メディポート健康コラム:人間、致死率100%

2024/10/30

スクリーンショット (2670)一昨年、がんで亡くなった部下が遺した言葉が「人間、致死率100%」また別の人が余命宣告をされた直後に「余命宣告した医者の方がわたしより先に死ぬかもしれない。私はたまたま大まかな死期を伝えられただけで、人生なんて明日はわからない」と自分を励ますように話していました。どちらもその背景を思うと辛いのですが、自分が病に倒れ死を覚悟したときに思い出したい言葉です。
この世に生を受けたものは、誰一人として例外なく死に向かって生きるわけです。若い時は自分の死について考える機会はほとんどありませんが、身近なところで誰かが亡くなったりあるいは大病したりしたという話が時々耳に入る中年期以降になると、徐々に自分の人生の終わりを意識するようになるものです。社会環境の変化などを背景にして平均寿命が近年伸び続けており、ヒトはいったいいくつまで生きる可能性があるのかと、ふと考えてしまうこともあります。我々の社会は少子高齢化が一段と進み、さらに孤立、孤独化が深刻になってきており、長生きしているだけで幸福であると思われる時代はとっくに去ってしまい、「長寿」という言葉も今では死語になりつつあります。今年、日本の警察庁が孤独死の実態把握のために初めて集計した数字によると、65歳以上のひとり暮らしの高齢者の死亡は、1~3月だけでも約1万7千人にのぼり、この数字をもとに独居状態での死亡者数は年間6万8千人にもなると推計されます。非婚率が高くなっていることや、たとえ結婚しても子供をつくらないカップルが増えていることを考えると、この数字が改善するとは考えられず、これからさらに大きくなるこの問題はますます深刻化していくことでしょう。若い人ほど、自身が高齢期を迎えた時を想像して、覚悟を持つ必要があるのではないでしょうか。

ヘイフリックの限界
記録に残る世界最高齢者は、1997年に亡くなったフランス人女性の122歳です。これまでに120年以上生きた人の記録は非常に稀であり、このことからも120年がヒトの最大寿命だと一般的に認識されています。つまりどんなに健康に留意したとしても120年が生きる限界だということです。その寿命を決める大きな要因が、遺伝子の末端にあって細胞分裂のたびに短くなっていく「テロメア」という部分です。これがある程度短くなると細胞が分裂しなくなり、死に向かっていく。それが「ヘイフリック」の限界と言われるものです。ただしテロメアにテロメラーゼという酵素が作用すると、テロメアが短くなる速度が遅延して細胞分裂できなくなるまでの時間が長くなります。これは個人差が大きく個々の寿命に影響すると考えられます。一般に老化といわれる現象や多くの生活習慣病にもテロメアとの関係が分かっています。何らかの方法でテロメアが短くなる速度を落とせば寿命は延びるはずです。健康に良いとされる適度な運動やダイエットなどもテロメアが短くなる時間を遅らせると考えられています。

健康を維持する意味
どうせ死ぬのであれば、なぜ健康を維持する努力をしなければいけないのか。そんな疑問を持ってもおかしくありません。特に高齢者の場合はそのような思考が働いても不合理ではありません。しかし、まだ若いのに大病を患ってその後の人生に大きな制約がかかる事態とならないよう、健康診断を受けるなどして病気の早期発見に努める意義は決して小さくありません。しかし、この理由だけでは健康増進をさらに心掛けなければいけない理由が明確ではありません。ヒトは中年期を過ぎると一気に老化が進み身体機能が衰えます。何もしなければ加速度を付けて身体の劣化が進むだけです。老化は避けられないものとして受け入れるしかありませんが、それに抗う努力をしておかないと寝たきりとなるリスクが大きくなります。つまり健康を維持増進する大きな意味は、人生の終末期をできる限り良好な状態で過ごすためです。健康寿命を可能な限り延ばし、言い古されていますが「ピンピンころり」を目指したいのです。
孤独な高齢者が増えています。これからも確実に増えます。孤独死して何日も放置された状態で発見されるのは悲しいですよね。また高齢になっても人との繋がりを大切にして、心の健康も維持していきたいものです。精神的健康維持もとても大切です。

何をするべきか
特別なことは何もないと思います。ヒトも哺乳動物に属しており、ほかの動物とは外観は違うもののその生存に関する機能はほとんど同じです。「動物」としての基本的日常を意識して、食べ過ぎない、身体を良く動かすということを心掛けてはいかがでしょうか。現代人は消費カロリーが減少する半面、摂取カロリーが多くなりがちです。また、便利な社会で身体を動かす機会が激減しています。スポーツしたりジムに行ったりするのも良いのですが、とにかく歩くことを勧めます。できる限り階段を使うこと。日常生活でのちょっとした運動の積み重ねが健康増進に繋がり、たとえ超高齢期を迎えても、死ぬまで元気でいられる可能性を高めます。下の介助は受けたくありません。今日から将来の健康をしっかりと意識しましょう。


堀様1藤田医科大学卒業。臨床検査技師。
日本医科大学付属病院勤務の後、青年海外協力隊に参加し、南太平洋ソロモン諸島ガダルカナル島に2年間派遣される。世界保健機関WHOのプログラムの下でマラリア対策プロジェクトに従事。帰国後に就職した巡回健診事業を行う会社にて香港に赴任。健康に対する自身の理念を実現するため、1999年3月メディポートを設立し現在に至る。


Metro Medical Centre医療・健康の総合コンサルタント Mediport International Limited
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