「広州中大布料生地市場」から見るアパレル業界

2018/12/27

一歩踏み入れば、見渡す限りの生地や装飾品、
中国感漂う空間に魅了されること間違いなし。
そんな世界最大級の生地市場、
「広州中大布料生地市場」に密着!

 

アパレル業界と聞くとデザイナー、バイヤー、ショップ店員を連想しがちだ。では一体、どのようにして一着の服を作り上げるのだろうか。そんな知っているようで知らないアパレル業界に潜入すべく、世界最大の生地市場、广州中大布料市場に取材へやって来た。名前通り中大駅から少し歩くと、気づけば市場内という巨大な市場。東京ドーム約12個分の広さだという。一日で廻る場所でないことは、一目瞭然である。右も左も全く分らない状況の中、毎日この卸市場を行き来するという今村慎吾さんに、取材を同行してもらった。

今村 慎吾さん

今村 慎吾さん

 

今村さんは、広州を拠点として貿易会社を営む日本人だ。主な仕事は、規制品の検品を行い日本に出荷する仕事の他、お客からのデザインの注文を受け、要望に合わせた生地や、材料を探し、形にして商品の出荷などを行う。今村さんが受け持つ注文の多くは、年配の方向けの舞台、社交ダンスの衣装、キャバクラのお姉さんが着る煌びやかな服が多い。一定の需要がある商品ではあるが、大手企業にしては数が少ない。そのため、大企業は請け負いたがらない、そこに目を付け一定の要望に応えているのが、今村さんであり、要望に応えるため、大量の荷物をかかえ、毎日この市場に自ら足を運んでいるというわけだ。

「軽紡城」ここだけで十分広い

「軽紡城」ここだけで十分広い

まず、連れられてやってきたのが、市場内の大きなビル「軽紡城」。階によって売られている商品は異なり、生地市場といっても、レースや服につける装飾、装飾をつける金具など様々。ビル内の隅々までぎっしりと売られており、装飾品はどれも馴染みのある柄や、イラストが描かれたものばかり。生地も一見、どこも同じように見えるが、質や値段は異なるそう。良質な材料を探すことも、今村さんの仕事の一つ。市場に訪れる人のほとんどが、業者関係者であるため、材料の単位は百、千個、又は量り売り。生地はヤード、メートル単位で買うのが基本。もちろん、少量単位で一般の方も購入可能だが、多ければ多いほど安くなる仕組みだ。生地によって材質も、色も様々で選択肢は無限大。この中から要望に合わせて選ぶのかと思うと、気が遠くなりそうだ。

 

 

「軽紡城」を見学後、別の建物へ。またもや生地や装飾品の売り場なのかと思いきや、そこはデザインされた服を、実際に一着の服にするためのパターンナー、いわば服の設計士が存在する一帯となっていた。彼らの腕で服の完成度が大きく変わるのはもちろん、布をいかに無駄にしないで切るかなど、なかなか頭脳派の仕事だ。至る所に見たこともない大きな機械が、簡素な建物いっぱいに置かれている。ここがまた中国らしくて、面白い。

「見たことある!」がずらり

「見たことある!」がずらり

673_広州中大布料生地市場

 

一つ一つ手作業でストーンのサンプル作り

一つ一つ手作業でストーンのサンプル作り

要は、一つの市場で服を作る過程全てを行うことができるのだ。さらに、この市場の魅力は、何といってもスピードである。お店で生地や装飾を選んでデザインの注文をすると、早くて三日ほどでサンプルができあがるそう。そして、市場内の工程の多くが手作業であるということ。人の手によって一着の服が完成されていく姿を、ここでは見ることができる。観光するだけでも服好きにはたまらなく面白い。活気溢れる中国らしい雰囲気を感じながら、生地市場でmade in chinaの世界を覗いてみてはどうだろうか。

最後に、取材中ふと、今村さんに「仕事、楽しいですか?」と投げかけてみた。すると、満面の笑みで「周りから大変そうだと言われるけど、実はかなり楽しい。」と答えてくださった。自分の好きを仕事にするというのは、まさにこのこと。天職なのだろう。羨望の眼差しで見ずにはいられなかった。ちなみに、今村さんの今の目標は、自家用『セスナ機』を購入し、自らの操縦で日中を行き来することだそう。叶った日には乗せていただきたい。

 

 


673_広州中大布料生地市場

広州中大布料市場
住所:広州市海珠区瑞康路中山大学南門向かい側

桜社中貿易公司
住所:広州市天河区先烈東路190号粤海凱旋大厦801
電話:(86)136-6299-3327、(81)090-1814-9181(今村 慎吾)
メール:i@sakurashachu.com

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