深センものがたり 第48回

2022/08/03

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深センの方言
現在の深センで中国人が話す共通言語は、中国の標準語である普通語と広東語が多くを占める。

上海では上海語、広州では広東語のように、他の地域では各々の方言が存在するが、深センには深セン語という特定の方言がない。客家語と広東語の2大方言に加えて、大鵬語、疍家語、宝安白話、粘米語、卵家語など多くの限定地域の方言を合わせて、深セン語であろうか。1898深センの人口は、経済特区成立後、各地から多くの人々が集まり、1979年の約30万人から1千7百万人に増えた。90%以上は地方からの移民であり、曲型的な多言語多方言が共存する中国でも珍しい地域である。

つまり、深セン語は “めちゃくちゃ多い”ということが結論だ。
村人

以下は、あまり馴染みのない深センの方言である。

 

大鵬話
広東語、客語混合型に属し、「千音」、「軍語」とも呼ぶ。深センの東にある大鵬半島で使われる。宋、元、明の時代から大鵬半島へは外部から多くの人が集まった。大鵬所城の開城(1394)後、軍隊の話す専門語、客家移民の客家語に加えた広東語の混合で独自の方言になった。

通訳も大変である…大鵬城

 

疍家語
発音は「duan ka」。主に漁民が使う方言で、「基囲話」、「水上話」、「水上広東語」とも呼ばれる。蛇口や盐田にある海辺の漁民が住む漁村で使われている。

 

宝安白話
深センの方言を代表する「宝安広東語(宝安粤语)」。通称「宝安白話」や「地元話(本地话)」と呼ぶ。居住地別に、公明語、松崗話、沙井話、平湖話、福永話、西郷話、南頭話、囲頭話などに細分化される。現在でも話す人口は約17万人。

宝安白話で有名な南頭話。南山区の南頭古城を中心に集まっている。

囲頭話は、「村を囲む」または「垣根の中」を意味する。古代の現地人が外敵や野獣の侵入を防ぐために村の周囲に高さ約2~3メートルの土塀(フェンス)を築いていたことから名づけられた。羅湖区の黄貝嶺、筍崗、東門、蔡屋囲、福田区の福民、沙嘴などの村人が話す方言である。平湖駅(1911年)

 

龍崗客語
龍崗の客家語。1985年の使用人口は約14万人で、当時の宝安全県の戸籍人口の半分を占めた。現在の使用人口は約20万人。
※客家(客家語ハッカ)とは、北宋時代(10世紀後半~12世紀前半)に北方系の遊牧民に征服された華北地方から長い年月をかけて江南地域へ移住するが、そこでも戦乱が始まり、更に南下した福建省や広東省でも戦いに巻き込まれたため、一部の民は広西省や四川省、台湾や東南アジアへ移住を続けた漢民族。客家娘

 

中国の訛り
訛り(なまり)とは、地域特有の発音のアクセントを表すが、中国語では「口音」と言い、それぞれの地域で培われた長い歴史に基づく特有の文化的な要素であり、深センで継承されてきた多くの方言もその「口音(訛り)」にプライドを持っていたが、80年代以降に生まれた人たちは、その伝統的な文化や習慣への継承には興味を持たないらしい。1970年客家人買物

 

ちなみに筆者が深センで話す言語の多くは日本語であるが、たまに中国人に中国語(普通語)を話すと、「あなたが今しゃべったのはどこの国の言葉ですか?」と質問されるときがあり、我が語学力の低さについ愕然としてしまう。


宮城 紀生深セン在住20年のベテランコンサルタント
宮城 紀生
miyagi@waya.net.cn
 
 
 
 
 
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