最新技術と新システムの路面電車「広州海珠区有軌電車」

2015/01/21

海珠有軌電車12月31日開通

海珠有軌電車12月31日開通

 

広州地下鉄は、海珠有軌電車のモデル区間が12月31日開通したことを発表した。試験運行期間は約13分間隔で運転される。運行時間は午前9時から午後5時。2月12日からは、システム設備の進捗状況に合わせて、試験運行から正式運行へと移行していくという。そこで今回は、広州の新しい交通機関「海珠有軌電車」について調べてみた。

◆どんな乗り物?

海珠有軌電車の車内  海珠有軌電車とは

「有軌電車」とはトラム(路面電車)のこと。新たに登場したのは最新式の次世代路面電車だ。車両メーカーによれば「世界初のスーパーキャパシタ完全低床電車」とのこと(「用語の説明」を参照)。空中架線が必要なく景観や安全面にも配慮されている。充電が必要なスーパーキャパシタが動力源のため、すべての停留所に充電設備が設置される。最大充電時間はなんと30秒!こんな短時間の充電にもかかわらず1回の充電で4㎞走行できる。乗り降りの時間を利用し充電すれば次の駅まで運転可能なのだ。また運転中、制動時に発生するエネルギーを85%以上回収でき、エネルギーの効果的な循環利用を実現している。底床技術は、ドイツ・シーメンス社の完全低床電車技術を採用、車両床面と地面の距離は325㎜抑えられている。

◆どこを走る?

海珠有軌電車が開通

今回、広州塔̶万勝囲間がモデル区間として開通した。広州塔から会展東路区間は、珠江沿い緑地帯を走り、黄埔涌を越える橋を通過する。車窓から見える風景は、珠江と対岸のビル群、現在の新しい広州を象徴するような景色だ。今後は文化・教育各機関と協力して珠江沿線への集客、発展を目指すという。当初の計画では、島を1周する環状線として計画されたが、計画の合理化が図られこの区間への建設が実現した。広州市の路面電車についてはこれまでもいろいろな情報が流れており、越秀区や荔湾区、天河区での敷設計画についても噂されてきた。しかし、目下のところほかに具体的な計画はなく、まずはこのモデル区間の状況を見守る形のようだ。

◆利用法は?

運賃はたったのRMB2。広州市内の地下鉄・バス同様、非接触型ICカード「羊城通」が使用可能。さらに、新たな試みとして、QRコード(二維碼)の切符が導入されている。紙に印刷されたタイプと、スマホの画面上に表示するタイプがある。各車両のドアの近くにはQR・ICカード読み取り機が設置されており、乗車の際「羊城通」をタッチするかQRコードをスキャンさせる。検札の音が鳴ればOKだ。市内の地下鉄やBRT
は改札を通ってからプラットホームへ入れるシステムだが、路面電車はオープンタイプのプラットホームを採用、車内改札システムとなっている。ワンマンバスの場合は乗車口と降車口が分けられているが、全てのドアに読み取り機が設置されているため乗降口の区別も必要ない。無賃乗車の心配は?駅ではスタッフがパトロールして、不正乗車防止に努めるという。

新たな試みがたくさん詰まった広州の新交通機関「海珠有軌電車」。実物を見に出かけてみよう。

【用語の説明】

●スーパーキャパシタ:エネルギーの未来を変える夢の蓄電装置といわれる。「電気二重層キャパシタ」の総称で、ウルトラキャパシタとも呼ばれる。有機電解液とアルミや炭素を原料としたシンプルな構造で、電池のように重金属を使わないため、環境への負担が少ないばかりか、資源枯渇の心配がない。また充放電時のエネルギーロスが少なく、内部抵抗が非常に低いため、電池では不可能な瞬時の大電力の充放電も可能。電池のように爆発を起こす危険もない。

●低床電車:主に路面電車のために開発された技術。普通の電車は、台車や動力装置を床下に設けるため、地面と客室床面との間に高さがあり、それに合わせたプラットフォームやステップが必要だった。低床電車では、小径車輪の採用、車軸を廃止した左右独立車輪式台車、台車のついた車体で台車のない車体(フローティング車体)を永久連結で挟み込む方法、電気機器の屋上への配置などの技術により、客室の床面の高さを極めて低く抑える。これにより低いプラットフォームまたは地上からでもステップ(段差・階段)を用いることなく乗降できる。完全低床とは、客室中央通路が全長にわたって100%低床化されている設計を指す。

名称:広州海珠区有軌電車
(プロジェクト名:海珠区環島新型有軌電車試験段線路)
英語名:The Island-rounded tram of the Haizhu Island, Guangzhou
全長:7.7km
駅数:11駅
コントロールセンター・車両基地:磨碟沙公園
車両製造:南車株洲電力機車・広州南車城軌基地
最大運行速度:70km/h
定員:368人

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