広東の季節フード「荷葉飯・ 籠仔飯」ちまき

2015/04/14

粽子(ちまき)                                                  荷葉飯

葉っぱに包まれたご飯やお餅は、季節を感じさせてくれたり、ほのかな香りがしたり、なんとも言えない癒し効果がある。日本では、ちまきや柿の葉寿司、笹だんご、柏餅や桜餅など、葉っぱを使う料理が古くからあり、使われる葉っぱも多種多様だ。ちまきの本場中国でも様々な葉っぱを使った料理がある。例えば、中国南方の”粽子“(ちまき)は”箸葉“(笹の葉)や”箬葉“(葉蘭)が使われ、北方では”蘆葦葉“(葦の葉)が使われることが多い。今回紹介する荷葉飯で使われる葉っぱは「荷葉」つまり蓮の葉だ。実は広東には”糯米鶏“という長方形のちまきがある。笹や葉蘭ではなく蓮の葉で包まれた独特のちまきで、荷葉飯はこの糯米鶏から発展したものだといわれている。荷葉飯は普通セイロ(蒸籠)を使って蒸すので「籠仔飯」とも呼ばれている。以前紹介した「煲仔飯」とならんで広東を代表するご飯の一つだ。

歴史ある籠仔飯          籠仔飯                  はっぱ
広東では古くから食されており、明朝末期から清朝初期にかけて活躍した学者屈大均が著した「広東新語」には「荷包飯」として言及されている。少なくとも明の時代以降広東の人々は現在の形の荷葉飯と親しんできたようだ。飲茶文化が発展した現在では茶館で夏の点心の一つとして広く知られている。

ところで、なぜ荷葉飯は夏の点心なのか?それには漢方の考え方が大きくかかわっている。雨が多くなるこの時期は体に湿気が溜まりやすくなるといわれ、暑い夏の始まりには「心」つまり心臓を含む循環器および自律神経の養生が重要だと考えられている。その点、蓮の葉には体内の余分の熱をとり、むくみを解消させ、体をリラックスさせる効果があるとされている。地元の人々は薬膳の意味からも、この荷葉飯を初夏から夏にかけて好んで食してきた。米と具材が蓮の葉に包まれて蒸されるため、蓮の葉のほのかな香りが素材にうつり、さわやかな芳香が鼻をくすぐる。夏バテで食欲がなくなる時期でも、このさわやかな香りにさそわれて食が進む効果もある。

蓮の葉の表面はワックス効果のある物質で覆われているため撥水作用があり、素材の旨味をギュッと閉じ込めてくれる。広東では様々な具材と組み合わせた荷葉飯があり、「香菇鶏」(シイタケ・鶏)、「臘味」(燻製食品)、「滷味」(塩水または醤油に調味料を加えて煮た料理)、海鮮食材などがある。作るのに少々手間はかかるが、もし蓮の葉が手に入るようであれば自分でも作れる。具材を炒めて味付けし、炊いたお米と合わせて蓮の葉で包む、または蓮の葉を敷いたセイロに入れ、6〜7分蒸す。あまり長時間蒸してしまうと、蓮の葉が黄色に変色してしまいさわやかな香りも飛んでしまう。自分で作る場合、シイタケ、鶏肉、干しエビ、焼き豚などの具材とあわせるのがおすすめ。ちなみに、もち米と鶏肉を使うと”糯米鶏“も作れる。

香りのよい荷葉飯は、広東の身近な地元料理。さわやかな葉っぱの色あいと香りを楽しみながら、暑い夏に備えよう。

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