ノスタルジックなコンセプトストア「紅白藍330」

2019/01/09

香港のストリートでよく見かけることができるナイロンプラスチックから作られた3色(赤・白・青)のビニール袋「紅白藍」。香港の地元では名の知れた製品で香港文化の一つにもなっている。

ぽけっとページ編集部スタッフでは「紅白藍」をテーマにした香港初のソーシャルエンタープライズ「紅白藍330」をご紹介する。「紅白藍」シリーズの製品はすべて精神疾患から回復した患者たちが自立支援のために作ってきたものだ。「紅白藍」シリーズを立ち上げた経緯や背景についてインタビューを行った。

 

「紅白藍」とは?

「紅白藍」は、赤・白・青の3色のビニール生地で作られた大きめでお手頃価格の旅行向けバッグ。引っ越しや帰省の時に利用したり、旺角(モンコック)にある屋台でかけるカバーなどによく利用されている。

安価で丈夫な軽い素材のポリエチレン(PE)で製造されたビニール生地のルーツを辿っていくとなんと日本で発明されたという。元々は建設現場で使用されたり、工業用原料を輸送するために使用されていた青色のビニール生地。その後、PEプラスチック技術が台湾に導入され、(台湾の)工場は、赤・白・青の3色を組み合わせたデザインをリメイクした。主に香港で出回っているビニール生地は台湾から輸入されていて、香港の人々はさらに幅使い用途で「紅白藍」を利用しており、香港生活のあらゆるシーンで使われ、独自の地方文化を形成している。

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1950年代初め、香港では風雨から木造住宅を守るために外壁にビニール生地を掛けていた。1960年代初めから3色(赤・白・青)のビニール生地を使用するようになり、丈夫で安価なビニール袋が製造され、後に香港の人々の日常生活の一部となっていった。1970年代から1980年代にかけて香港経済の急速な発展で高層ビルが増えてくると、環境保護法によって建物が取り壊される際、ほこりが立たないようにするため、必ずビニール生地で覆う新法律が施行され、このビニール生地の需要がさらに高まっていった。また多くの香港人が、経済力の劣っていた中国本土の親戚のために購入した沢山のお土産を持っていくために「紅白藍」のビニール袋をよく利用していたので、後に「紅白藍」と言えば「親戚訪問」と連想するまでになった。

3色カラーの「紅白藍」は、草の根レベルから頑張ってきた香港人の苦労を反映し、彼らの思い出の一部にもなっている。社会活動への参加、香港の繁栄と成長を促進するために努力する堅実さや熱意、団結を表す「草の根」文化を形成するようになった。香港における経済的成功の原動力と見なされている。

 

 

「紅白藍330」について

「紅白藍330」は、社會福利署「創業展才能」基金の出資を得て、香港の有名デザイナーやアーティストの又一山人氏(本名:黃炳培)、新生精神康復会(以下、新生会)と市区重建局が共に立ち上げたブランド。

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「紅白藍330」を設立した社会福祉団体「新生会」は、1965年に設立されたNPOの社会福祉機関として、長年に渡り精神障害者を対象としたリハビリテーションサービスを運営している。1990年代初め、新生会は社会的企業として福祉事業を立ち上げ、精神障害者の生活レベル向上、彼らが社会に溶け込むための自立支援活動を行っている。

「紅白藍」は、香港の伝統的な精神「勤勉さ」「忍耐の強さ」を表している。「330」と「身・心・霊」は、中国語の発音が似ていて、また新生会が提唱した「身体と心の健康」と一致する。「紅白藍330」は、『赤・白・青』と『正面香港』をテーマに1960年代から1970年代にかけて香港スタイルと現代芸術を融合させ、地域文化と伝統文化の活性化、香港精神を促進させることを通して、身体と心の健やかな向上、精神障害者が社会活動で自立できるようにすることを目的としている。

「紅白藍330」の各商品は、『正面香港』の伝統的な精神を伝えている。

ビジネスは3つのカテゴリーで構成されている。
(1)精神疾患から回復した人たちが制作した手工芸品の販売
(2)「積極的な考え方」に基づくクリエイティブなワークショップを宣伝
(3)オンラインショップ

 

 

新生会、授産所に新たなパワー

毎日8時45分に工場へ出勤して16時45分に仕事を終える労働者たち。1日当たりの労働時間は長くないが、オフィスワーカーと同様、レベルの高い作業が求められる。オフィスワーカーとの違いと言えば、労働者たちは元精神病患者であることだ。

精神疾患から回復した後、職場へ復帰するためには仕事習慣やライフスタイルを再確立しなければならない。なぜなら、薬が彼らの症状をコントロールできると言っても副作用によって疲れやすくなり、社会復帰したとしても職場での人間関係でつらい思いをすることもある。職場復帰しても失業率は高くなってしまう傾向にある。

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新生会の授産所では、精神患者の程度に応じて様々な職業訓練を提供している。段階的に分けて、仕事トレーニングを通じて自信をつけて再就職ができるような訓練を行っている。一方、病気から回復した精神患者にとって人間関係がストレスの源とされている。同所では、よりよい職場環境を提供している。

