深センものがたり 第11回

吾輩は犬である
吾輩は犬である。名前はまだ無い。野良犬なので当たり前だ。深センに長く暮らすが家(犬小屋)は無く、深センの街で自由気ままに暮らしている。
昨日は東北菜を食べたが、白酒も混じってたのか酔っ払った。今日は客家料理を食べた。やはり鴨とネギは相性があう。明日は遠出して久々にイタめしでも食いに行くか。ここはマジで食い物が美味い街である。
多言語の街
この街は多言語地域だ。色々な言語が飛び交っている。地方の方言なんかチンプンカンプンだ。なんで人間たちは話す言葉が異なるのだろ?グローバル化に向かう現代では不便だろうが…。
ボクたち犬の世界はどこの国でも大丈夫。通訳は不要だ。いや、言葉なんかいらない。鼻を突き合わせば匂いでコミュニケーションがとれるんだ。どーだ、うらやましいだろーが。
えっ、北京語をしゃべるのかって?たくさんしゃべれるよ、ワン、ワン、ワン、ワン、ワン……(王,万,碗,玩,晩,网,忘…)
犬に小判
人間社会にゃわからねぇ事がある。銭の争いだ。あちこちで言い争ってもめてるじゃねえか。なぜカネがそんなに重要なんだ?生活に困らねえ分がありゃ充分だろうが。マンション価格の上昇ってのは儲けようとするから値上がりするんだろが。欲張らなけりゃ、ここまでバブらねぇ。ボクたちや猫たちは食い物で争うけどよ、銭はいらねぇ!ネコに小判、とはよく言ったもんだぜ、犬にもいらねぇが…。
あふれるペット
人間がペットと呼ぶ飼い犬や猫が街中に増えた。ペットブームらしい。オスのトイプードルがかわいいピンクのヒラヒラ服を着せられ窮屈そうに散歩する姿には爆笑モンだ。連中はペットフードばかり食わされ、自分の好物のメシには一生有りつけぬだろうが、それも幸せな人生、いや犬生であろう。
ところで、あんたたち人間に言うけど、ペット飼ったら最後まで面倒みてやらんかい!捨てたら可哀想やんけ。ペットの身になってみろ!彼らからみたら人間は愛しい家族や。いつまでも一緒だと思ってる。捨てられるなんか思いもしてへん…。
ボクはべらんめぇ調にもなるが、ホンマに怒った時は大阪弁になるねん。すんまへん。
たそがれ
ボクは気が向けば海辺へ遠出するんだ。ビルに囲まれたこの街にもちょっと歩けばきれいな海が広がる。しかし、なんや!このゴミだらけの海は…。ビニール袋やペットボトルが散乱してるやないか!プラ製品は自然の原料から生まれた合成品やけど、二度と自然には戻らん。鳥や魚や亀たちはそれをエサと間違って喰ってしまって死ぬんやで。
ボクは人間は嫌いやないけど、この現状にはムカッ腹が立つねん!自然界のマナーを忘れた傲慢な生き物や!
夕日の海辺のたそがれの中、ひとり、いや、一匹がたたずみ、自然を荒らす人間たちの近未来を憂う。
ちなみに、このコラムは”ぼやき漫才“ではない、あくまで文学なのだ。吾輩は犬である。名前はまだ無い…。
深セン在住18年のベテランコンサルタント
宮城 紀生
miyagi@waya.net.cn
深セン華日(ワーヤ)コンサルティング
会社設立・運営、法律相談、会計財務税務
深圳市福田区深南大道6021喜年中心A610