深センものがたり 第37回
〜鬼も来たる中元節、その二〜
旧暦7月15日(今年の新暦8月22日)は、「中元節」。
中元節は悪霊も蘇る「鬼節」との別称もあり、鬼にまつわる昔からの言い伝えも多い。前回に引き続き、更に数々の客家人から得たエピソードをお伝えする。
ホームレスの鬼たち
現世に現れた鬼たちは、当然ホームレスである。彼らは、昼間は暑いので土の中で寝たり、水辺に潜っている。夜になると這い出して巷を彷徨い、人を脅かしたり、勝手に家へ入って、食べ物を食い散らかす軽犯罪者なのだ。人々は、嫌がらせや無銭飲食をさせないために、ニセモノのお金を燃やし与えて追っ払うが、そんなものでは立ち去らない反社会的極悪集団も存在する。
鬼が”あの世“から出入りする鬼門は、7月1日から徐々に開き、15日の大開日からゆっくりと閉まり、30日に完全に閉じるのだが、ちょっとでも満足感を得た軽犯罪軍団は大開日に去るが、ひと握りの極悪集団は、鬼門が閉じるギリギリまで粘り、悪行の限りを尽くすのだ…。
鬼節の禁忌
・夜遊び禁止! 彼らは夜が更けた頃に起き出し、街へ繰り出す。通りすがりの者に声をかけ、甘い言葉で誘い、呑めや唄えや踊れやの挙げ句、気が付けば身ぐるみ剥がされてしまうので、”酒を呑んでも呑まれるな“の精神が大事である、ていうか、深夜までの深酒は避けるようにしよう(筆者自身への戒めでもある)。
・暴飲暴食はダメ! 彼らは、金持ちの匂いに非常に敏感なのだ。高価な酒や豪華で贅沢な料理に群がる。鬼たちは狡猾なので、本人が気がつかないうちに散財させ、運気も奪ってしまう。食べきれないほどの料理を注文する人たちは要注意。”腹七分目“の量を心がけるよう。特にこの季節は体力も落ち、免疫力も減少するため、肉類や魚介類は、ちゃんと火を通した方が良い。
ちなみに、レストランなどは箸や小皿などがテーブルにセットされており、人数以外のセットは店員にすぐに片付けられる習慣は、鬼が勝手に座って客の料理を食べてしまうのを防ぐことから始まったそうである。
・脱いだ靴先はベッドの方へ向けない。鬼は靴のつま先の方向で、人がどこに寝ているかを判断する。靴のつま先をベッドに向けていると、鬼はベッドにもぐりこみ、一緒に寝る(”夜這い“?)。これは、睡眠時に火事などの発生時に、飛び起きてすぐに靴を履きやすくするためである。
・口笛を吹かない。夜に口笛を吹くと、鬼を呼び招く。これは、ただ単に”夜は静かにせよ“というマナーである。
・遊泳に注意! 鬼たちは水中で”人の足盗りゲーム“をして遊ぶ。水難事故防止の目的であろう。
・夜に洗濯物を干すべからず! 夜に干すと、鬼は服を着てしまい、臭い匂いを残す。これは、ナマ乾きを防ぐ知恵である。
・鬼に声をかけられても無視すべき! 彼らは怖がらせることが大好きなので、遭遇しても見て見ぬふりをする。見知らぬ者には注意せよという安全対策なのだろう。
8月は鬼に注意して過ごしてほしい…
※鬼は実在しない架空上の存在である。
深セン在住20年のベテランコンサルタント
宮城 紀生
miyagi@waya.net.cn
深セン華日(ワーヤ)コンサルティング
会社設立・運営、法律相談、会計財務税務
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