの店を貸してくれることになりました」と話す。
在住香港人も認める本物の味
店の一番人気は「黯然銷魂飯(香港チャーシュー目玉焼き飯)」。広東省特産の柱侯醤(チューホージャン)を使うなど調味料にもこだわり、クセのない程よい味つけが特徴だ。分厚く切られたチャーシューはトロトロの目玉焼きとの相性も抜群で、柔らかな肉質がたまらない。メニューにはほかにも、冬の王道ローカルグルメ「煲仔飯(香港風釜飯)」や、香港式おでん「滷水雜錦(ルウスイの盛り合わせ)」など、高級広東料理とはまた違った、香港ならではの地元料理が並ぶ。
最低でも月に2回は来店するという大阪在住香港人の常連客に話を聞くと、「大阪にはいくつか香港料理店があるけど、ここはホンモノ。私は5年以上香港に帰っていないんですが、地元の味が恋しくなったらわざわざ電車に乗ってここまで食べに来ます」と語ってくれた。
今後の夢は?
最後に、サロミさんの今後の夢について聞いた。「日本の人に香港料理をもっと知ってもらいたいですね。日本人は香港料理と聞いてもあまりイメージが湧かず、どんなものか分からないという人が多くて……。台湾料理は有名になりましたが、香港料理はまだまだ知名度が低いと感じます」。
食べ歩きが趣味というだけあり、店のインスタグラムではサロミさんおすすめの関西グルメ情報も紹介している。近くへお越しの際は、大阪の香港家庭料理をぜひ味わってみてほしい。
蓮蓮
大阪市西区九条1-6-4
www.instagram.com/renren_japan