NAC 香港ビジネス通信⑦ 香港の確定申告-法人利得(所得)税の申告と計算①
毎年4月初旬は、香港税務局(IRD, Inland Revenue Department)から法人利得税(Profits Tax)に係る申告フォームが各法人宛に発行される時期です。毎年決まった時期に申告納税すれば良いと思いきや、ここ香港では決算月により税務申告期限が変わってきます。申告書の提出を怠ると罰則の対象になる可能性があります。申告から納税までの流れと税額の基本的な計算方法は下記の通りです(なお、利得税には、法人以外の事業税も含まれていますが、ここでは法人利得税に絞って解説します)。
1. 法人利得税申告書(Profits Tax Return – Corporations, Form B.I.R.51)
通常、毎年4月初旬にIRDより各法人宛に法人利得税申告書が発行されます。必要事項を記入し、法人利得税計算書(Profits Tax Computation)、別表(Supplementary Forms)、並びに監査済みの財務諸表及び取締役報告書(Audited Accounts & Directors’ Report、一般的に監査報告書(Audit Report)と呼称)を添付した上で、発行日から1カ月以内に申告する必要がある旨が同申告書上に記載されています。日系企業の香港現法の場合、日本本社と同じ決算日としたり、一般的な日本の会社の決算期である3月末、または中国大陸側の既定の決算日である12月末とするケースが見られます。実務上は、税務申告代理人を選定しておれば、同代理人がクライアントの決算月別リストを予め作成し、IRDに提出することで、各々の決算月によって、別途規定されている税務申告期限に延長されることとなります(表1参照)。
話が前後しますが初年度の法人利得税申告書は、会社設立日から約15~18カ月後に発行され、申告期限はその発行日から3カ月以内となっています。これは、香港会社条例(CO, Companies Ordinance)によって、第1回会社決算を会社設立後18カ月以内に締める必要があるとされていることが所以ですが、初年度の会計監査が終了しているのに、同申告書による申告手続きが完了していないことに対し何となく焦燥感に駆られる場合、先に法人利得税計算書及び監査報告書のみで申告手続きを一旦進めておく、またはIRDへ事前に問い合わせて同申告書の早目の発行を依頼することも可能です。
課税所得がない状態で申告した場合に、通常IRDから法人利得税に係る通知(Profits Tax, Form I.R.C.1812)が発行されます。これは、事業を開始していない休眠状態の法人、もしくは課税所得(繰越欠損金がある場合、その相殺前の単年度における課税所得を指す)を創出していない法人に対し、法人利得税申告書の申告期限通りの提出を要求しない旨を示したもので、①課税所得が発生した場合は対象となる会計年度末から4カ月以内に通知、また、②不動産を売却した場合はその売却日から1カ月以内にIRDへ通知する必要がある旨や、7年間の会計資料保管義務などについて説明が記載されています。なお、赤字続きであったとしても数年に1度、調査的にIRDから同申告書が発行される場合がありますが、受領後は赤字であろうが速やか(原則発行日から1カ月以内)に申告を完遂することが義務付けられます。
法人利得税申告書を作成し申告する際、IRDはすべての法人に対して、監査報告書及び監査済決算書の添付を義務付けているものの、支店や駐在事務所については、同申告書とともに監査報告書の提出は義務付けられていないため、未監査の決算書を添付するなどで対応可能です。
余談ですが、COで規定されている法定会計監査と香港税務条例(IRO, Inland Revenue Ordinance)で規定されている税務申告は別の手続であり、会計監査だけ完了し、法人利得税計算などの税務申告に係る手続をなおざりにするケースがありますが、たとえ赤字続きで税務申告義務が一時的にないとしても、IRDからの突然の調査への対応や黒字転換した際は、結局過去に遡ってすべての税務申告を完了する必要があるので、毎年タイムリーに会計監査と税務申告をセットで完遂しておくことをお奨めします。
2. 最終税額賦課通知書(Assessment Demanding Final Tax & Notice for Payment of Provisional Tax, Form I.R.C.1931)
上述の申告後、IRDは、提出された申告書及びその他の必要添付書類を基にして、法人利得税を算出し、計算結果と合わせて最終税額賦課通知書(税額が発生しない場合は、先述のI.R.C.1812もしくは課税所得が無い旨の確認通知書I.R.C.1937など)を各法人宛に送付してきます。予定納税(Provisional Tax)制度の下、この通知書では、翌年度分の税金も前年実績を基準に算定されてくることが通常となるため、営業開始初年度または営業開始後初めての課税所得発生時においては、最初の2年分をまとめて納税が要求される点に留意が必要です。
また、納税期限は、一般的に当該通知書の発行日から2~6カ月後に到来し、その納税額は課税所得の16.5%(一定の要件を満たす法人は2百万香港ドルまで8.25%が適用される)で、当該年度の確定税額と翌課税年度の推定課税所得に基づく予定税額の75%相当の合計と、予定税額の25%を各々賦課通知書に指定された期日に納税することとなる(表2参照)か、一括で全額納付となることもあります。
なお、支払った翌年度予定納税は、翌年度の確定税額から控除される、またはその確定税額を超える場合や、課税所得自体が発生しなかった場合は、通常香港政府発行の小切手にて還付されます。
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