目から鱗の中国法律事情 Vol.55

2021/05/12

中国の法律を解り易く解説。
法律を知れば見えて来るこの国のコト。

 前回、2021年1月1日から施行された中国民法典上の契約の規定を全体的に見ました。今回から本題である保証契約について見ていきましょう

保証契約とは

 中国民法典第681条では、保証契約とは債権の実現を保障するために、保証人と債権者が債務の期日が
到来したときもしくは当事者間で決定した債務を履行すべき状況が生じたにもかかわらず、債務者が不履行にした場合に、保証人が債務を履行するもしくはその責任を負う契約をいうとしています。保証契約は、あくまで主たる債権が存在していることが前提となるため、主たる債権債務に関する契約が無効となった場合、保証契約は無効となるとも規定があります(ただし、法律に別の定めがある場合を除く)(中国民法典第682条第1項)。

 要するに、何らかの契約があったとして、その契約が履行されないときに、代わりにその責任を負う者を決めておき、契約の履行の安全を確保するのが保証契約ということです。また、保証契約はあくまで債権者と保証人の契約であり、書面で行う必要があるともされています(中国民法典第685条)。

 

日本の保証と異なる点

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 「保証契約とは」で述べた内容は、日本の民法の「保証債務」の項目に規定されている内容とほとんど同じです。しかし、中国の保証契約は、日本と大きく異なる点もあります。まず法人組織は保証人とはなれないという規定です(中国民法典第683条第1項)。さらに、公益目的の非営利法人や法人格を持たない組織も保証人となることはできません(中国民法典第683条第2項)。日本では、定款の定める範囲に付属する範囲であれば法人も保証人になることができると考えられています。また、法人格を持たない組織は日本では契約の主体になれないので、保証人になることができないと当然のことを述べているように思えます。しかし、中国では法人格を持たない組織は、法人格を持たないものの、自己の名を
もって民事活動を行えるため(中国民法典第102条)、中国ではこのような規制があるのです。

 

保証の方法

 保障の方法には、一般的な保証と連帯責任による保証があるとされており(中国民法典第686条第1項)、この点は日本と同じです。また、保証契約の内容が不明確である場合には、一般的な保証責任を負うことになります(中国民法典第686条第2項)。(続く)

 


高橋孝治〈高橋 孝治(たかはし こうじ)氏プロフィール〉
立教大学 アジア地域研究所 特任研究員
中国政法大学博士課程修了(法学博士)。中国法の研究をしつつ、執筆や講演も行っている。行政書士有資格者、特定社労士有資格者、法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)。著書に『ビジネスマンのための中国労働法』(労働調査会)、中国ビジネス法務にも言及した『中国社会の法社会学』(明石書店)他 多数。詳しくは「高橋孝治 中国」でネットを検索!

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