宝石業界こぼれ話 ジュエリーの修理
私共では、装身具の修理を承っています。
基本的に貴金属を素材にしたジュエリーは、修理が可能です。一方、所謂アクセサリーは、修理が出来ません。ジュエリーとアクセサリーとを区別するポイントの一つです。
つまり、装身具を修理するご依頼を受けた時、出来る限りお直しをしたいのですが、アクセサリーはできませんので廃棄するしかないのでしょうね。
さて、ジュエリーの修理というのは簡単そうで、意外と難しいのです。例えば指輪のサイズ直しです。ほとんどの指輪はサイズを直せますが、指輪の周囲の半分以上にダイヤモンド等をセットしたデザインですと、新たにすべてを作り直したほうがよい場合もあります。また、宝石でも熱が加わると宝石にダメージを起こす場合は、修理の時に火が使えません。最も、最近はレーザーで溶接する技術が普及しましたので可能な幅は拡大しました。それでも、エメラルド、オパール等には細心の注意が必要です。
切れたチェーンの修理もできない場合があります。鎖のデザインによっては、修理不能をお伝えすることがあります。しかし、ゴールドやプラチナのチェーンの場合、仮に修理ができず不要になったとしても、私共では買取ができますので、まったく無駄になることはありません。ご相談下さい。先々にチェーンをお求めの時には、修理が可能なデザインを選定される事をお勧めします。
この様な修理の時に、パーツを使うことがあります。其の中のひとつにピアスのピンがあります。一見どのピアスのピンも同じように見えますが、実は日本のパーツには拘りがあります。
もう25年余に成りますが、日本にPL法が導入されました。ジュエリー業界も真剣に取り組みました。特に人の耳に直接接するピアスによる金属アレルギーの問題です。大学病院の先生方をお招きして、勉強会なども行い、金属アレルギーの発症を徹底して削減する素材を検討しました。
一番問題になったのは、ホワイトゴールドの合金を作る時に入れるニッケルです。また、メッキを掛けるときの下地のニッケルでした。実は最も多かった金属アレルギーの症例は、ニッケルが誘発する例でした。それ以来、日本のメーカーは、ニッケルを使わないジュエリーを目指し、また、パーツもニッケル・フリーに取り組みました。こうした研究開発によって、今では日本のパーツは、ニッケル、カドミューム、コバルト、水銀、クロミュームを含まないパーツを世界に提供できています。
香港・中国でも漸く、日本のメーカーの取り組みに理解を示すようになりました。私が、10年程前に香港の代表的なジュエリー企業に提案した時は、「パーツの値段が高い」と言うだけで、問題提起に耳を傾けませんでした。それだけに、漸く理解してもらえる時代になったとの思いがあります。
ちなみに、金属アレルギーの症例が極めて少ないのが、プラチナです。ジュエリー業界では其の他の素材として、最近はチタン、シリコン、セラミックも使います。ジュエリーの世界にも「安心」「安全」があるのです。
写真: 日本のパーツカタログとメーカーのチラシ
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