NAC 香港ビジネス通信⑨ 香港における確定申告 – 法人利得(所得)税の申告と計算③

2024/11/13

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前回触れてきた基本的な法人利得税(Profits Tax)の計算をさらに理解するために係わってくる税務上の益金算入及び不算入項目、並びに損金算入項目の一部に引続き、残りの損金算入及び不算入項目については下記の通りです(なお、利得税には、法人以外の個人事業主、パートナーシップ及びその他団体の事業税も含まれていますが、ここでは法人利得税に基本絞って解説します)。

3. 損金算入(Deductible Expense)項目(前回の3. (5)からの続き)
(6)香港で課税所得を創出するために使用される借入金から発生する支払利息は、通常損金算入可能ですが、香港外源泉(オフショア)取引や資本性(キャピタルネイチャー)取引(香港内外への子会社投資や長期保有目的の投資不動産など)に係るものについては、原則損金算入が否認されます。香港内外からの非金融機関からの借入金から発生する支払利息は、オフショア取引やキャピタルネイチャー取引に関連するものではなく、かつ貸付側の受取利息が香港にて課税対象となっている限り、損金算入可能です。従って、日本(またはその他海外)の親会社や海外の関連会社からの借入金に対する支払利息は、一般的に損金不算入となります。また、香港内外の金融機関からの借入金から発生する支払利息については、大きく次の通り区分できます。

-対象となる借入金の元本及び金利の全部もしくは一部を保証するため、親会社を含む関連当事者またはその代理人の預金を担保として差し入れている場合、その支払利息は全額損金不算入となります。なお、金融機関側の受取利息が香港にて課税対象となっている場合は損金算入可能とも考えられますが、日本の親会社の預金やその他資産の担保を基に日本の銀行から借り入れを受けた場合、香港にてその受取利息が課税所得として処理されているとは考えにくく、損金不算入となるのが一般的です。

-対象となる借入金の元本及び金利の全部もしくは一部を保証するため、親会社を含む関連当事者またはその代理人の預金やその他資産を担保として差し入れていない場合、当該借入金が全額、香港における課税所得を稼得するために使用されていることを前提として、その支払利息は全額損金算入となると考えられます。

(7)香港における課税所得に対し、ある税管轄区域においても源泉があると見なされたが故に発生した外国税額は、原則として損金不算入となりますが、香港との租税協定が締結されている場合、外国税額控除方式を取ることが可能です。一方で、香港における課税所得を形成する収入自体に課される付加価値税(売上税、消費税や増値税など)については、経費性が認められ損金算入が可能です(なお、2023年1月1日以降、租税協定が無い場合でも、オフショア受動的所得非課税(FSIE、Foreign-sourced Income Exemption)制度における特定の状況の場合、片務的外国税額控除を享受できる可能性がありますが、ここでは割愛します)。

(8)有形固定資産の修繕や改良に関連する費用:機械設備や備品などの現状維持に係る修繕費(部品交換代他含む)については、発生時に損金算入され、対象となる有形固定資産の改良目的で発生した費用は、固定資産として加算・計上され、減価償却の対象となります。例えば、商業用建物の新規支出以後の改装で発生した、一定要件を満たす経費については、会計上は別段の減価償却方法を適用していたとしても、税務上は5年間にわたって均等に損金算入されることとなります。

(9)有形固定資産の減価償却費:香港内での製造過程で使用される機械設備やコンピューターハードウェア及びソフトウェアは、特定固定資産(Prescribed Fixed Assets)とみなされ、それらの取得費用は税務上、取得年度において全額損金算入が認められます。環境規定に該当する機械設備についても同様に取得年度中に全額損金算入が可能である一方、環境保全型の装置は、5年間にわたって均等に損金算入が認められています。減価償却資産は、大きく分けて産業用建物や商業用建物に対する支出、並びに機械設備や備品として大きく区分規定されており、初年度特別償却及び年次償却が次の通り認められています(表4参照)。

表4

4. 損金不算入(Non-deductible Expenses)項目
最後に、課税所得を稼得するために発生した経費として、税務上認められない損金不算入項目には、表5のような項目があります。その中で、為替差損の一般的な取扱いについて、例えば売掛金や買掛金の決済時や未払費用の決済時に発生する、日常の事業活動に関連する営業性(レベニューネイチャー)の為替差損は損金算入可能、一方で、外貨建銀行預金の決算時における外貨換算時に発生する、事業活動に関連しないキャピタルネイチャーの為替差損は、損金不算入として取扱われるとされていますが、これに応対して為替差益についても、レベニューネイチャーの項目は益金算入され、他方、キャピタルネイチャーの項目は益金不算入として取扱われることとなります。さらに、事務所などのリース契約の途中解約や満了後、リース物件をリース前の状態に戻すために発生した原状回復費用については、元々キャピタルネイチャーとして損金不算入として取扱われることが通例でしたが、一定要件を満たす場合、2024年4月の事業年度以降において、法人利得税計算時に損金算入として取扱われる予定です。

表5
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