MPFの専門家に聞いた「積金易 eMPF」

2024/09/18

香港の退職年金制度MPFが施行されて24年目を迎えた今年6月、政府主導のスマートデジタルプラットフォーム「積金易(eMPF)」サービスが段階的にスタートすることになりました。MPF これは、従業員と雇用主の両方が利用できる集中型専用プラットフォームで、MPF関連のすべての情報を一つのシステムにリンクさせ、事務作業を電子ベースで行うことで、作業効率の大幅なアップを目指すのがねらいです。政府はこのシステムに約33億香港ドルの予算を投じ、9年がかりで構築を進め、今年やっと運用開始に至りました。今後10年間で約300~400億ドルの経費削減が可能という試算を政府は公表しており、それに伴い、従業員が実質的に負担しているMPF手数料も段階的に下がっていく見込みです。

システムへの登録が必要な対象者はMPFに加入している全ての企業と従業員で、期限前までに新システムへの登録とデータ移行が必要になります。政府ではこれを「革命的な変革」と形容していますが、実際には今年6月からすでに移行を始めた企業や従業員からは、システムの不具合や、事前の告知やフォローアップ体制の不足等、クレームや混乱を訴える声が多く寄せられているということです。

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政府側は混乱リスクを最低限に抑えるため、加入者の多いプロバイダのシステム移行期日を2025年第3~4半期の最終段階まで先送りし、小規模プロバイダから前倒しで運用開始するという措置をとっています。

移行前後の混乱を避けるためにも、特に従業員が100名を超えるような大手企業では移行の約1年前から以下のような段階的準備をすすめておくのが理想的です。

段階1:(移行の約1年~半年前):認知期間→システム移行の期限はいつなのか確認、必要な作業や担当責任者の任命等を実施
段階2:(移行の半年前~1か月前):準備期間→移行データの準備、従業員への告知とトレーニングの実施
段階3:(移行の1か月前):過渡期→システムへのログイン、データ移行、従業員の登録、初回拠出の実施等
段階4: 適応期間→不備の調整、従業員サポート等

また、これらの一連の作業においては、契約しているプロバイダからの情報提供やシステム面での技術支援サポートも重要な要素となります。資金が潤沢な大手では、政府システムと互換性のある自社システムの構築を、政府からの情報提供により早い段階から進めており、すでに運用を開始しています。サポート体制がしっかりしている点、互換性のある独自システムを先行投資している点、また、移行までの期間が最も長く設定されている、という点において大手プロバイダに優位性があるかと思われます。

最終的に経済的なメリットの大きい新システム。移行期間の混乱を乗り切れるよう、早めのアクションをお薦めします。

弊社ではMPF企業向けセミナーや情報提供も随時実施しています。また、新制度に関してのご質問等も、香港政府から認可を受けたMPF仲介者資格を有する著者までご遠慮なくお問い合わせください。

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著者プロフィール:
平原奈津子(ひらはらなつこ)
新田綾(にったあや)
香港でMPFマーケットシェアNo.1のマニュライフ香港にて企業向けMPF、団体保険や、個人向け保険の仲介業務に従事。お客様に寄りそうきめ細やかなサービスをめざし、日々奮闘中。

連絡先: Manulife International Ltd.
電話:852-9722-0012(平原)または852-9272-0061(新田)
メール: natsuko_hirahara@manulife.com.hk
またはaya_nitta@manulife.com.hk

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