Key Woman「WATASHI CREATE Managing Director / Principal 鈴木 妃佐子さん」

2024/10/01

スクリーンショット (2331)経営者として、母として、女性として
強くしなやかに美しく生きる

大きな窓からは気持ちの良い太陽光が射し込み、日本の折り紙や桜の装飾、観葉植物で埋め尽くされた、まるでカフェのような内装。ここはひとりの日本人女性によって2016年に創立された日本語学校「WATASHI CREATE」の教室だ。今回こちらで編集部を迎えてくれた人こそ、同学校の校長・鈴木 妃佐子さん。屈託のない笑顔の彼女だが、聞くと人生のピンチとも言えることが起業の後押しとなったそう。

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日本のどちらご出身ですか? 香港へ移住したいきさつも教えてください。
岡山県に生まれ、22歳まで同地で育ちました。大学では英文科専攻だったので、いつかは海外へ出てみたいという憧れをずっと抱いていましたね。「海外なんてありえない」という古風な両親を、「日本から近い香港に一カ月だけ」という名目で説得し、まずは英語習得のために来港しました。しかし、その時に香港を経由地にしてアメリカに渡る計画を内うちに秘めていたことは当時の両親には内緒でした。

アメリカ渡航の夢はかなったのですか?
はい(笑)、香港に来て数カ月後にアメリカ行きを決意し、まずは西海岸を3週間一人で旅行しました。しかし不思議なことに、憧れだったアメリカにいるのに帰りたいと思うのは香港だったのです。香港の生活や人脈に引き戻されるように同地に帰り、ここで生きていこうと腹を決め、本格的にアパレル業へ就職をしました。

お子さんが3人いらっしゃると伺いました。
そうなんです、全員女の子ですよ。26歳で結婚し、翌年に長女を出産しました。当時のアパレルは「世界の工場・中国」ブームの真っ只中で、メイドインチャイナの商品を香港を経由して日本へ輸出する流れでした。そのため中国や日本との往来が多く、生まれたばかりの乳児を抱えながらの両立は本当に厳しかった。ほどなくして退職し、育児をしながらも続けられる日本語教師を始めることにしました。この時はいくつかの語学学校に講師として登録し、少しずつ生徒さんが増えていきました。

育児と仕事の両立、充実してそうにお見受けしますが。
実際はこの時が自分の中で一番悶々としていたと思います。母親として、社会人として、妻として、いろいろな役割がありますがどれにも全力投球できない中途半端な感覚があり、毎日「自分が本当にやりたいことは?」と自問していましたね。私生活では友人が多かったので飲みに行くことも多々あり、人脈を広げるいい機会となりました。

起業するターニングポイントについて教えてください。
実は私はこれがあってよかったと思っているのですが「離婚」ですね。しかし当時は寝耳に水です。事業をしていた主人がある時、心の不調を訴え離婚を提示してきました。自営業のストレスなどたくさんあったと思いますが、もう気持ちは決まっているようでしたので受け入れ、3人の子のシングルマザーになりました。内心はとても不安で、すぐ岡山の実家に帰り日本での家探しをしたのですが、どうもしっくりこないのです。まだ香港でやり残したことがある気がして、結局香港に戻ることに。振り返ると、私、何度も香港に戻ってきていますね(笑)。

「WATASHI CREATE」はどのようにして誕生したのですか?
人生初の起業だったので、右も左もわからない状態でしたが、もう後には戻れません。和僑会の二代目会長・荻野正明氏に起業のビジョンを伝え、出資いただき2015年に会社登記、16年に中環校のオープンとなりました。「この学校を成功させて、いつか荻野さんへ恩返しがしたい」との気持ちで創立から現在まで必死に駆け足で進んできた感じです。現在は尖沙咀と銅鑼湾にも校舎を構え36名の優秀な講師陣にも恵まれています。

日本語学校の多い香港ですが、他校にはない強みは?
前述した通り、学校は講師が命です。ありがたいことに現在でも日本から当校に就職したいという現役講師の方のお問合せも増え、将来は50名体制を目標としています。
また、当校に来たら心が和む「和の空間造り」も大事にしています。日本の季節のイベントも頻繁に行い、生徒さんにリアルな日本文化を体験してもらいたいですね。
さらに、レッスンは上質でなければならないと考えています。ただテキストに沿って進めるのではなく、生徒さんの好きなことを引き出し、伸ばすことに着目。語学は楽しくないと続きませんよね。授業の延長線での雑談が、生徒さんとの距離感を縮め、新たな発見につながります。しかしただ、楽しいだけでも伸びないので、時には厳しく課題を出すなどして工夫しています。はじめは「あいうえお」からスタートした生徒さんが、日本語でスラスラとコミュニケーションが取れるようになるのを見ると、自分のことのように嬉しくなりますね。

YouTubeチャンネルがとても面白く、コンテンツが充実してますね。
ありがとうございます。マーケティングのメンバーとアイデアを出しながら毎週アップしていますのでぜひチャンネル登録をお願いします。香港の方は日本旅行が大好きなので、「温泉旅館での会話」や「レストランでのオーダーの仕方」など、身近なトピックを挙げわかりやすく配信しています。また、当校オリジナル教材の制作やグッズなどもすべて手作りしていますよ。かたぐるしい学校の教科書のようではなく、今の日本を感じられる実用的な教材になるように試行錯誤しながら制作しています。

YouTube『Watashi Create』の撮影中

YouTube『Watashi Create』の撮影中

今後の目標をお聞かせください。
オンラインの発展で世界中どこでも語学を学べる時代です。私たちが発信する日本語教育コンテンツを世界中の人々に届け、広東語や普通語だけでなく、さまざまな言語で解説しながら日本をもっと知っていただきたいと思います。あと10年くらいは香港で頑張りますが、それ以降は世界を旅しながら仕事を続けるのもいいですよね。

鈴木 妃佐子さん
IMG_7603岡山県出身。大学卒業後、香港に短期留学へ。その後就職、結婚、出産を経て日本語教師の道に。40歳で経験した離婚を機に起業し、現在は「WATASHI CREATE」の校長としてエネルギッシュな毎日を送る。

WATASHI CREATE
日語學校和達知創作社
2016年に開校。中環、尖沙咀、銅鑼湾に教室を持つ日本語語学学校でマンツーマンレッスンのほか、グループやキッズレッスンなどを開催。丁寧かつ生徒に寄り添う授業内容が人気の理由だ。
URL:www.watashi.com.hk
IG:watashicreate

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