メディポート健康コラム:飲まれちゃいけない「酒」の話

2024/07/31

スクリーンショット (2626)蒸し暑い日が続く。キンキンに冷えたビールを乾いた喉に一気に流し込む快感はたまらない。個人的なことになるが、実は、私は40歳になるまで飲酒の機会はほとんどなく、晩酌など一人で飲む機会はまったくなかった。そう言っても今は誰も信じてくれないが…。はるか昔、私がまだ若き駐在員の頃、毎月のようにやってくる本社の社長に、時には朝方まで付き合わされ、そして飲まされた。ビールに始まり紹興酒、そして場所を変えてウイスキー。当時はとにかく苦痛でしかなく、眠気にタバコの煙が加わって、まるで拷問でも受けているかのような気持ちにさせられることさえあった。社長の滞在はいつも3晩だけだったが、当時はこれが大きなストレスだったことを告白しておこう。
ビールのどこが美味いのか不思議でならず、昔は嫌々飲んでいたはずなのに、ある時ちょっとしたきっかけで「ビールが美味い」というスイッチが入ってしまった。それを切ることがとてつもなく難しいことなどその時には思いもしなかった。ところで私の会社の設立時に加わってくれた新潟出身の看護師は自他ともに認める呑兵衛だった。彼女が「男のくせに飲めないなんて情けないわね」とのたまう。私は「うっさいな、好きでもないものを無理に飲まんでも良いだろう」そんな会話を交わしたことを今でも鮮明に覚えている。ちなみに新潟は酒どころであるからか、酒に強いタイプの遺伝子を持つ人の割合がとても高い県のひとつらしい。私の出身である三重県は、反対に最下位近くにランクされているそうだ。ところで私の飲酒スイッチをONにしたのは、暑いなかを歩いて登ったビクトリアピーク。そこにあった小さなキオスクで、何となく買った小さな缶ビールだった。

お酒の歴史
世界最古の酒は何であるかご存じだろうか?これはミードと呼ばれる蜂蜜酒で、今から1万年以上も前に存在していたそうだ。何らかの原因でミツバチの巣に水が溜まって発酵し、まさに自然発生的にできた甘いお酒だ。当時のヒトは酒など知るすべもなく、ただ甘いというだけで飲んでしまったが、アルコールに対してまだ耐性がなかったヒトは少しだけですぐに酔ってしまったのではないだろうか。不思議な気分になれる「飲みもの」を長い年月をかけて何とか自分たちで作ろうと努力を重ねたに違いなく、技術的に確立された醸造法が引き継がれ、今もポーランドなどで広く飲まれている。
米や麦、あるいはイモや雑穀などデンプン質に富むものであればあらゆるものが原料になる。それらの栽培が始まったのは1万数千年から2万年前。つまり現在飲まれている醸造酒は、主食としてこれらの穀物が安定的に収穫できるようになってから作られるようになったと思われる。さらに手間をかけて蒸留しなければいけないウイスキーやブランデー、あるいは焼酎などの歴史は醸造酒に比べると比較的新しく、およそ2500年前からではないかと推測されている。

アルコールの作用と代謝
飲酒で気分が良くなるのは大脳前頭葉皮質の機能が抑制され、ほろ酔い状態になるからだ。「この程度の酒量」には個人差があるものの、飲酒習慣がある人の場合で純アルコール量にして20~25g程度。これはビールのロング缶(500ml)1本と思っておけば間違いない。酒量が進むと脳機能の抑制範囲が拡大し、理性が働かなくなったり、さらに運動機能にまで影響してまともに歩けなくなってしまったりする。アルコールはその大部分は小腸から吸収されるが、肝臓で徐々に分解されて、最終的には水と二酸化炭素になる。その途中に生成されるアセトアルデヒドが悪酔いの元凶であり毒性が強いのですぐに分解されなければならないが、その能力の個人差が「飲める、飲めない」に大きく関係している。したがって飲めない人が無理に飲むことは、それだけ健康を害する危険性が大きいのは明白だ。飲酒を強要するなど論外だ。もちろん飲めるからといって生体に悪影響がないわけではない。はっきり言うが、酒は飲まないに越したことはない。無理に飲んでもろくなことはない。

飲んでも飲まれるな
深酒しておとなしく寝てしまうだけならまだしも、理性が効かなくなり本能がむき出しになってしまうこともあるので、多量飲酒者の行動には特段の注意が必要だ。痴漢行為などの軽犯罪で捕まる者の一定数は飲酒の上での犯行だといわれるが、警察でも裁判所でも飲酒を理由に情状されることは一切なく、「酔っていたから覚えていない」という言い訳はまったく通用しない。緊張を解きコミュニケーションを円滑にするというアルコールの作用はその大きなメリットと言えるが、理性が失われ感情のコントロールができなくなると周囲とのトラブルにも発展しやすく、飲酒の最大のデメリットともいえる「行動上のリスク」が大きくなる。自分にとって適切な飲酒量にとどめるのは難しい。好きなお酒をいつまでも楽しみたいのであれば、飲む際に、酒は「脳に作用する薬物」であると自分に言い聞かせるべきだ。決して飲まれてはならず、自分が飲めると思う量の半分程度が適切だと心得ておくべきだろう。酒で身体を壊すのは自業自得だが、他人に迷惑をかける飲み方は最悪だ。飲酒は、誰もがそのメリットだけを最大限に引き出せる飲み方を常に心がけたい。酒で人生を狂わせてはならない。酒は飲むとも、飲まるるな!


堀様1藤田医科大学卒業。臨床検査技師。
日本医科大学付属病院勤務の後、青年海外協力隊に参加し、南太平洋ソロモン諸島ガダルカナル島に2年間派遣される。世界保健機関WHOのプログラムの下でマラリア対策プロジェクトに従事。帰国後に就職した巡回健診事業を行う会社にて香港に赴任。健康に対する自身の理念を実現するため、1999年3月メディポートを設立し現在に至る。


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