目から鱗の中国法律事情「日本と中国の著作権の対象 その2」

2025/01/01

中国の法律を解り易く解説。

法律を知れば見えて来るこの国のコト。

 

Vol.97 日本と中国の著作権の対象 その2

前回、中国の著作権法第3条を見ました。今回も、前回の復習で中国著作権法第3条を見てから、著作物に関する日本との差異を見てみましょう。

日本と中国の著作物(続き)

中国の著作権法第3条
本法にいう著作物とは、文学、美術及び科学分野において、独創性を有し、かつ、一定の形式で表現可能な知的成果をいい、次の各号に掲げる著作物が含まれる。
(一)文字による著作物
(二)口述による著作物
(三)音楽、演劇、演芸、舞踊、曲芸芸術による著作物
(四)美術、建築による著作物
(五)撮影による著作物
(六)視聴覚著作物
(七)工事・建築設計図、製品設計図、地図、見取り図等の図形による著作物及び模型著作物
(八)コンピュータソフトウェア
(九)著作物の特徴に合ったその他の知的成果

これに対し、日本の著作権法第2条第1号は以下のように規定しています。

著作物
思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

これを見ての通り、中国はその著作物の定義について、文字、口述、音楽、演劇、建築など具体的な形式をあげています。これに対し日本はあくまで具体的な形式をあげずに著作物を定義づけるという方法を採っています。
また、ここで注目したいのは、中国は演劇、演芸、舞踊、曲芸などを著作物に含むとしているのに対し、日本は演劇などは著作物の例には入っていないという点です。日本の場合は、著作権法第2条第3号および第7条に以下のような条文もあります。

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著作権法第2条第3号
実演 著作物を、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずること(これらに類する行為で、著作物を演じ ないが芸能的な性質を有するものを含む。)をいう。
第7条
実演は、次の各号のいずれかに該当するものに限り、この法律による保護を受ける。
一 国内において行われる実演
二 次条第一号又は第二号に掲げるレコードに固定された実演
(三以下 略)

(続く)


高橋孝治〈高橋 孝治(たかはし こうじ)氏プロフィール〉
立教大学 アジア地域研究所 特任研究員
北京にある中国政法大学博士課程修了(法学博士)、国会議員政策担当秘書有資格者、法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格者)。中国法研究の傍ら講演活動などもしている。韓国・檀国大学校日本研究所 海外研究諮問委員や非認可の市民大学「御祓川大学」の教授でもある。著書に『ビジネスマンのための中国労働法』、『中国社会の法社会学』他多数。FM西東京 84.2MHz日曜20時~の「Future×Link Radio Access」で毎月1、2週目にラジオパーソナリティもしている。Twitterは@koji_xiaozhi

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