涼茶の効用を知ろう!
家族のため・自分のために取り入れたい漢方医学の知恵
香港をはじめ、広東エリアで広く愛飲されている「涼茶」。高温多湿という気候の中で、より快適に過ごすため古くに生み出されたこの民間の滋養法は、中国のドリンクビジネスの影響もあり、現代の若い人たちにもしっかりと引き継がれている。長い歴史が培ったこの知恵を生活に取り入れて、健康な身体を維持したいものだ。
数年前、この涼茶は国家級非物質文化遺産(無形文化遺産)に登録された。それからというもの、ペットボトルに紙パック、缶など、買い置きができるお手軽涼茶が様々なブランドから発売され、今では「涼茶舗(リョンチャポー:涼茶スタンド)」だけでなくコンビニやスーパーでも手軽に買うことができるようになった。最近ではスイーツや軽食と共に飲めるお店もあり、涼茶を楽しむ環境はバラエティに富んでいる。疲れが出てきたなあと思ったら、涼茶舗に駆け込もう。
漢方に基づいた中国のハーブティー
涼茶とは茶葉の名前ではなく、体を「涼しく」する目的の漢方茶やハーブティーを指す。涼しくすると言っても身体を冷やすということではなく「身体にたまった熱をとる」という意味。涼茶は熱気(イッヘイ:香港を含む広東省では「熱気」が体に溜まると、ニキビや吹き出物、イライラ、偏頭痛、だるさ、肩凝り、喉の腫れなど、とにかくまず体に「いやな症状」を引き起こすといわれている)をとる効果があるとされる。鏡で舌を見て白い苔のあるときや、ニキビや便秘が気になるとき(=熱気があるとき)に飲むと改善されるという。これは広東省などの暑い地域で、体の温度を下げバランスをとるという中国医学の考え方に基づいた健康法で、脂っこいものを食べたあとなどにもよく飲まれている。
涼茶舗で店員との会話を楽しみながら1杯
脂っこい中華料理を食べたあと、近くの涼茶舗を訪れた。私が選んだのはデトックス効果があるという真っ黒な「龜苓茶」。常温でいただくのがベストだそう。「良薬口に苦し」というが、本当にまずい。同行した香港人は一気に飲んでいた。それが香港スタイルだとか。店のおばさんと他愛のない会話をしていると、「これも飲んでみて」と別のお茶を運んできてくれた。「紅棗鶏骨草」という名のこの薄い色合いのお茶は、鶏骨草と棗のブレンド茶。鶏骨草は肝臓に効く生薬で、棗は異なる成分の生薬作用の衝突を和らげる効果があるという。棗の甘味があるので、ずいぶん飲みやすい1杯だ。
街中に普及する涼茶舗
ビジネスとしても注目されている涼茶。誰もが知る「海天堂」や「恭和堂」、「春回堂薬行」のほかにも、現在は駅構内にもさまざまな涼茶舗が展開している。若い女性をターゲットにした「健康工房」は、明るく清潔感があって入りやすい。電車に乗る前の1杯が日々の健康を維持してくれるのなら、こんなに手軽なことはない。
感冒茶(ガンモウチャー)
原料は根付きネギ、ショウガ、ミントとタントウシ(淡豆豉)。風邪をひいた時に飲まれ、のどの腫れ、鼻水、鼻づまりの改善、体の熱をとる。
廿四味(ヤーセイメイ)
お店により原料は異なるが、20種類以上の漢方薬を調合して煮出したブレンド茶。熱や湿気をとり、便通促進、吹き出物に効く。
亀苓茶(グヮイリンチャー)
亀ゼリーのお茶。体内の有毒な物質を排出するデトックス効果があるとされる。
酸梅湯(シュンムイトーン)
乾燥したサンザシ、烏梅、甘草が原料。食欲増進、消化促進に効果的。