当たり前をやめた働きがい改革「Carbon Partners Asiatica」

2024/09/18

気候変動の緩和策に関わるコンサルティングを行う「Carbon Partners Asiatica(カーボンパートナーズ・アシアチカ)」。東南アジアやオセアニアを中心に、世界各国の一般企業のほか、緑の機構基金、アジア開発銀行といった公的機関に向け、国際ルールの解釈、国内での展開方法や産業・エネルギー分野を中心とした排出権算定方法論などについてのアドバイスを提供している。そんな同社の設立者である栩川(とちかわ)氏は、コロナ禍以前に出社型形態を廃止し、在宅勤務を導入したひとり。現在では香港内外のすべての従業員がフルリモートで働いている。一方、環境ビジネスとは別に、美容サロンの経営にも携わる氏は、長期休暇の取りにくさや時間外労働といった美容業界全体が抱える課題にも、積極的に取り組んでいる。

栩川 恭子氏 シドニー大学化学工学部卒業。三菱証券を経て、2005年、結婚を機に来港。2008年4月に「Carbon Partners Asiatica」を設立し、香港法人と タイ法人の代表取締役を務める。また2011年からは、ヘア、ネイル、アイラッシュの複合型サロン「Carte Blanche」を運営している。

栩川 恭子氏
シドニー大学化学工学部卒業。三菱証券を経て、2005年、結婚を機に来港。2008年4月に「Carbon Partners Asiatica」を設立し、香港法人とタイ法人の代表取締役を務める。また2011年からは、ヘア、ネイル、アイラッシュの複合型サロン「Carte Blanche」を運営している。

 

主力スタッフとの面会は7年で2回だけ。
2017年から開始した完全リモートワークで業務を最適化。

‒‒‒‒ Carbon Partners Asiatica(以下、アシアチカ)さんは、コロナ禍以前よりフルリモートワークで運営されているそうですね。
元々は尖沙咀(チムサーチョイ)のハーバーシティにオフィスを借りていましたが、2017年ごろからはスタッフ全員がフルリモートで勤務しています。きっかけは、そのオフィスをオーナーの都合で引っ越さなければならなくなったことです。もちろん新しいオフィスをすぐに探しましたが、ちょうどいいサイズの物件が見つからなかったことや、当時の香港スタッフが3人しかいなかったことなどから、リモートワークの導入を決意しました。当初は、いったん在宅勤務にして落ち着いたらまた借りようという軽い気持ちでスタートさせたのですが、スタッフたちがとても優秀で……。生産性が下がるかと思いきや全くそんなことはなかったんです。その後、オフィスワーク再開を先延ばしにしているうちにデモやコロナが起きてしまい、オフィス代も浮くし、もうこのままでいいんじゃないかとなりました。

‒‒‒‒ 右腕となる香港人スタッフの方は現在、海外在住だとか。
そうなんです。彼女は独立前の2005年から在籍している人で、勤続20年目になります。2年ほど前、その主力スタッフが子どもたちをオーストラリアの学校に入れるため香港に旦那さんを置いて移住したのですが、本人の希望で転居後も働いてもらうことになりました。リモートワークを始めてもう7年ほど経ちますが、この間に彼女と会ったのは、2回だけです。でもオンラインでは頻繁に顔を合わせているので、特に支障はありません。

‒‒‒‒ リモートワークに切り替えて、顧客対応の面で困ることはありませんでしたか?
アシアチカのクライアントはほとんどが香港外の企業のため、もともとオンラインでやり取りすることが多く、あまり問題はなかったですね。
また当時は出張も多く、1年の半分くらいは海外にいるような時期もありましたが、正直「今回の出張は必要ないな」と感じることも時々あって……。そこで、出張費はクライアントに別途請求することにしたんです。すると不要な出張の依頼が減り、こちらの負担もかなり少なくなりました。

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案件ベースで伸び縮みする新しい会社のカタチ。
仕事とプライベートの境界線を決めるのも自分次第。

‒‒‒‒ 物理的な拠点を手放したあと、組織体制も変わりましたか?
一時期は5カ国にオフィスを持ち、従業員もかなりの数がいたのですが、今は香港以外すべて閉鎖し、スタッフも必要最小限に減らしました。通常はそのミニマムの人員で回していますが、大きな案件が入ると、元従業員に声をかけたり他社とジョイントベンチャーを組むなどして、対応しています。

