目から鱗の中国法律事情 「中国の治安管理処罰法改正 その1」
中国の法律を解り易く解説。
法律を知れば見えて来るこの国のコト。
Vol.94 中国の治安管理処罰法改正 その1
中国では、現在「治安管理処罰法」の改正が議論されています。今シリーズでは、これについて見ていきましょう。
治安管理処罰法とは
中国の治安管理処罰法とは、2005年8月28日に公布され、翌年3月1日から施行された治安維持に関する法律です(主席令第38号)。治安管理処罰法第1条では「社会秩序を維持し、治安を確保し、公民、法人、その他の組織の合法権益を保護し、公安機関と人民警察が法令に従って治安管理の職責を保障し、規律するために、本法を制定する」と定めています。
日本では、治安管理処罰法は、中国の「軽犯罪法」であると説明されることもあります。つまり、大きな犯罪行為には刑法が適用され、軽微な犯罪行為については治安管理処罰法が適用されるということです。
中国では、もともと「治安管理処罰条例」(1957年10月22日公布・施行)と新しい「治安管理処罰条例」(1986年9月5日公布、翌年1月1日施行)という軽犯罪法に相当する法規がありましたが、これらが廃止されて2006年3月1日から治安管理処罰法が施行されました。
治安管理処罰法改正の流れ
冒頭で述べたように、この治安管理処罰法の改正が議論されています。この議論の始まりは、2023年8月28日に、法改正の予備審査が全国人民代表大会常務委員会第5回会議に提出されて、閉会日の2023年9月1日に全国人民代表大会のウェブサイトで改正案の全文が公開されました。
そして、2023年9月30日に、広く意見公募が行われ、12万5,962件の意見が寄せられたとされています。そして、この意見を参考にしながら、湖南省、広東省、江蘇省、雲南省、山東省などで関係者との議論が行われました。こうして、市民の意見や関係者の意見なども吸収して改正案がより練りこまれているとされています。
治安管理処罰法改正の重要ポイント
今回の治安管理処罰法改正の重要ポイントは、「中華民族の感情を傷つける」罪と、未成年者の非行行為に対する措置についてということになっています。(続く)
〈高橋 孝治(たかはし こうじ)氏プロフィール〉
立教大学 アジア地域研究所 特任研究員
北京にある中国政法大学博士課程修了(法学博士)、国会議員政策担当秘書有資格者、法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格者)。中国法研究の傍ら講演活動などもしている。韓国・檀国大学校日本研究所 海外研究諮問委員や非認可の市民大学「御祓川大学」の教授でもある。著書に『ビジネスマンのための中国労働法』、『中国社会の法社会学』他多数。FM西東京 84.2MHz日曜20時~の「Future×Link Radio Access」で毎月1、2週目にラジオパーソナリティもしている。Twitterは@koji_xiaozhi