中国法律事情「次有給休暇、日本との違い」高橋孝治

2015/09/29

前回は中国労働法の全体理論と年次有給休暇(以下「年休」という)の付与要件を見ました。今回は日本の年休と異なる点の続きです。

② 付与日数

日本では勤続半年目には10日付与、1年半目には11日、2年半目には12日、以降14日、16日、18日と増えていき、6年半以上勤続したとき以降1年毎に20日付与することになります(日本の労働基準法第39条第2項)。これに対し中国では累計1年以上10年未満の勤務をした場合毎年5日、累計10年以上20年未満の勤務では毎年10日、累計20年以上の勤務で毎年20日付与します(職工帯薪年体仮条例第3条)。

③ =買取制度
日本では年休は2年間使わないと時効により消滅します。年休の買取は原則として禁止されていますが、時効により消滅した年休や退職などにより行使できなかった年休を買取することは法には触れません。これに対して中国では年休を行使できる期間は付与したその年度内(1月1日から12月31日まで)ですが、企業の生産活動などの都合による場合は年度を跨ぐことができるとされています。また企業が業務の都合により年休を与えることができない場合、労働者本人の同意を得て年休を与えないことができます。ただし、その日につき賃金の3倍の年休報酬として支払う必要があります(職工帯薪年休仮条例第5条、企業職工帯薪年休仮実施弁法第10条)。しかしここでは、どのような場合が「企業の生産活動などの都合による場合」と認められるのかが明確ではありません。さらに3倍の年休報酬を支払わなければならないのは①その年度内に付与された年体を使用しなかった場合なのか②労働者が年休の使用を申請したけれど年体が取得できなかった場合なのかも明らかではありません。これはまだ中国労働法が未熟な部分の表れでしょう。
しかし中国労働法全体の趣旨は労働者の保護を手厚くするものです。その点から考えれば①の説を採用していると考えられます。リスク回避を第一に考える場合中国ではその年度中に全ての年休を消化できるように配慮した方がいいと言えるでしょう。(続く)

〈高橋孝治(たかはしこうじ)氏プロフィール〉

中国の法律事情


高橋孝治

中国法ライター、北京和僑会「法律・労務・税務研究会」講師。
都内社労士事務所に勤務するも中国法に魅了され、退職し渡中。現在、中国政法大学博士課程で中国法の研究をしつつ、中国法に関する執筆や講演などを行っている。行政書士有資格者。特定社労士有資格者。法律諮詢師(中国の国家資格で和訳は「法律コンサル士」)。
詳しくはネットで「高橋孝治 中国」を検索!

 

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