中国法律事情「中国の年休の特徴」高橋孝治

2015/10/13

中国の法律を解り易く解説。法律を知れば見えて来るこの国のコト。

中国の有給休暇 その3
前回まで日本と中国の年次有給休暇(以下「年休」という)の違いを見てきました。今回は中国の年休独自の特徴です。そのため日本人にはなじみにくい内容です。一緒に見ていきましょう。

④年休計算ための勤務年数
中国で年休の日数計算のために用いるのは累計勤務年数です。つまり他の企業での勤務歴も含め今までの勤務年数全てを合算します(企業職工帯薪年休仮実施弁法第4条)。さらに年休を付与する条件は三年以上勤続すること」です。これも同一の企業であることは要求されておらず前職と合算します。
つまり以下のように計算します。
(例1)入社の前の日まで別の企業に2年勤務していてそれ以外に勤務歴のない場合←入社初日に年休計算上は勤続2年なるので、入社日に年休5日付与。
(例2)過去に13年の職歴があり、2年間無職を経験した後入社した場合←「勤続1年」の要件を満たしていないので入社時には年休付与の必要なし。ただし1年勤務すると過去と合わせて14年の累計勤務となるので年休10日付与。
中国の法律を解り易く解説どこに勤務しようと常に「国家」に雇われており職場が変わのは配転に過ぎないと考える単位制度の名残と言えます。ただし実際には従業員の過去の職歴の把握は難しいと思います。本人の申告を信用するか社会保険の加入記録などで確認するしかないでしょう。なお病気休暇を一定以上取得したため年休を付与しなくていい場合の従業員も「勤務年累計」で区別していることに注意してください(前々号の①参照)。

⑤年度ごとに付与
中国では年度(1月1日から12月31日まで)ごとに年休を付与します。そのため年度の途中で労働者が条件を満たし、年休を付与する場合は按分計算を行います(企業職工帯薪年休仮実施弁法第5条)。(例)7月1日に5日間の年休を付与する条件を満たした場合184日(7月1日から12月31日までの日数:(365日貧年の日数)×5日(本来付与する年休の日数)=2.5205・←2日(小数点以下切捨)←2日の年体付与定年まで一つの企業で働き続けるとなる単位制度の名残でしょう。全員が定年まで勤務するなら年休付与日が統一されれば企業側は処理が簡便になるので、その利便を考慮したものと思われます。右の(例)で翌年1月1日からまた新しい年休を付与しなければなりません(付与日数は翌年1月1日時点で何年累計勤務年数があるかで判断します)。(続く)

高橋孝治(たかはしこうじ)氏〈高橋孝治(たかはしこうじ)氏プロフィール〉
中国法ライター、北京和僑会「法律・労務・税務研究会」講師。
都内社労士事務所に勤務するも中国法に魅了され、退職し渡中。現在、中国政法大学博士課程で中国法の研究をしつつ、中国法に関する執筆や講演などを行っている。行政書士有資格者。特定社労士有資格者。法律諮詢師(中国の国家資格で和訳は「法律コンサル士」)。
詳しくはネットで「高橋孝治 中国」を検索!

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