目から鱗の中国法律事情「日本と中国の著作権の対象 その1」
中国の法律を解り易く解説。
法律を知れば見えて来るこの国のコト。
Vol.96 日本と中国の著作権の対象 その1
著作権とは、著作物(思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するもの)ならびに実演、レコード、放送および有線放送に関する著作者などの権利のことを言います。一般的には、ある人が描いた絵であったり文章などを勝手にコピーなどしてはいけない権利と理解されていると思います。
ところで、著作権に関しては、A国ではここまでの権利が保障されるが、B国ではそこまでの権利は保障されていないということになったら問題が生じます。著作物が実際にもネット上でも簡単に国境を越えることができる現在においては、各国の著作権に関する規定がなるべく統一されていることが望ましいということになります。この各国の著作権の規定を統一するために、ベルヌ条約(文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約)や万国著作権条約などが存在しています。これらの条約に加盟すると、加盟国の著作権法などを条約が示している統一ルールに合わせなければならないということになっています。しかし、それでも各国の著作権法は、完全な統一がなされているわけではありません。今回からは、日本と中国の著作権法の違いについて見ていきましょう。
中国の著作物
著作権法が、その保護対象とする「著作物」について見てみましょう。中国の著作権法第3条は以下のように規定しています。
本法にいう著作物とは、文学、美術及び科学分野において、独創性を有し、かつ、一定の形式で表現可能な知的成果をいい、次の各号に掲げる著作物が含まれる。
(一) 文字による著作物
(二) 口述による著作物
(三) 音楽、演劇、演芸、舞踊、曲芸芸術による著作物
(四) 美術、建築による著作物
(五) 撮影による著作物
(六) 視聴覚著作物
(七) 工事・建築設計図、製品設計図、地図、見取り図等の図形による著作物及び模型著作物
(八) コンピュータソフトウェア
(九) 著作物の特徴に合ったその他の知的成果
〈高橋 孝治(たかはし こうじ)氏プロフィール〉
立教大学 アジア地域研究所 特任研究員
北京にある中国政法大学博士課程修了(法学博士)、国会議員政策担当秘書有資格者、法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格者)。中国法研究の傍ら講演活動などもしている。韓国・檀国大学校日本研究所 海外研究諮問委員や非認可の市民大学「御祓川大学」の教授でもある。著書に『ビジネスマンのための中国労働法』、『中国社会の法社会学』他多数。FM西東京 84.2MHz日曜20時~の「Future×Link Radio Access」で毎月1、2週目にラジオパーソナリティもしている。Twitterは@koji_xiaozhi