第2回「広東の特産品・銘菓」深セン「荔枝酒」や東莞「蛋卷(エッグロール)」

2016/08/31

「広東省の特産は?」と尋ねられることがある。なんとなく知っていても、改めて尋ねられると具体的な産地やエピソードまでは答えられないことも……。そこで、広東省各地の代表的な特産品や銘菓を数回に分けてご紹介。これを知っておけば、おみやげ選びにも役立ちそうだ!

深圳

荔枝酒

ライチ 荔枝酒

深圳は新しい都市なので、歴史のあるお土産や特産品はあまり多くはない。とはいえ、名物がないわけではない。深圳に住む人に尋ねてみると、「荔枝」という言葉をよく耳にする。そう、深圳にはライチという名産がある。早くも唐の時代には、バナナ、パイナップル、龍眼とともにライチが「南国四大果物」として朝廷へ献上されている。昔の人は「楊梅為公、葡萄為伯、而推荔枝為至尊無上的王」(ヤマモモは公爵、ブドウは伯爵、ライチは最高最上の王様)とライチをたたえている。このように深圳のライチは、「果物の王」という称号にふさわしく、深圳の代表的なお土産として知られている。

この特産を使ったお土産としてはライチ酒が有名だ。深圳では古くからライチを原料として酒が作られてきた。甘い口当たりで飲みやすく、滋養効果もあるとされる。楊貴妃がライチを好んだ話は有名だが、ライチ酒が献上されたこともあったようだ。「貴妃飲罢荔枝酒、霓裳羽衣舞不够」(貴妃はライチ酒を飲んで、踊り続ける)の「貴妃醉酒」が京劇の演目にもなっている。お土産にするなら「冷金香荔枝酒」などがオススメだ。

 

金亀桔

金亀柑 金亀柑

深圳龍崗区坪山鎮の「金亀柑」は百年余りの歴史をもつ特産品だ。言い伝えによれば、湘(湖南省)と贛(江西省)が接する山間部に住んでいた客家人によって深圳にもたらされたとされる。名前の由来は、果実の表面のシワが亀の甲羅模様のようだからともいわれるが、実際には産地である深圳坪山鎮の金亀村という地名からきているようだ。果実は大きく鮮やかな色合いで、皮はむきやすい。果肉はさっぱりとした味わいで、果汁が多く、たいへん甘い。

 

東莞

麦芽糖

麦芽糖 麦芽糖

「石龍麦芽糖」の主な原材料は麦芽ではなくもち米だ。東莞のもち米はとても質が良いといわれる。その良質のもち米を使い、伝統的な製法で作られるのがこの麦芽糖、つまり水飴だ。麦芽糖を入れた容器もいい味を出している。一つの容器には約500グラムの麦芽糖が入る。黄金色に輝く麦芽糖は、後味のすっきりしたさわやかな甘さが特徴。麦芽糖は胃に良いとされており、そのまま食べることもできるし、調味料として様々な料理に使うことができる。

 

蛋卷

蛋卷 蛋卷

「蛋卷」をそのまま訳せば「卵巻き」「エッグロール」となる。形状は、卵焼きを巻いたものというよりは、ヨックモックのシガールやブルボンのルーベラのようなイメージ。東莞の名物で、新年や節句などのお祝いごと、親族・友人へのあいさつ回りの際の贈答品とされることも多い。

かつて、貧しい人たちは野草や草の根などを食べて空腹をしのいでいたのだが、やがて食べやすくするために卵と一緒に調理するようになった。卵は貴重だったのでできたものを乾燥し、ロール状の保存食とした。これが蛋卷の始まりとされている。その後、製法などが改良され、さまざまなタイプの蛋卷が作られるようになった。

今でも新年を迎えるにあたり自宅で蛋卷を作る家庭も多く、「孫子点灯」と呼ばれる東莞の伝統的な風習の際には欠かせない。食感はカリカリで、卵の濃厚な味わいを楽しめる。現在では各地で様々なタイプの蛋卷がみられるが、東莞伝統の「厚街蛋卷」を味わいたければ地元のお店まで出掛けなければならない。東莞市厚街鎮の涌口村にある「祥旺興餅家」は蛋卷を販売して18年、地元の味を忠実に守り続けている。

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