同所が労働者の能力に応じた業務を依頼する場合でも、市場で販売されている品質レベルの要求度は高い。ベーキング、縫製、木工、工芸など、様々な職業訓練が提供されている。個々の作業の合間にいくつかの工程に分けて、共同作業も行うことができる。また、業務分担を行うことで労働者自身が達成感を得ることもできる。

専門知識を有する上司は、労働者の状況をより深く理解するため、3か月ごとにソーシャルワーカーと一緒にミーティングを行い、ユニットトレーニングやカレッジトレーニングで労働者の長所を見つける。個々の訓練プログラムや様々な活動を通して、積極的に潜在能力を引き出すのに役立てている。

新生会の職業訓練に参加する労働者は、訓練手当(HKD26.5)を受給することができる。一般企業に勤めるオフィスワーカーにとっては昼食代も払えないほど少額ではあるが、労働者が自力で回復に向けて重要な一歩を踏み出すことを目指している。

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回復上の喜びや楽しさ

秀慧(シュウエィ)さん、阿進(シン)さん、秀儀(シュウイ)さんの3名は、「紅白藍330」生産に携わる労働者だ。彼らは微笑みながら自分の回復過程を共有して、精神病患者についてみんなに深く知ってもらいたい。

話好きな秀慧(シュウエィ)さんが病気を打ち明けると、医師は薬を用いて「統合失調症」に起因する幻覚と幻聴を特定させて、彼女を回復へ導いた。退院後、彼女はやりがいを見つけるため、新生会へ申し込んだ。ソーシャルワーカーを通じて授産所で面接をしたところ、自分に合うと思ったので仕事を始めることにした。新生会での仕事は、労働者の意欲を刺激することができると彼女は信じている。

「病気の有無を問わず、上司は一切差別したことがありませんでした。上司は私たちの能力に合わせた仕事をさせてくれます。最初は7~8ポイントしか取れませんでしたが、時間が経つにつれて、段々とできるようになりました。上司の要件を満たしたとき、自分自身のイニシアチブも向上させることができます。」と彼女は語ってくれた。

授産所の訓練を通して、彼女はいつか再び社会復帰できると考えている。

明るい性格の阿進(シン)さんは微笑みながら、祖父から伝わる「精神病」を遺伝されたと語った。17歳の時、他人と比較されるプレッシャーに押しつぶされ、「精神病」を発症した。

彼は、「授産所は、まるで保護されている環境の中で働くような気がします。ストレスのない環境で自分自身の精神病の症状について考え、自分自身を変える動機を与えてくれました。」と語ってくれた。若い頃に入院した時、彼は未来が見えないと思っていたが、同所での仕事が彼自身を変えた。新生会で友達を作ることができ、それは運命の祝福でもあった。彼はまた、上司や同僚と共に仕事をして、多くの経験を共有することができた。

続けて彼は、「ここは”社会組織”のような場所です。私はここでコミュニケーション能力を身につけて、仕事の経験を積み重ねて、社会復帰への自信をつけることができました。」とも語ってくれた。

静かに座っている秀儀(シュウイ)さんが当時、「双極性障害」で苦しんでいたのを想像するのは難しい。彼女は意識的に他人と距離を置き、他人との接触を避けていた。

「働き始めた頃、仕事の内容が私には合わないと思い、職業訓練トレーニングでは満足できませんでした。しかしその後、上司の協力で、品質検査のポジションへ異動した後は仕事の要求も達成することができ、自信がつきました。」隣にいるシュウエィさんとシンさんも頷いて賛成した。

自分自身の(病気の)回復過程について話さない場合、彼らが経験した精神的な問題について外見からは中々想像することができない。しかし、彼らがみんな自信をつけること、専門技能を習得すること、工場での仕事を通して人々と仲良くなりたいと考えている。社会復帰する準備ができたら、彼らは一般企業で仕事をすることができる。

昔は精神病患者に対する意識が欠けていたため、一般社会では「社会の敗者」と見なして精神病患者の能力を誤解していた。実際のところ、社会復帰できる患者は一般の人たちと同様のサービスを提供することも可能だ。元々、患者は一般の人たちと比べても変わらないが、病気にかかっているため、社会復帰するためにはある程度の長い期間を要する。それに加えて、再び自分自身を受け入れて、経験を積むにはさらに時間を要する。

すべてのリハビリテーションを受講した人たちはそれぞれ、回復への道のりは異なるが、自分自身の人生をやり直すために、彼らの心の強みと精神的な回復力が必要でなければならない。「紅白藍330」の象徴的な精神などの彼らが「紅白藍」の生産に携わったたゆまない努力は、健康的な身体と心を再構築するために重要な一歩を踏み出した。

彼らが社会復帰するまでのサポーターになってみませんか?「紅白藍330」製品を購入することは、彼らの働く能力を認める一番の行動に違いない。

 

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紅白藍330
ウェブ:www.rwb330.hk
オンラインショッピング:rwb330.corecommerce.com

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