宝石業界こぼれ話 指輪のサイズ

2016/08/23

指輪のサイズを「サイズ9番」とか「12番」とか言います。が、このサイズに国際統一サイズはありません。これだけ、国際化している時代に、不思議です。日本は、日本サイズ。香港には香港サイズ。アメリカ、ユーロ、中国、イギリスそれぞれ別の基準になっています。もっとも、日本の業界は、20年位前に、JIS規格の基になっているISO基準を取り入れようとしましたが、すでに日本基準に馴染んでいる日本の業界は、変更に消極的で、そのまま変わらずに現在に至っています。日本国内では、誰も疑わず日本サイズでサイズを言いますが、香港では、そう簡単では有りません。お客様は、各国にまたがるからです。

という事で、お客さんに指のサイズを確認するとき、「香港サイズですか?」「アメリカサイズですか?」等と、お尋ねします。また、「サイズリングゲージ」という、例えば4番、4番半、5番…….23番の基準サイズを束ねたツールで、指のサイズをお測りします。

香港は、世界中に取引先があるため、各国のサイズ変換表で確認しながら受発注をしています。これは序の口。次の課題は、「お客様に何番サイズをお勧めするべきか?」

それは、「人の指のサイズは、朝と夕、夏と冬、体調、仕事、スポーツによって微妙に変化する」からです。お客様のサイズを測った時と、サイズ調整をしてお納めする時と多少変わってしまう事があります。また、指輪の幅、厚み、形(デザイン)、お客様の指のタイプ(ふっくらタイプ、節太タイプ、スレンダータイプ等)などの条件を考慮してサイズを決めます。

 

さて、長年マリッジリングの製作に携わってきている私達は、指輪のサイズにはいつも苦労します。指輪の基礎的な加工は、0.1mm~0.01mmの精度で進めますが、最終の磨き、仕上げは人の手で行います。手作業なので、精度は工業的デジタルから手動レベルになります。また、お客様の指のサイズも、日々、微妙に変化します。つまり、最終的には数値規格を当てはめるわけではなく、指輪をはめた時の感触が大切なのです。

この様な見解の狭間で、業界内では、トラブルが起こります。大手チェーン店の本部に納品に行くと、「指輪のサイズが少し大きいので作り直してください」と指示されることがあります。0.1mmの事で、短期日数でまた同じコストを使って作り直す事に成ります。往々にして、お客様の指には問題なくても、取引先の担当者は、工業的精度に拘るのです。勿論、規格に合う精度で加工しますが、ジュエリーは、工業製品ではないはずです。O.1mmの誤差は、同じ人でも季節等で変化します。お客様には、何もその差は分からないし、日々つけても、違いはないはずです。これに拘るのは、日本の過剰検品に思えます。それよりも、着けた時の、感触を大切にした考えを持ってほしいものです。

 

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