NAC 香港ビジネス通信⑧ 香港の確定申告 – 法人利得(所得)税の申告と計算②
前回の申告から納税までの流れと税額の基本的な計算方法に引続き、予定納税額の免除あるいは減免に関連する手続、また、基本的な法人利得税(Profits Tax)の計算をさらに理解するために係わってくる、税務上の益金算入及び不算入項目、並びに損金算入及び不算入項目については下記の通りです(なお、利得税には、法人以外の個人事業主、パートナーシップ及びその他団体の事業税も含まれていますが、ここでは法人利得税に絞って解説します)。
1. ホールド・オーバー(Holding Over of Provisional Tax)
前回の通り、予定納税とは、翌年度の課税所得が当年度の確定税額の基となった課税所得と同額と仮定し納税するものですが、ある一定の条件の下、香港税務局(IRD, Inland Revenue Department)に申請することで、その支払いを免除あるいは減額することが可能です。申請期限としては、①予定納税期限の28日前まで、もしくは②確定税額通知書の発行日から14日以内のいずれかで遅い方の日となります。なお、条件としては以下となっています。
①当年度の見積課税所得が、前年度の90%未満の見込みである時(8カ月間以上を網羅した署名済み月次決算書を添付する必要あり)
②前期までの繰越損失が考慮されていない、もしくは誤っている時③納税者が事業を廃止している、もしくはする予定であり、前年度の課税所得よりも少ないと見込まれる時
④パーソナル・アセスメント選択しており、その結果税額が少なくなる見込みの時
⑤前年度の税額査定について、IRDに異議を申し立てている時
2. 課税される所得の概念と益金不算入(Non-Taxable Income)項目
課税される所得、つまり税務上の益金としてみなされる要件は、「営利目的で香港を源泉とする取引、専門サービスもしくは事業活動から稼得された所得」とされており、香港内の法人に限定されず、外国法人も含まれます。課税所得の計算は、会計上の利益がまず基本となりますが、これに対して税務上の申告調整を行う際、課税されない所得である益金不算入項目は、次のようなものがあります(表3参照)。
3. 損金算入(Deductible Expense)項目
原則として、香港で課税所得を稼得するために発生した経費については、常識の範囲を逸脱していない限り損金算入が認められます。日本やアメリカなどの他国と比較すると非常にシンプルですが、下記の通り、代表的な項目の注意点について挙げてみます。
(1)接待交際費は、日本やアメリカのような損金算入限度額はありませんが、プライベートな支出などの無関係な支出を除いた、課税所得を創出するために要したものに限られます。多額の接待交際費による課税所得の調整が明らかと推測されるなど、会議費や旅費交通費と合わせて、香港税務局よりよく指摘を受ける項目です。
(2)貸倒(債権の減損)引当金への繰入額は、既に支払い期限が到来しており、かつある一定期間回収活動を行ったにもかかわらず、取締役により回収できないと判断できる不良債権を認識し、IRDによって認められた場合、税務上損金算入可能ですが、会計上貸倒(減損)引当金を計上したとしても、税務上否認もしくは事前に加算されるのが通常で、そもそも貸倒が確定している際には損金算入が可能で、貸倒損失として認識するのが一般的と考えられます。一方で、偶発債務を含むその他債務に係る引当金については、既に発生している特定債務に対するもので、かつ債務の原因となっている事実や事象が発生しているだけではなく、実際支払い金額がほぼ確定している場合のみ損金算入できます。
(3)強制積立年金(MPF, Mandatory Provident Fund)は、原則として香港におけるすべての雇用主に対し、従業員のために加入が義務付けられており、従業員月給の最低5%相当額を雇用主及び従業員各々が拠出し積み立てていく必要があるものですが、雇用主からの任意積立がある場合は、従業員給与総額の15%までを損金算入できます。
(4)香港政府が認可している慈善団体への寄付金は、100香港ドル以上でかつ寄付金控除前の課税所得の35%を上限として損金算入できます。
(5)一般的に、商標権や特許権などの創設・研究開発に伴う費用や登録料は、これらの権利が香港にて課税対象所得を創出するために必要なものである場合、損金算入できます。また、そのような無形固定資産の購入原価についても、関連当事者から譲渡されたものを除き、かつ諸要件を満たしておれば、取得年度もしくは使用期間に応じて損金算入が可能です(なお、2023年1月1日以降及び同年4月1日以降、税制適格となる知的財産権から稼得される所得の特定の部分に関連し、オフショア受動的所得非課税(FSIE、Foreign-sourced Income Exemption)制度並びにパテントボックス制度における優遇措置に係るネクサスアプローチなどの勘案もまた必要となる可能性がありますが、ここでは割愛します)。
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