中国の酒文化「酒がなければ宴にならぬ」について

2015/05/18

無酒不成席(酒がなければ宴にならぬ)古くからお酒に親しんできた中国人は、長い歴史の中で独自の酒文化を育んできた。酒を使用した古代の儀式は習慣として現代の生活に取り込まれており、無酒不成席(酒がなければ宴にならぬ)という概念が諺になるほど中国人の心の奥深くに根ざしている。

よく聞かれるのが、ビジネス上でのお酒の話。円卓を囲んで食事をしながら、茅台酒(マオタイジュウ)などのコウリャンが主原料の白酒(バイジュウ)で潰れるまでひたすら乾杯が続く……こんなイメージだったかもしれない。しかし最近では中国人のお酒の飲み方が変わってきた。”紅酒“(ホンジュウ)つまりワインで乾杯するケースも増えており、昔のように強要することも少なくなってきた。

では、今の中国ではどんな場面でどんなお酒が飲まれているのか、少し探ってみよう。大きく分けて「節句のお酒」と「社交のお酒」という2つの名目があるようだ。

「節句のお酒」と「社交のお酒」

節日(節句)のお酒
中国人には1年の中で幾つか大切な”節日“と呼ばれる日がある。日本にも伝わり節句と呼ばれている、中国では今でも旧暦の日付に従っている点が異なる。これらの節日にはそれぞれに対応するお酒があり、みんなでお酒を囲む習慣がある。

旧暦大晦日(除夕):旧暦1月1日の前日で、”過年“とも呼ばれる。中国人が最も重視する節日で、家族みんなが集まり「年酒」を飲む。貧しくて普段あまりお酒が飲めなくても、この時ばかりはお酒が必須。

旧正月(春節):旧暦の1月1日。春節期間は、延命・長寿を願って「屠蘇酒」や「椒花酒」(椒柏酒)などの薬酒が飲まれる。

端午節:旧暦5月5日。邪気払いの意味を込めて「菖蒲酒」や「雄黄酒」を飲む習慣がある。

中秋節:旧暦8月15日。団圓節とも呼ばれ、家族や友人と憩う機会で、お月見にお酒は欠かせない。「桂花東酒」が飲まれる。

重陽節:旧暦9月9日。高いところに登りお酒をいただく習慣がある。「菊花酒」が振る舞われる。

酒を飲みかわす中国文化

社交・祝いのお酒
社交の場としては接待の宴席に限らず、祝い事に関係した風習が少なくない。日本と似たような習慣もある。例えば家を新築する際の上棟式にあたる儀式や新築祝い、またお店の新規開店ではお酒が振る舞われる。送別会にお酒が欠かせないのも同じだ。

紹興酒:中国では「黄酒」(ホワンジュウ)という呼び名のほうが一般的。浙江省紹興地方のある風習から生まれたお酒だ。西晋時代の文学家嵇含が著した「南方草木状」には「女児酒」と呼ばれるお酒が登場する。女の子が生まれるとお酒作り池の底に埋めて、その子が成人して婚礼の日が来ると、掘り出して封を開け、婚礼の席で出席者に振る舞う……と説明されている。「壇子」と呼ばれる壺に入った「花彫酒」などもある。中国北方では料理酒として認識されており、白酒と違い全国で広く飲まれているわけではない。

喜酒:婚礼の代名詞的なお酒。”置辦喜酒(喜酒を用意する)“とは”辦婚事“すなわち縁談を進める事を、”去喝喜酒(喜酒を飲みに行く)“は婚礼に出席することを意味する。

回門酒:婚礼の次の日、新郎新婦は「回門」つまり新婦の家を訪ねる風習がある。この際、新婦の家で宴が催される。昼食とお酒が振る舞われる。

満月酒:又の名を「百日酒」と言う。中国では、子を産んで一月が満ちた時に友人を招いて宴席を設ける風習がある。その際に飲まれるお酒が”満月酒“と呼ばれる。

寿酒:長寿を祝う風習があり、50歳、60歳、70歳の誕生日(広東では51歳、61歳、71歳)を”大寿“と称し、子または孫が主催する宴席が供される。

社交・祝いのお酒置辦喜酒

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