‒‒‒‒ それは会社としても自由度が高いですね。
案件ベースで進めると効率がいいんですよね。自由度で言うと、今度オンラインセミナーを開催するのですが、それも海外の旅行先からオンラインで実施する予定です。働き方に関しては、アシアチカでやれることは全てやったかなと感じています。

 

サロン経営者として感じる、新入社員との
世代間ギャップ、海外人材育成の難しさ。

‒‒‒‒ アシアチカさんの環境コンサル事業の一方、まったくの異業種である美容サロン「Carte Blanche (以下、カルトブランシュ)」も経営されていますね。どのような経緯から始めたのですか?
十数年前まで香港の美容業界のレベルは非常に低く、私自身が通いたいと思えるサロンがなかったんです。それならば自分で作ってしまおうと誕生させたのが、カルトブランシュです。複合型サロンとして13年前にオープンさせましたが、これだけ女性が活躍している大都市で、美に対しての興味が高い人も多く、しかもお金があるにも関わらずいいサロンがないという状態でしたからね。「受ける!」という確信はありました。

‒‒‒‒ 若い世代の従業員も多い職種かと思いますが、世代間ギャップを感じることはありますか?
カルトブランシュには40代の日本人スタッフも在籍していますが、その世代の美容師たちが若手のころは、営業後に遅くまで残り自主練習を積み重ねてやっとデビューできるという流れでした。一方で、今の若い世代のスタッフからは「トレーニングは勤務時間外ですか?」などと言われることもあり……。根性がないというわけではないんですが、そもそもの考え方の違いを感じますね。経営者の立場としては、平成の時代に育った先輩社員と、新しい感覚を持った若手社員のそういった相違が現実問題として悩ましくはあります。

‒‒‒‒ 海外の人材を育成することも苦労が多そうですね。
そうですね。日本人だけでなく香港人の新入社員も雇用しますが、やはり違いはあります。日本だと美容師免許を持っている人しか美容師になれないため、新人であってもある程度のレベルからのスタートになりますよね。その点、香港には免許制度がないので、日本とは土台が違います。そのため、彼らにはなるべく豊富にトレーニングを提供するようにしています。単に方法を知らないだけで、香港には器用で優秀な人がとても多いんですよ。

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サービス残業ゼロ、時間外研修なし、長期休暇OK--。
従業員最優先で優秀な人材確保を実現。

‒‒‒‒ 従業員の働きやすさを意識し取り組んでいることはありますか?
もともと非効率なことが嫌いなので、サービス残業はゼロにしています。遅くまで残って何か作業をしていたとしても、それに対して私は評価しないですし、勤務時間外にお店にいるなと伝えているので、営業が終わるとスタッフたちはさっさと帰ります。今では閉店時間の20時前になると、タイムカードの機械の前でみんな列になって待っていますよ(笑)。

‒‒‒‒ 長期休暇がなかなか取れないことも美容業界の課題だと聞きます。
はい。うちも以前はお客さまの都合優先で、スタッフの出勤日のバランスにかなりこだわっていました。でもそのうち、休みたいのに休めないという不満が彼らのなかに溜まってきているのでは、と感じるようになったんです。そこで、休暇の希望が重なればスケジュール調整はしてもらうものの、旧正月とクリスマスの繁忙期を除けば基本的に好きに休みを取ってもいい、ということにしました。

‒‒‒‒ それは業界への新しい風と言えますね。顧客の反応はいかがですか?
お客さまからすれば、「ハンドとフットのネイルを一緒にしたかったのに、今日はできないの?」となるとは感じています。でも休みをしっかり与えないと、優秀なスタッフも辞めていってしまうと思うんですよね。日本だと、例えば美容師が1カ月まるまる旅行に行ってしまうなんて、現状ではなかなかできないでしょうが、そういうことをさせてあげないと長く続けられません。そのおかげか、カルトブランシュには長年にわたって働いてくれているスタッフが多く、ありがたいことにお客さまにもご贔屓にしていただいています。
ただ、オフィス仕事とは違ってサービス業の働き方に関する課題はまだまだ山積みで、テコ入れができることもそれだけ多いと感じています。先にも言いましたが、私は非効率なことが嫌いなので、ここ2年くらいは「売上=お給料を下げずに出勤日数をどう減らせるか」ということに着目して、独自のボーナス有給システムを編み出すなどしています。本当にお客さまありきの業界なので、失敗と成功を繰り返しながら模索し続けるしかないと思っています。

 

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Carbon Partners Asiatica
www.cp-asiatica.com

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