NAC KINGSWAY 人事・労務・会計ビジネス通信 第6回

2022/04/06

香港における確定申告-給与(個人)所得税の申告と計算に関して

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毎年4月に入ると、香港税務局(IRD, Inland Revenue Department)から給与所得税(Salaries Tax)に係る申告フォームが雇用主宛に発行され、その後、個人宛にも別途申告フォームが発行されます。各フォームとも申告期限があり、提出を怠ると罰則(通常は罰金のみ、悪質な場合は禁固刑の規定も存在)の対象になる可能性があります。申告から納付までの流れ(新型コロナウイルスによる政府機関の業務や申告期限への影響については逐次ご確認ください)と税額の基本的な計算方法は下記の通りです。

1.雇用主支払報酬申告書(Employers’ Return, Form B.I.R.56A & I.R.56B)
毎年4月頭にIRDより雇用主(会社)宛に雇用主支払報酬申告書が発行されるので、雇用主はそれに税年度期間(前年度4月~今年度3月)内に支給した給与手当を、従業員各個人別に記載し、発行日から1ヶ月以内にIRDへ提出する必要があります(新型コロナウイルス拡大による政府機関の業務への影響等により、2021/22年度の申告期限は6月1日に延長されています)。

2.個人所得税申告書(Tax Return ‒ Individuals, Form B.I.R.60)
毎年5月に入ると(新型コロナウイルス拡大による政府機関の業務への影響等により、2021/22年度は6月1日に発行予定)、IRDから個人宛に個人所得税申告書が届けられるので、会社から受領した給与支給状況表(上述Form I.R.56B)の写しを基に、給与賃金、休暇手当、コミッション、賞与、教育費、本国支給の給与手当および会社負担の家賃・税金等を記入して、発行日から1ヶ月以内にIRDへ提出する必要があります。なお、ここでは雇用主からの給与所得手当に限らず、その他の事業収入等も含みますのでご留意ください(個人事業主の2021/22年度の申告期限は、上記発行日から原則3ヶ月以内となります)。

3.確定税額通知書(Assessment Demanding Final Tax & Notice for Payment of Provisional Tax, Form I.R.C.6401)
その数ヶ月後(大体8月~12月頃)、IRDは、上述した雇用主支払報酬申告書と個人所得税申告書を基にして給与所得税を算出し、計算結果と共に確定税額通知書を各個人宛に送付してきます。この通知書では、翌年度分の税金も前年実績を基準に算定されています(予定納税制度)。特に香港勤務初年度においては、原則として最初の2年分をまとめて納税する必要がある点にご留意ください。また、実際の納税期限は、確定税額通知書上に明記されていますが、通常、申告書を提出した該当年度分全額と翌年度予定納税分の75%の合計額が翌年1月、残りの25%が翌年4月に支払われることとされています。

4.出向されている方が注意すべき点スクリーンショット (857)
各申告書にはいろいろな記入欄がありますが、特に次の項目は税額にかなり影響しますのでご注意ください。
-住宅手当分を給与に含めて支給しますと、そのまま給与総額の一部となって課税されますが、会社が住宅を社宅として無償貸与または実費清算する場合には、現物支給扱いで給与総額の10%相当額(ホテルの場合は4%または8%相当額、ただしサービスアパートは社宅扱い)のみが加算されることとなり、通常香港にて支払う賃貸相場を考慮すると有利となる可能性が高くなります。
-会社が個人所得税を負担する場合、その負担分は手当扱いとなり課税対象となります。
-親会社から出向されているケースで、香港での役務提供の対価としての日本支払いの給与諸手当(留守宅手当等)や出張日当がある場合には、香港に源泉があるとみなされますので、香港にて課税対象となります。
-会社が負担するお子様の教育費については、本来親が負担すべきものとみなされますので、香港にて課税対象となります。
-会社が駐在員の一時帰国のための福利厚生として支払う旅費交通費もまた、出張旅費交通費とは区分して、課税所得に含める必要があります。
-給与所得に加え、不動産を所有し、賃貸収入がある場合には不動産所得、香港にて個人事業収入がある場合は事業所得を記入する必要があります。
-香港における適格繰延年金保険制度や適格任意MPF制度に加入しておれば、一定の所得控除を享受できます。

5.税額の算定方法と控除項目
給与所得税の税額は、次のいずれかで計算した結果の少ない方となります。
①人的控除前の課税所得に2021/22年度の標準税率15%を乗じた金額;または
②所得から人的及び所得控除額等を差引いた課税所得に、2021/22年度の2~17%までの累進税率を乗じた金額
このほか、寄付金控除(所定の費用控除後の所得額の35%が限度額)や年度により特別控除(2021/22年度は最終給与所得税額に対し上限1万香港ドルで100%控除可)等があります。


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