殿方 育児あそばせ!第3回

2021/07/21

殿方育児あそばせ

 

長靴と小葉子

 小葉子とは私の娘の小名だ。大昔の日本でいえば幼名か、今でいえば単に愛称だろう。

 小葉子は長靴が好きで、家の中でも履いている。この習慣が、いつから始まったのかはよく覚えていないが、小葉子が好きなアニメ「小猪佩奇」の影響だと、小葉子のママは言っていた。原題は「PeppaPig」というイギリスのアニメで、中国でも人気のようだ。

長靴と小葉子  最近の小葉子は長靴のカラーをミックスして履く

長靴と小葉子 
最近の小葉子は長靴のカラーをミックスして履く

 このアニメの主人公である、子豚のペイチーとその一家は泥遊びが好きで、水たまりの上で飛び跳ね、泥をまき散らせて遊ぶ。この時にペイチーは長靴をはくのだ。このシーンは何度となく出てくるのだが、これを見て真似しているのかもしれない。小葉子もペイチーも黄色い長靴を履いている。小葉子の黄色い長靴には、恐竜のキャラクターがくっついている。

 広州は雨が多く、長靴の出番は多い。しかし小葉子は雨が降らずとも長靴をセレクトする。

 長靴がデフォルト、まれにサンダルだ。やさしい小葉子のママも、さすがにカンカン照りの日に長靴は許さない。文字通り泣く泣く(大泣き)サンダルを履いて、お出かけしてゆく。

小葉子の長靴

小葉子の長靴

 この長靴フリークの、長靴に対する愛は止まらない。家の中でも履きたがるものだから、小葉子のママは家の中で履くための長靴を買ってきた。今度はピンク色、ユニコーンのキャラクターつきだ。小葉子のママによると、小葉子が自分で選んだという。我が家では自分で身につけるものは、自分で選ぶという決まりがある。これは、私が幼少のころ私の身につけるものは、全て私の母親が選んでいたことへの反発である。

 私が中学生、高校生くらいに身なりを気にし始めたとき、衣服を自分で選ぶことが出来ず、親の買ってきた服を、ダサいと思いながらも甘んじてそれを着ていた。それがコンプレックスにつながったという嫌な思い出があるためだ。自分で衣服を選び始めた私は1枚のTシャツを選ぶのに1時間かかるほどの優柔不断であり、買った後も、別のデザインやカラーにすればよかった、サイジングを誤ったなどと後悔することが多々あった。

 小葉子には、0歳の時から衣服や靴を選ばせるようにしていた。そのころの本人に選んでいるという意思があったかは分からないが、1歳を過ぎたころには小葉子は自分の欲しい長靴を選べたということを聞き、私は人知れず歓喜した。

 これは、ごく小さなことかもしれない。親として、わが子には自分の意思で選択し、人生を進んでいってほしいと思った。


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神沼昇壱(かみぬま しょういち)

随筆家。広州在住の日本人。2002年に中国に渡り留学と就職を経験。その後、中国人女性と結婚した。2021年現在一児の父として育児に奮闘中。

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